「明細書」の意味を知っていますか?
入院ベッドが400床以上ある病院では、患者から請求されたら「明細書」を発行しなければならない。検査や投薬など個別の診療単価がレセプト並みに詳しく分かる「明細書」は、医療の透明性や標準化を図る観点から多くの役割が期待されている。その中でも、中医協の遠藤久夫会長は「入院医療の中身が分かる」という役割に強い関心を示している。(新井裕充)
診療行為の対価(診療報酬)を受け取るため、医療機関は健康保険組合などの保険者に「レセプト」(診療報酬明細書)を提出する。この「レセプト」には診療報酬点数の算定項目や点数が記載されているため、これを見れば医療サービスの内容が詳細に分かる。
しかし、保険請求の手段である「レセプト」は原則として患者に開示されないため、レセプト並みに詳しく医療の内容が分かる書面の発行が求められていた。そこで、前々回の2006年度診療報酬改定では、医療費の内容が分かる「領収証」を無償で交付することが義務付けられた。さらに、患者から求められた場合には個別の医療行為が分かる詳細な「明細書」の発行が努力義務とされた。
続く08年度の診療報酬改定では、患者からの求めがあった場合に投薬や検査など個別の診療単価がレセプト並みに詳しく分かる「明細書」の発行が400床以上の病院に義務付けられた。
これらの背景には、医療事故や薬害肝炎などの被害者団体からの強い要望、つまり「カルテ開示」がある。勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は08年度改定を審議する中で、「明細書」の無料発行(全患者への発行)と、レセプトと同等の記載を求めた。
「明細書」について集中的に審議した08年2月1日の中医協で勝村委員は、「明細書」の定義について次のように質問した。
「DPCの場合の医療費は、『DPCとして幾ら』ということが(明細書に)もちろん書かれるが、それ以外にも、『本来の詳細な医療の中身もきちんと書いていただく』というのが明細書だという確認でいいか。大島伸一専門委員も『当然だろう』とおっしゃった。以前、(厚労省の)国立病院部に聞いたら、『中医協で確認していただければ、物理的にはすぐにできる』とi言われた」
これに対し、保険局医療課の原徳壽医療課長(当時)は「DPCの場合は入院基本料と包括して評価するので、『明細書』にも当然、包括の点数しか出てこない。これはそういう体系なので、それをさらに何をやったかと、その内容まで示せというのであれば、『明細書』というよりは『カルテ開示』ということと同義だと思うので、ここで言う『明細書』の場合にそこまで求めることは非常に難しいのではないかと思う」と退けた。