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「55年通知」をめぐる議論を開始 ─ 中医協(7月14日)

■ 「画一的、一律的に運用されるものではない」 ─ 佐藤課長
 

[嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)]
 では、次のステップとして「55年通知」を使う場合のいろいろな問題点について述べる。

 社会保険診療報酬支払基金が2007年9月に47品目、2009年9月に33品目を保険適用している。しかし、社会保険診療報酬支払基金の審査情報提供委員会は委員も検討内容も非公表であり、判断過程を透明化できないため、どのような基準で保険が認められるかについても現時点では分かっていない。

 もし、事務局(保険局医療課)で分かれば教えていただきたい。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 事務局(保険局医療課)、いまの質問は突然だが、対応できるか。

[保険局医療課・佐藤敏信課長]
 せっかくの機会なので、事実関係も含めて話したい。「55年通知」については、嘉山先生のご説明のとおり。
 少し補足すると、嘉山委員の話にもあったように、「55年通知」では保険診療における「医薬品」の取り扱いについて、基本的には、「厚生大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量による」のだが、

 ① すでに「有効性および安全性の確認された医薬品」について、
 ② 「薬理作用に基づいて処方した場合」には、
 ③ 「学術上」の知見等に照らして、

 (55年通知に)はっきりと書いていないが、要するに、(例外的に)「使用してもいいんじゃないか」ということがまず1点。

 2つ目。従って、診療報酬明細書の医薬品の審査に当たっては、厚生大臣の承認した効能効果等を機械的に適用することなく、都道府県の間においてアンバランスがないよう、要するに「弾力的に審査していいよ」ということ。

 もう一度整理すると、「55年通知」は薬のことについて言っている。
 薬に関連して、厚生大臣が承認した効能・効果等について、一応、学術的に問題がない場合は、審査や支払いの場で弾力的に判断していいということ。
 現状を言うと、「55年通知」に基づいて各県に置かれた支部ごとに学術の先生方が集まって、合議のような形でその都度、ご判断されていた。

 一方、近年になり、こうしたことについて、できる限り統一的な見解というか、きちんとした組織で検討したほうがいいだろうということで、平成16年7月に支払基金の中に審査情報提供委員会が設置された。
 今日は細かな資料は持っていないが、審査情報提供委員会の議論の仕方は基本的に「エキスパート・ベースド」ということになる。

 要するに、各支部段階でご尽力いただいている先生方をブロック単位で集め、専門領域等も検討しながらブロック単位で集まっていただき、年に数回、支払基金の本部でご検討いただいている。

 最近では、おおむね1年に1回程度のペースで、審査情報提供委員会で検討した結果として公表され、各県支部に伝えられていると承知している。

 また、「55年通知」は基本的に薬だが、審査情報提供委員会では薬のみならず、検査その他判断に迷う事例、あるいは現行の告示や通知等で解釈が難しいような事例についても中央の場に出して検討した上で意見をたたかわせて、その結果として取りまとめていると承知している。

 もちろん、患者さんは個々人が違う、病気はそれぞれ違うという認識に立っているので、ここ(中医協)で、例えば、「弾力的な運用でいんじゃないか」ということになったとしても、画一的、あるいは一律的に運用されるものではないということを常に喚起している。

 さらに補足すると、嘉山先生の質問は「エキスパート・ベースドで議論していることに何らかの基準があるか」ということだが、現状、文書にされたような基準はない。

 ただ、私どもが承知している範囲では、
 ・ 「学会で周知の事実となっていること」
 ・ 「学会ではそれほどでもないが診療ガイドラインのようなものがあって、その中で明文化されていること」
 ・ 「どう考えても医学的な常識でしょう」
 というようなものについて、(審査情報提供委員会で)議論がたたかわされている。

 従って、学会、診療ガイドライン、文献などに基づいてエキスパートに判断していただいているのが現状である。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 嘉山委員、よろしいだろうか。じゃ、安達委員どうぞ。


【目次】
 P2 → 「がん患者の命がかかっている」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P3 → 「画一的、一律的に運用されるものではない」 ─ 佐藤課長
 P4 → 「全国標準化でやることが大事」 ─ 安達委員(診療側)
 P5 → 「何が問題なのかよく分からない」 ─ 白川委員(支払側)
 P6 → 「機械的に査定される可能性が多々ある」 ─ 安達委員
 P7 → 「中医協で対応して制度設計すべき」 ─ 嘉山委員
 P8 → 「標準化が必要ではないか」 ─ 邉見委員(診療側)
 P9 → 「最先端のがん治療と一般病院は違う」 ─ 白川委員
 P10 → 「他の制度を整備しないと動かない」 ─ 嘉山委員
 P11 → 「仕組みを提案するレベルまで中医協で」 ─ 遠藤会長
 P12 → 「単独で『55年通知』ということではなく」 ─ 佐藤課長

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