わが国の救急医療崩壊は再生可能か
■ 救急医療に必要な診療報酬上の評価
【菅井桂雄氏(日本救急医学会保険委員会委員)】
今の先生の総論を受けまして、救急医学会として救急医療に必要な診療報酬上の評価につき、具体的な要望項目を提示いたします。
まず、救命救急入院料についてです。医療計画で定める救命救急センターについては、届出病床以上の患者を受け入れた場合についても算定を認めるというもので、救命救急センターでの受け入れ困難事案解消のためであります。
次はDPCの扱いですが、重症患者は最初の3日から5日間に高額の医療資源を投入する必要があるため、すべてDPCとすると出来高払いに比べて低額になり、医療機関の持ち出しが多くなる。
例えば最初の3日から5日は出来高払いとし、その後DPCを適用するような方向にする。これは、救命救急センター、二次救命医療機関への支援の充実のためであります。
次は、救急医療管理加算。救急医療管理加算の対象を拡大するものです。現在、重症患者を病院群輪番制の当番日に受け入れた場合のみ算定されますが、今後は救急車により救急患者を受け入れた場合に軽症であっても算定可能にする。
さらに当番日でなくても算定できるようにするもので、主として二次救命医療機関への支援の充実が目的であります。
次に、救急医療管理加算です。高度救命救急センターが救急患者を受け入れた場合に加算されることとし、高度救命救急センターへの支援の充実が目的です。
次に、救急医療管理加算(救急医体制加算)です。救急医として経験1年以上の医師が救急診療を担当している場合加算されるというもので、救急医への支援充実が目的であります。
次に、救急医療管理加算(受け入れ促進加算)です。地域医療計画上規定される受け入れ困難事案を確実に受け入れる医療機関、または管制塔機能病院として位置付けられる医療機関の場合に算定できるという最後の砦の支援目的です。
次に、救急支援医療機関加算。管制塔病院や救命救急センターと連携している支援医療機関が、管制塔機能病院等から患者を受け入れた場合、算定します。管制塔支援病院への支援及び医療機関間の連携の強化が目的です。
次に、急性期入院加算の復活。平成16年度改定時に存在していた急性期入院加算(紹介率、平均在院日数等を指標とする)を復活する。これにより、救急車搬入患者を積極的に受け入れる医療機関が評価され、二次救急医療機関を中心とした救急医療機関への支援の充実と、救急患者の受け入れ促進につながることが期待されます。
次に、夜間・休日救急加算の増額です。夜間・休日の加算を現行の2から3倍にすることにより、救急医療機関への軽症患者の集中の適正化、及び初期救急機能の向上が期待されます。
次に、電話再診料の夜間救急加算ですが、これは開業医、かかりつけ医に対してのものであります。患者に準夜帯または24時間対応可能な電話番号を付与しており、夜間から深夜に患者からの診療相談に対して助言・指導した場合に算定できるというものです。
しかし、救急医療機関への受診を指示した場合は算定できません。これは、救急医療機関への軽症患者集中を適正化し、初期救急機能の向上を目指すものであります。
次に、救急医療管理加算。解釈の追加です。7日以内であれば、転院搬送後、他院で継続して診療する場合を対象に加えるということです。後方ベッドの確保促進のためです。
最後に、初診料の加算。救急外来において胸痛、ぜんそく、アナフィラキシー等鑑別及び処置治療に時間と手間を要する疾患を診療する場合に加算可能とするものです。
緊急な救急患者のうち、外来ベッドで長時間経過観察の必要な患者に対する、入院に準じた加算の創設を要望するものであります。
以上、12項目の要望を提出いたしました。
これらの要望が受け入れられれば、救急に積極的な医療機関の赤字は解消され、医療従事者の仕事環境が改善され、立ち去り型サボタージュなどという現象がなくなり、本来やりがいのある仕事であった救急医療における若手の医師、看護師、コメディカルの人材確保が可能となり、ひいては、患者、国民全体が適切な救急医療を受けられる体制づくりに一歩でも近づけることを期待しております。
以上でございます。
▼ 質疑応答は議事録を参照。
【目次】
P2 → 重症救急の受入状況
P3 → 二次救急医療機関の受入状況
P4 → 照会11回以上事案の時間別分布
P5 → 救急受入が困難な理由
P6 → 地域の搬送・受入ルールの策定
P7 → 搬送先が速やかに決定しない場合
P8 → 二次のしわ寄せが三次の救命センターへ
P9 → 救命救急センター等の受入率
P10 → 医師の勤務時間、当直回数
P11 → 研修後に専門としたい診療科
P12 → 救急医療に必要な診療報酬上の評価