急性期病院の機能評価、迷走再び
■ 「医療圏によって違ってくるのではないか」 ─ 金田委員
[金田道弘委員(特定医療法人緑荘会理事長兼金田病院長)]
(新機能評価係数の6)項目は、病院の機能や質を反映していると思うが、医療圏の背景によって違ってくるのではないか。
すなわち、DPC病院がたくさんあるような医療圏や、人口数万人の医療圏に200床未満の小さなDPC病院がある場合など、背景によって評価もかなり変わってくる。
背景の調査項目を何か加えることは難しいだろうか。
▼ すでに議論済み。金田委員は昨年9月に委員になったのでやむを得ないが、「委員を引き受けるなら過去の議事録ぐらいは......」とつぶやきたい。
「2次医療圏人口」を指標とするかどうかは、2009年6月19日の同分科会で議論した。長谷川学課長補佐(当時)は、「人口が少ない地域において1つの医療機関が占めるインパクトが非常に大きい。例えば500床の病院がありましたと。150万人規模の大きな所の500床の病院であれば、緊急患者を一定数引き受けたとしても割合としては非常に小さくなるが、一方で、50万人の所での500床となると非常にインパクトが大きい」などと説明して導入に前向きだったが、池上委員が「不適切な指標」と猛反対した。
そこで、宇都宮啓企画官(当時)は次のように理解を求めた。
「(分母をDPCの対象患者数にすると)DPC対象病院が1つしかないような地域でシェアが100%になってしまうので適切ではないということで、今回、分母をDPCの対象患者数ではなく、『2次医療圏の人口』を分母と据えることによって、ほかに医療機関があろうがなかろうが、その人口に対してどのくらいの割合で貢献しているかというものが見ることができるのではないかということで、こういう分析をさせていただいた」
これに対し、池上委員はこう反論した。
「同じ医療圏から受診している患者であるという前提があればこそ、このように『2次医療圏の人口』で割ることに意義があるということは同感するが、そうでない場合には、受診している患者の居住先というのは特に分析されていないので、その場合には、例えば極端な話を申しますと、人口規模が小さいところにがん専門病院があってDPC対象病院であるとすると、それは極めて高い、他の地域からの受診患者を含めての値となるわけですね。その点からすると、これは果たして適切かどうかということを新たな課題としてご提示したい」
医療政策の大御所である池上教授に反対されたらやはり通せないのか、「2次医療圏人口」という指標を導入することは見送られた。確かに、千葉と埼玉の県境付近に住んでいる千葉県の患者が埼玉の医療圏内にある病院に行くこともあるので、「2次医療圏人口」を基準にするのは不適切というか無意味。その後、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)の提案により、患者の居住地データを取れるように「様式1」(診療録情報)を変更した。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
アンケートに病院属性を記載していただけばそれは可能になるのではないか。
▼ それはまた別の話。特定機能病院とケアミックス病院を分けて再集計する話。
たぶん、今までのDPC導入の影響調査の報告書も、(DPCがスタートした)平成15年の病院(=特定機能病院)とか、平成16、18年などの病院をひとまとめでやっていた。
これに対して、「病院の属性を分けて詳しく検討してはどうか」という指摘を(2日前の)中医協総会で頂いたので、そういった形での見直しが必要になるのではないかと思う。(中略)
▼ この後、酒巻委員が「職員アンケート」に反対して迷走を開始。発言があっちこっちに飛びやすい資料になっているのはガス抜きのためか、などと勘ぐってしまう。会議終了後、厚労省の担当者が「今日の議論はまとめにくいでしょう!」と満面に笑みを浮かべたので、「わざとでしょ?」と突っ込もうかと思った。
【目次】
P2 → 厚労省の説明① ─ 調査の目的
P3 → 厚労省の説明② ─ H21調査の再集計
P4 → 厚労省の説明③ ─ H22調査
P5 → 「様式1のデータも調査すべき」 ─ 池上委員
P6 → 「平成21年と22年のデータを比較できるか」 ─ 酒巻委員
P7 → 「アンケートを提案した理由は2つ」 ─ 厚労省
P8 → 「評価が得られなければ改善もあり得る」 ─ 池上委員
P9 → 「医療圏によって違ってくるのではないか」 ─ 金田委員
P10 → 「影響の評価とは、どういうことを見るのか」 ─ 小山会長代理
P11 → 「今後、導入を検討する項目案は出ていない」 ─ 厚労省
P12 → 「今あるデータを整理する作業がまず必要」 ─ 松田委員
P13 → 「アンケート調査か、データ分析か」 ─ 小山会長代理
P14 → 迷走は続く