「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ①
■ 石井美恵子氏(日本看護協会)①
[石井美恵子氏(日本看護協会)]
今朝、宮城から帰ってきたところです。これで3回目ですかね、行ったり来たりしております。日本看護協会としての「災害支援ナース」というものが1995年以降、阪神・淡路大震災以降に、このネットワークシステムができました。
これまでは災害の規模もございますが、新潟の中越地震ですとか、そういった所にも派遣しております。ただ、今回は非常に規模が大きかったということと何よりも......。
「ライフラインの1つとしてガソリンも入れなきゃいけなかったんだ」ということが1つ教訓なんですけれども、「輸送手段がない」ということで日本看護協会の表参道の本部に......。
宮城県の観光業がなくなってしまったバス会社さんにお願いして迎えに来ていただいて、毎日陸路で運行しながらナースたちを派遣しております。そして、3月22日から現時点までずっと続けておりまして、現在574名が(4月)11日の時点で現地に派遣されております。
私はミッションコーディネーターみたいな形で活動させていただいております。フィールドをきちんとアセスメントして、ニーズに応じてナースたちを配置しているような状況です。(スライドを)見ていただくと分かりますが、石巻の状態が悪いですので(石巻市への)派遣人員が(延べ1044人と)多い状況になっております。(中略)
95年以降、厚労省が中心となってDMATというものをつくりました。これは、阪神・淡路大震災レベルを想定して訓練してきたものでございます。私も緊急援助隊ですとか、いろんな所で活動しておりますのでこういったことにも関わっているのでございますが、この活動に関しては一定の成果があったものと思われます。緊急度の高い人、重症者、または透析患者、そういう人たちが空路で広域搬送されていましたので......。
現地に入った時、確かに「重症者はいないな」っていう印象を受けました。ですが、先ほどの先生方のお話にもありましたように、非常に多くのご高齢の方々、要介護状態の方々、そういった方が非常に多くいらっしゃいまして、本当に、言い方は申し訳ないのですが、避難所に入った瞬間に「丸ごと全体が老人ホームかな」という避難所が多数ございました。
ですので24時間避難所に常駐して、そういった要介護状態の方々のケアをしていこうということで、避難所支援という方向でミッションを開始いたしました。
よく、マスコミの方にきかれるんですけれども、「支援ナース」と......、「医療チームと一緒に動くナース」と......、何て言うんですかね、「医療が提供できないという点において支援ナースの役割はあまり意味はないんじゃないか」というような質問をされます。
あの......、普通に医療機関を想像していただけると分かると思うんですけれども、確かに医師による診断、治療というものが行われますが、通常の医療機関でも夜間はナースたちが例えば夜勤して患者さんの世話をしているわけですから......。
これだけ要介護状態の方がたくさん避難所にいる状況では、巡回診療で日中だけ回ってくる医療チームだけではとても......、傷病者とか要介護の方たちの安全が守れないということ状況がございましたので、そこに私たち支援ナースが介入していったということになります。
具体的な活動内容は配布資料をご参照いただきたいと思いますが、特に今回取り上げたい点はですね、避難所の生活状況のモニタリングでございます。(中略)
今は大分暖かくなりましたが、最初は窓ガラスもないような避難所でした。ヘドロで汚染されたような、そんな環境がですね、避難所として使われている。これは私は......、先進国日本なのかという非常に衝撃を持ってとらえております。トイレはあふれ出て、周囲は便で汚染されて、それを新聞紙で必死に綺麗にしながら対処しています。
ちょっと1時間、2時間移動すればですね、仙台市ですとか、もちろん東京もそうですけれども、普通の生活があるのに、なぜあの被災地だけがこんな生活をしているのか、それが私には全く理解できません。
あと、いろんな所で問題になっておりますけれども、要介護状態の方たちが劣悪な環境の中で生活していることによって、いろんな合併症が発生しております。特に、褥瘡、床ずれは深刻でございます。(中略)
【目次】
P2 → 水巻中正会長(国際医療福祉大学大学院教授)
P3 → 田辺功氏(医療ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員)
P4 → 加塩信行氏(医師、永生病院・安藤高朗氏代理)①
P5 → 同②
P6 → 柳川忠廣氏(日本歯科医師会常務理事)①
P7 → 同②
P8 → 泰川恵吾氏(医師、ドクターゴン診療所理事長)①
P9 → 同②
P10 → 石井美恵子氏(日本看護協会)①
P11 → 同②
P12 → 池谷千尋氏(看護師、キャンナス焼津代表)①
P13 → 同②