急性期病院の機能評価、迷走再び
■ 「今あるデータを整理する作業がまず必要」 ─ 松田委員
[池上直己委員(慶應義塾大医学部医療政策・管理学教授)]
今回、入った6項目以外の中には、「データがないから」という理由で落とされたものがたくさんあったので、「データを取ることが適切かどうか」ということも併せて調査なさったらどうか。
「データがない」ということは、「データの提出可能性があるか」を伺う必要がある。データを提出することが非常に煩雑で、かつ病院にとって「できない」ということであれば、それは永久にデータが集まらない。
今回導入した6つの係数の適切性の評価と同時に、落とされた項目について復活の可能性として、データを提出できるかどうかを伺ったほうがいいのではないか。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
ありがとうございます。どうぞ、松田委員。
[松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)]
(厚労省が示した)「新機能評価係数Ⅱの考え方の整理」(のイメージ図)が基本だろうと思う。プラス、「機能評価係数Ⅰ」も加えてやるべきだろう。
いろいろなアンケートも必要だと思うが、集めたデータから評価できるものがかなりある。例えば、「効率性係数」「複雑性係数」に関しては、患者構成の指標と平均在院日数の指標を従来からずっと取ってきている。それが(係数導入後)時系列的にどう変化しているかを見ることはできる。
それから「機能評価係数Ⅰ」では、入院基本料について看護体制に関するものを時系列的に増えているかが分かる。係数に相当するものがどう変化したのか、今あるデータでいけると思う。
医療の標準化や効率化に関しては、「E・Fファイル」(診療報酬請求情報)があるので、そこから診療科別にばらつきを見ることができる。
例えば、入院中の画像検査とか臨床検査がどれぐらい減ってきているのか。薬に関しても薬効コードと組み合わせてやれば、ジェネリックがどのぐらい使われたかを分析できる。
(新機能評価係数Ⅱの考え方に書いてある)「全医療機関がめざすべき方向性」を見るには、今あるデータでいろいろなことができる。その上で、いろいろなアンケートをやったときに、(他と区別する)「アンカーポイント」ができるのではないか。
医療の透明化について言えば、この数年の大きな変化としては、DPCのデータが実名で公開されたことがある。病院長がそれを見て、病院の機能をどのように変えていったのか、病院経営にどのような影響があったのか。院長先生はいろいろな意見があると思う。
「今後、導入を検討する評価項目に関する調査」については、「E・Fファイル」で取れる情報から、例えば、患者がどれぐらい増えたのか、連携(クリティカル)パスがどのぐらい増えたかが分かる。
それらは「新機能評価係数Ⅱ」の影響だけではないかもしれないが、時系列で追っかけることによって、(係数)導入のインパクトを評価することができる。
とりあえず、今あるデータである程度、(次期改定で導入する係数に)対応する項目が何かを整理する作業がまず必要ではないか。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
ありがとうございます。(中略)
▼ この後、調査の方法をめぐって松田委員と迫井企画官がやや口論になる。松田委員が言うように、「E・Fファイル」から取った情報を参考に次期改定の係数を決めようとすると、2011年の夏までに固められないと迫井企画官は主張。「改定の最中に項目が動くのは避けたい」などと語気を強めたが、そもそも、「係数化に必要なデータ収集」と「職員アンケート」をごちゃまぜにして意見を求めたのが混乱の始まりではないか。途中、邉見氏は退出してしまった。
【目次】
P2 → 厚労省の説明① ─ 調査の目的
P3 → 厚労省の説明② ─ H21調査の再集計
P4 → 厚労省の説明③ ─ H22調査
P5 → 「様式1のデータも調査すべき」 ─ 池上委員
P6 → 「平成21年と22年のデータを比較できるか」 ─ 酒巻委員
P7 → 「アンケートを提案した理由は2つ」 ─ 厚労省
P8 → 「評価が得られなければ改善もあり得る」 ─ 池上委員
P9 → 「医療圏によって違ってくるのではないか」 ─ 金田委員
P10 → 「影響の評価とは、どういうことを見るのか」 ─ 小山会長代理
P11 → 「今後、導入を検討する項目案は出ていない」 ─ 厚労省
P12 → 「今あるデータを整理する作業がまず必要」 ─ 松田委員
P13 → 「アンケート調査か、データ分析か」 ─ 小山会長代理
P14 → 迷走は続く