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「明細書」の意味を知っていますか?

■ 「カルテ」と同義の「明細書」を否定した08年度改定
 

 「明細書」について議論した08年2月1日の中医協で、支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)は、「確かDPCについては、Eファイル(診療明細情報)、Fファイル(行為明細情報)の中にいろいろなデータが入っているので、それは今のお話の通り審査が難しいので、Eファイル、Fファイルから一定のデータなどを取り出してきて、それで審査等々ができるような検討をしているというふうに伺っているが、そうではないのか」と、事務局(保険局医療課)に質問した。

 原徳壽医療課長(当時)は「(E・Fファイルは)DPCの診断群の分類そのものがいいかどうかについて補助的な情報としてそのものを付けてもらう、そういう整理をしている。現在の診断群が正しいかどうかをちょっと見るための情報に過ぎない」とした上で、次のように述べた。

 「繰り返しになるが、入院中に『こういう薬をあなたは飲みますよ』ということを(医師が患者に)伝えるのは構わない。しかし、明細書(レセプト)は保険の請求をするものだから、その請求の中身としてそこまで書く必要はないのではないか。要するに、書いたとしても、ある薬をこの人は朝、昼、晩飲みました、違う人は朝、晩飲みました、それはどっちでも構わない、患者に合わせてやればいいということだから。それは『請求金額にはかかわらない情報』なので、(明細書に)そこまで求めるというのは、『診療行為そのものを開示しろ』ということだから、カルテの開示につながるのではないかというふうに説明をさせていただいた」

 これに対して勝村委員は一歩も引かず、「DPCの中身をすべて見せてもらうことが大事だ。健康保険組合の保険者と被保険者に渡すものを違うようにしないでほしい。7割を支払う人に対して、3割を支払う人に対して同じものを出してほしいということを僕はお願いしている」と主張。議論は最後まで平行線をたどった。

薬害肝炎・総理決断要請行動07年12月10日.jpg 最終的に、「明細書」の無料発行は受け入れられず、実費を徴収することで決着したが、「実質的に明細書の入手の妨げとなるような料金を設定してはならない」とされた。

 また、既に発行している「領収証」にレセプト並みの明細が記載されていれば、明細書の発行を別途求めないことになった。

 「明細書」をめぐっては、薬害肝炎訴訟で「カルテなき感染者」が問題となった。病院にカルテが残っていないために投薬の証明ができず、救済されない(原告適格を欠く)被害者が相次いだ。

 このような反省から、「明細書」を無料で全員に発行することを患者団体などが強く要望し、舛添要一厚生労働大臣も無償発行を支持した。

 こうした経緯を踏まえ、08年度改定の影響を検証する「平成21年度特別調査」では、従来の「施設調査」に加えて、「患者調査」も実施する。「領収書」と「明細書」の区別が分かるように調査票を工夫し、「明細書」に対する患者の意識調査が重要視されている。

 2010年度改定に向けた議論では、「明細書」をめぐって激しい火花が散ることが予想されるため、検証部会の調査が極めて重要になる。

 今年度の「調査実施案」を大筋で了承した6月24日の中医協・診療報酬改定結果検証部会(部会長=庄司洋子・立教大大学院教授)で、中医協会長を務める遠藤久夫委員(学習院大経済学部教授)は、入院患者に対する調査の在り方を重視している。

 詳しくは以下の通り。

[庄司洋子部会長(立教大大学院教授)]
 では、調査案について議論したい。(明細書発行の一部義務化、歯科外来診療環境体制加算の実施、後発医薬品の使用状況について)、1つひとつまいりましょうか。

 まず、明細書発行の一部義務化。はい、白石委員どうぞ。

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