厚労省を質問攻めにする嘉山委員 ─ 11月6日の中医協で
■ 「DPCをやめるんですね?」 ─ 嘉山委員
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
だから、(医療費の配分を病院と診療所でなく)医療行為で分けることはできませんか。外科系とか、内科系とか。一番、国民もすっきりするし、我々もモチベーションを持てるのは、医療行為について点数を付けてくれれば、非常にクリアーなんですよ。
「なんとか加算」とか、「何とか補助金」とか、バンソウコウを貼るようなようなことじゃなくて、医療行為を評価してもらえれば、医者もみんな頑張るし、患者さんも納得するんですよ。それをなぜこの中医協は今までやってこなかったのか。それがこの医療崩壊をつくった一番の原因ですよ。
▼ 厚労省は病診格差を是正するため、「診療所VS病院」、「外来VS入院」などの比較を強調している。医療費の内訳を別の観点から比較するには細かいデータが必要だが、医療課はこれを出そうとしない。DPCの「新たな機能評価係数」の議論もそうだが、「何にいくら掛かるのか」という金額欄がないまま、「複雑性指数はどうか」などと議論している。結局、診療報酬改定を答申後、「緊急入院」や「救急搬送」の定義を操作することで配分の操作ができてしまう恐れがある。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
分かりました。データとして、要するに医療行為の分類ごとに......。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
(診療所と病院、外来と入院などのほかに)外科系とか内科系とか、切り口を変える。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
そういう考え方が可能かどうかということであります。いかがでしょうか。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
まあ、事務局(保険局医療課)が決めたというより、これまで中医協を含めて診療報酬点数の議論の中で決まってきたことなんでしょうけれども、ある程度、行為が明確であって、一定程度の能力や技術が必要なものについては、大ざっぱに数えても4000項目ぐらいありまして、その中には技術を評価したものがございます。それが十分かどうかということは置くとします。
ここで言います「入院基本料」の中に一部の技術が入っているだろうと申しましたのは、明確ではないもの、例えば、コメディカルでもいいんですが、「病棟に患者さんを何回か見に行く」とか、あるいは「血圧を測った」とか、そういう個々の技術や処置と明確にできないものについても包括化されて「入院基本料」に入っているというわけですから、むしろ日本の診療報酬は出来高で、個々の技術や検査については、何度も繰り返しますが、個々の点数の設定が妥当かどうかということは別としまして、かなり丁寧に細かく点数が設定されていると言えます。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
(回答が)質問の意図とちょっとズレていたような印象なんですが......。要するに、(31.4兆円の)医療費を全体として、ここ(グラフ)では外来とか入院で分けているんですが、医療行為の分類ごとに、どれぐらい医療費が使われていたかが分かりますかという話なんですよね。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
そうです。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
(苛立ったように早口で)それはもう、「社会医療診療行為別調査」できっちり丁寧に出せますので、そこでご覧いただければと思います。すいませんでした、私、「入院基本料」の中に、一部技術が入っているんだが、その中の技術を取り出して点数みたいになるのかというご質問かと勘違いしました。(途中、遠藤会長が発言をさえぎろうとするが、振り切った)
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
佐藤課長は非常にいいことをおっしゃった。出来高なんですね、日本は? DPCをやめるんですね? (会場、笑い) あなた今、そう言ったんだよ。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
(動揺した口調で)DPCは大きく分けて包括部分と出来高がありまして......。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
そんなの、分かってますよ。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
手術や......、大きな検査、処置について......、あの......、出来高で取られておりまして、その点数表で設定されています。また、DPCの計算をする場合にも、必ず出来高の場合でどういう点数になるかというのを考慮した上で、病院から二重にデータを頂いて、それで突き合わせをしながら点数設定をしているという......。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
それは分かってますよ。ただ、入院基本料というのは出来高が基本だということをおっしゃったので、「じゃ、DPCが基本ではないんですね」ということで、いいんですね?
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
(苦笑いしながら)まあ......、その辺のところはですね、我々が決める話で......、それはそのぐらいにして......、まだ質問が残っています......。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
外来管理加算。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
あと1つだけ、私のほうから質問があります。先ほど、「社会医療診療行為別調査で医療行為別の医療費が出せる」っておっしゃいましたけれど、例えば入院なども、それで出せるわけですか?
▼ 遠藤会長でも知らないのだから、本当に医療課のみが知るという状態。しかも、実務を担当しているほんの数人の補佐らが把握しているのみ。医療者はもちろん、患者・国民は知らない。34兆円の医療費の内訳が見えない。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
出せ......ます。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
何の病気で入院していたら......。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
(語気を強めて)病名ですか??
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
外科で入院した場合と、そうでない場合とかいう場合は......、分けられる......? (委員ら、ざわつく)
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
診療科名では出てまいりませんで、病名では出すことができます。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
それで、よろしい......?
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
外科系とか、内科系とか、さらにその内訳ですね。
▼ 医療課だけが把握できる医療費の細かい内訳にメスを入れようとしているのだろう。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
入院のところもちゃんと分けられるのかどうか、医療費の中でですね。問題ないのであれば......。
▼ 医療課にとって苦しい展開。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
先生、結局ですね、不採算部門というのはそこなんですよ。例えば、救急でガーゼを大量に使わなきゃならなくなったとか、そういうのが全然、(点数表に)入っていないんですよ。ですから、皆さん、(ヒアリングで)「赤字だ、赤字だ」とおっしゃった。
そこを、この中医協できちんとやってあげないと、手当てしないと、ドクターへのインセンティブと共に、物品もそこで計算してあげないと駄目なんです。そういう切り口をしないと、ディスカッションできない。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
分かりました。課長、お願いします。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
繰り返しますが、「社会医療診療行為別調査」の中で、標榜診療科ごとの点数の算定状況というのは分かりませんので、繰り返しになりますが、ICD(国際疾病分類)に基づく疾病コードごとの......、ということになります。
それから2つ目は、後段で嘉山先生がおっしゃった話は、部門別収支計算につながる話でありまして、これはもう、私が申し上げるまでもなく、過去、中医協の中でも5か年にわたってご議論をいただいたんですが、部門別収支計算を、ルーティーンと申しますか、どこの病院でもやっていただくまでにはまだまだ調査の内容とか方法とかを検討しなければいけないので、今年もまたご検討いただいているという状況でございます。
▼ 「診療科別の収支」(コスト)の話に持ち込んで、うまく逃げ切った。嘉山委員は、各医療行為を評価した点数項目を「外科系の点数」や「内科系の点数」などに分類して医療費の配分を比較する方法もあることを指摘したのだろう。
【目次】
P2 → 厚労省を悩ませる「4つの質問」
P3 → 「佐藤君が答えた通り、医療崩壊を招いたのはそこ」 ─ 嘉山委員
P4 → 「DPCをやめるんですね?」 ─ 嘉山委員
P5 → 「私自身も時間で縛るのはいかがかと思います」 ─ 支払側委員
P6 → 無診投薬は、未受診投薬要請」 ─ 安達委員
P7 → 「5分ルールで大混乱」 ─ 嘉山委員