「第二波に備えて想定し直しを」 政府側専門家の尾身・岡部両氏 ~参院予算委
西島氏の役回りは、政府与党の対策が万全であるとの回答を引き出すことだったはずだが、尾身、岡部両氏から出てきたのは、だいぶ腰の引けたコメントだった。最後の麻生総理の答弁も今ひとつ威勢が良くない。
このようなことになったのは、その前に民主党・鈴木寛委員の行った質疑が、2人の専門家の心理に少なからず影響を与えたからと思われる。時系列が逆になったが、ここからは鈴木氏の質疑の概要をお伝えする。
[鈴木]
検疫の偏重に批判が集まっている。検疫官だけでなく大学病院や自衛隊などから400人を超える人たちが動員された。しかし、神戸・大阪ではかなり初期にすり抜けて国内での感染が広がってしまった。この結果を云々するつもりはない。後から振り返れば何とでも言える。問題は、国内外の専門家や現場がこの方針を支持していたかどうか。支持していて、議論を尽くして叡智を絞った結果であれば国民も我々も24時間頑張っている現場の方も納得がいくだろう。
だが、この重要な意思決定が一部の人たちの思い込みや思惑やメンツによって歪められているとしたら由々しき事態。特に医学的な反論が封殺されているとしたら由々しき問題なので質したい。第二波の到来の可能性が相当に高い。そもそもインフルエンザを封じ込めるのは不可能と言うのが専門家の常識。日本感染症学会もWHOも封じ込めは不可能と何度もアナウンスしてきた。この点について森兼参考人に伺いたい。
[森兼]
検疫は有症状者を見つけることに関しては有効。検疫が無効であるという時によく引用されるペーパーは、SARSの時、空港から乗客が乗る時にスクリーニングをしたけれどちっとも引っかからなかったというもの。しかし乗客は例えばアメリカからだと12時間ぐらい飛んでいる。その間に発症することは十分に考えられる。実際に成田でも6名7名患者が見つかっているので、全く無駄ではない。ただ、それに要する人手とお金、時間、手間、そういったもののバランスでないか。
日本の領土内では成田空港検疫所で初めて患者が4人見つかった。これで逆に、私を含めてこちらにばかり目が向いてしまったのは事実と思う。その結果、国内の体制がワンテンポ遅れた。これを大きな教訓として第二波に備えるべき。国内の対策も水際対策も両方とも大事。均等にやっていくことが大事。
国内例が見つかった時、最初から48時間ぐらいで150人ぐらいの患者が検知された。この時点で速やかに検疫体制を縮小すべきだったと思う。5月19日に舛添大臣と会談した中でも、そのように申し上げて、3日後に政府の基本方針が変わった。こういうスピード感を持った対策は非常によかったのでないか。
それと、これは余り言われてないことだが、私も既に今年4回アメリカに行っている。帰ってくると一刻も早く自宅に帰りたいと、早く電車に乗りたいと飛行機の中でそわそわしている。今回1日7000人の乗客が成田で機内検疫を受けた。最初のころは混乱していて2時間ぐらい待たされた。私も空港検疫の訓練に参加したことがあるけれど、訓練でさえ2時間3時間というのは非常に不快。2週間で10万人を超える方がそういう思いをされたということも記録として残しておくべきでないか。
いい悪いももちろんだが、こういったことに関する議論をしっかり深めて半年後に来るであろう、来るかもしれない第二波、大きな波に備えることが大事でないか。