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「55年通知」をめぐる議論を開始 ─ 中医協(7月14日)

■ 「全国標準化でやることが大事」 ─ 安達委員
 

[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
 私は京都の社会保険診療報酬支払基金の審査員でもあるので、現状をまず申し上げる。
 基金本部の通達が各都道府県の支部に来るという中で、過去数年にわたって、「55年通知」について、その(審査情報提供)委員会がご検討になったという通知を目にした記憶はない。ご議論はないのではないか、表立っては。

 一番議論されたのは恐らく、平成14年に日本医師会の執行部が新しく変わったときに、当時の保険担当の常任理事が直ちに保険局医療課に申し入れて、「55年通知」の今日における有効性の再確認を求めた。
 それについて厚生労働省保険局医療課として、再度、審査機関に対して通知を出した。そのことについて基金の対応が非常に一部あいまいな部分があり、いろいろな議論があった末、最終的に......。
 私は、平成14年の時点で「55年通知」の有効性が再確認され、それに基づいて審査基準があると理解している。

 それで、京都ではどうやっているか。京都はご承知のように2つの大学病院を抱えており、がん診療も非常に幅広く行われている。
 前回も申し上げたが、「55年通知」を我々が審査員としてどう理解するかということになると、薬事法上の適応傷病名には挙がっていないけれども、

 ・ 薬品の成分、薬効から明らかに有効であると考えられ、
 ・ それを使うことによって薬事法上で適応されている薬剤よりもはるかに有効な結果が得られる、

 これは抗がん剤ではしばしばある。そういう場合は当然、「55年通知」が患者さんの治療の追求として認められるべきものだろうと思っている。

 がんに限って言えば、例えば、AとBの抗がん剤があるとして、同じような効果である場合。片方は適応症を取っている、片方は取っていない。だけど、この病院には適応症を取っていない薬しかないからそれを使うという場合にまで、「55年通知」の解釈が及ぶものではないと理解している。

 例えば、「1週間に1回の投与を3週間繰り返して1週間休む」というサイクルを変えて、ごく少量ずつ一定期間に連投するほうがより有効な結果が得られるという海外論文があり、海外ではその使用法が承認されていた場合、大学病院がそういう使用法をされたというケースもあった。

 あるいは抗がん剤ではないが、「5-FU」と「ロイコボリン」との併用療法で「ロイコボリン」を使った場合。外国の論文でも非常に高い有効性が証明されていたが、「ロイコボリン」には薬事法上の適応症がなかったような場合がある。

 そういう場合について、我々はどうするか。当然、大学病院にレセプト(診療報酬明細書)を返戻する。「なぜ、こういう使用法をしましたか」「ルールはこうなっておりませんよね」「そうした理解を説明してください」と言って返す。
 一応、理由書を頂くが、モノが高額な抗がん剤なので、審査員として説明書を理解できない場合は「申し訳ないが審査委員会にもう少し詳しくご説明いただけませんか」と言う。

 おいでになる。半年後、おいでになる。外国の論文等、膨大なものを頂戴することもある。そういう中で、「なるほど、これは適法だ」ということで通す。
 保険者から、「これは薬事法上、適法でないのではないか」という再精査請求を頂く。そのとき、私は審査員として大学病院の説明、外国の論文等々、そして実際に患者さんに起こっている効果として、他の治療法よりもはるかに有効な結果を出しているというものについては、「55年通知」をもって適法とする。

 審査員を1年やっていて、「医師のお手盛りだ」と言われるが、それは違う。医師として判断すれば、患者さんの治療を考えればそれがベストであり、そこに「55年通知」というルールがあるならば、患者さんのためにそれ(55年通知)を適用するのが一番良い。
 そのように判断できた場合には、保険者の皆さんに審査委員会においでいただき、大学病院の治療医の考え方やアウトカムについての説明を受けていただき、(健保)組合員の治療としてこれがベストであれば、「55年通知」に則って適法であると審査員として認めたいがご同意いただきたいと説明して、支払いを受けている。そういうことをやっている。

 審査委員会はほとんどの都道府県でやっているはずだと思うが、多少の温度差もある。
 それを考えれば、患者さんの最上の結果を得るための医療機関が懸命に行う判断について、これを全国標準化でやっていただくことが今日のがん治療においては大事で、そのことを嘉山委員がご提起した問題なのだろうと私は理解している。長くなって申し訳ない。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 ありがとうございました。実態についてご説明いただき、非常に理解が進んだ。白川委員、どうぞ。


【目次】
 P2 → 「がん患者の命がかかっている」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P3 → 「画一的、一律的に運用されるものではない」 ─ 佐藤課長
 P4 → 「全国標準化でやることが大事」 ─ 安達委員(診療側)
 P5 → 「何が問題なのかよく分からない」 ─ 白川委員(支払側)
 P6 → 「機械的に査定される可能性が多々ある」 ─ 安達委員
 P7 → 「中医協で対応して制度設計すべき」 ─ 嘉山委員
 P8 → 「標準化が必要ではないか」 ─ 邉見委員(診療側)
 P9 → 「最先端のがん治療と一般病院は違う」 ─ 白川委員
 P10 → 「他の制度を整備しないと動かない」 ─ 嘉山委員
 P11 → 「仕組みを提案するレベルまで中医協で」 ─ 遠藤会長
 P12 → 「単独で『55年通知』ということではなく」 ─ 佐藤課長

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