勤務医の負担軽減と患者の受診抑制
■ 「事務局、それでよろしいでしょうか?」 ─ 牛丸部会長
[牛丸聡部会長(早稲田大政治経済学術院教授、中医協の公益委員)]
それでは委員が揃いましたので始めさせていただきます。ただ今より、第30回・診療報酬改定結果検証部会を開催いたします。(中略)
▼ 診療報酬などを審議する中央社会保険医療協議会(中医協)は最上位に「総会」があり、その下に小委員会、部会、分科会などが多数ある。もちろん、すべて厚労省がコントロールしている。厚労省の保険局医療課が「事務局」という名目で会議資料を作成するほか、座長のために「台本」を用意している。座長はたいてい、"御用学者"や"御用医療者"が務め、厚労省に逆らう場面はない。中医協その他の審議会は役人が描いたシナリオにお墨付きを与える茶番に見える。
中医協総会の下には、診療報酬改定によって何か悪い影響が出ていないかを審議する「検証部会」がある。これは国民を代表する立場の学者らが改定の影響を検証するために設置されているが、実際にはただのセレモニー。すべて厚労省のシナリオ通りに進行してしまう。厚労省主導で実施した診療報酬改定の間違いを指摘することはなく、厚労省の方針を裏付けるようなデータを収集すべく開かれている。なお、同日の資料はこちら。
本日は、「平成23年度・特別調査」につきまして議論してまいりたいと思います。
▼ 冒頭からずっと下を向いたまま「台本」を読んでいる。厚労省が"御用"のために「下書き」を用意することは当たり前の日常業務で、関係団体の上層部や大学教授、大手メディアらを巻き込んで政策を遂行する。つい最近、厚労省の「下書き」が騒ぎになったが、当の担当者からすれば交通事故を起こしてしまったような気分だろう。いつものように運転しているのになぜ今回は......と思っているかもしれない。
平成22年度診療報酬改定にかかる特別調査につきましては、昨年4月21日の総会で承認をいただいた......、えー......、平成22年度診療報酬改定の結果検証項目について......、に基づきまして......、特別調査が必要とされた11項目のうち5項目につきましては平成22年度調査としてすぐに実施......している......ところでございます。(中略)
▼ 内容をあまり理解していないのか、「台本」の文章が悪いのか、たどたどしい口調で読み上げている。この後、厚労省の担当者が資料について説明、委員から「原案通り問題ありません」「それで結構です」という意見が相次いだ。もちろんシナリオ通りに了承。わずか45分で終了した。
ということで、本日用意したものは以上ですが、よろしいでしょうか? ありがとうございました。先ほど言いましたように、本日ご審議いただきました(厚労省)案で、私から、この後(同一会議室で)開催される総会にご報告したいと思いますので、よろしくお願いいたします。事務局(保険局医療課)、それでよろしいでしょうか?
▼ 厚労省の担当者が軽くうなずく。ご苦労さん、とねぎらっているように見える。
はい、それでは本日の議論はこの辺りにしたいと思います。
▼ 議論した?
なお、次回の日程については、追って事務局よりご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。それでは、本日はこれにて閉会いたします。
▼ 15分近く休憩。いつもは10分程度だが、新たに公益委員に就任した西村万里子・明治学院大教授らが各委員と名刺交換をしていたため開始が少し遅くなった。いや、某委員の喫煙タイムのせいかもしれない。私も喫煙者だが、17階会議室の"寿司詰め状態"から脱出して、わざわざ1階まで降りる気分にはなれない。
【目次】
P2 → 「事務局、それでよろしいでしょうか?」 ─ 牛丸部会長
P3 → 「中医協としてすべて承認する」 ─ 遠藤会長
P4 → 「私に預からせていただければ」 ─ 遠藤会長
P5 → 「最も負担が重いと感じる業務は当直」 ─ 厚労省
P6 → 「シフト等の勤務体制で軽減できるか検討」 ─ 厚労省
P7 → 「たくさん医師がいないとできない」 ─ 日医
P8 → 「こんな病院、日本にあるわけないじゃないか」 ─ 嘉山委員
P9 → 「我々も若いころは鍛えられた」 ─ 経団連