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「55年通知」をめぐる議論を開始 ─ 中医協(7月14日)

■ 「がん患者の命がかかっている」 ─ 嘉山委員
 

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 「55年通知」について、嘉山委員から(議論したい旨の)発言が(会議の冒頭で)あったので、その発言を受けたいが、よろしいだろうか? (反対意見なし) では、嘉山委員。

 ▼ 前回6月23日の中医協の議事録はこちら、「55年通知」はこちら、患者団体の要望書はこちらを参照。

[嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)]
 日本で一番死亡率が高いのはがん。がんの患者さんが医療の中で重要になっている。
 そういう中で、(DPCの導入による影響として問題視された)「再入院」を繰り返すということは、治癒率が上がっていることでもある。ねばり強い治療をするため、標準的な医療から外れた適応外の薬を使って治している場合が多々ある。がんセンターでもある。

 保険の適応外だったために患者さん個人や医療機関に非常に無理がいっているという現実がある。これは時間を待てない問題。がんの患者さんにとっては、自分の命がかかっている問題と思っていただきたい。

 「55年通知」は、ご存知のように、昭和54年に(当時の)厚生大臣の橋本龍太郎氏が薬品の効能の表示について、「厚生大臣としては、薬理作用を重視するものであり、能書については、薬理作用の記載内容を充実する方向で改善するよう、薬務局に対し指示いたしました。従って、医師の処方は薬理作用に基づいて行われることになります」と(当時の武見太郎・日医会長に)回答した。

 2番として、「社会保険診療報酬支払基金においても、これを受けて学術上誤りなきを期して、審査の一層の適正化を図ることとし、また、この点について、都道府県間のアンバランスを生じないよう、保険局に対し指示いたしました」と回答した。

 これが橋本龍太郎・厚生大臣の(武見会長への)返事だが、それを受けて翌年の9月3日に厚生省保険局長から社会保険診療報酬支払基金理事長に宛てたのが「55年通知」というものである。

 1番として、保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(以下「効能効果等」という。)によることとされているが、有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)を薬理作用に基づいて処方した場合の取扱いについては、学術上誤りなきを期し一層の適正化を図ること。

 2番として、診療報酬明細書の医薬品の審査に当たっては、厚生大臣の承認した効能効果等を機械的に適用することによって都道府県の間においてアンバランスを来すことのないようにすること。

 ということで、適応されている薬を適応外に使う場合には医師が学術上適正に使えることができる。保険診療で認められている。これを通達したのが「55年通知」である。

 先日(6月23日の中医協)で話したように、がんの患者さんから私に要望が来ているので、中医協で議論していただくことをご提案させていただく。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 「55年通知」を議論することは前回に合意している。


【目次】
 P2 → 「がん患者の命がかかっている」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P3 → 「画一的、一律的に運用されるものではない」 ─ 佐藤課長
 P4 → 「全国標準化でやることが大事」 ─ 安達委員(診療側)
 P5 → 「何が問題なのかよく分からない」 ─ 白川委員(支払側)
 P6 → 「機械的に査定される可能性が多々ある」 ─ 安達委員
 P7 → 「中医協で対応して制度設計すべき」 ─ 嘉山委員
 P8 → 「標準化が必要ではないか」 ─ 邉見委員(診療側)
 P9 → 「最先端のがん治療と一般病院は違う」 ─ 白川委員
 P10 → 「他の制度を整備しないと動かない」 ─ 嘉山委員
 P11 → 「仕組みを提案するレベルまで中医協で」 ─ 遠藤会長
 P12 → 「単独で『55年通知』ということではなく」 ─ 佐藤課長

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