文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

わが国の救急医療崩壊は再生可能か

■ 二次のしわ寄せが三次の救命センターへ
 

【島崎修次氏(財団法人日本救急医療財団理事長)】
 下のページは、先ほど言いました二次救急医療機関が閉鎖したりあるいは、これは総務省のデータですが、処置困難等の理由で二次救急医療機関が受け入れにくい。そのしわ寄せが三次の救命センターに来ている。

中医協ヒアリング-105.jpg

 三次は、地域の最終受入医療機関として機能しないと救命センターの要件を果たせませんから、そういう意味では比較的軽い患者も受け入れてしまう。

 そうしますと、救命センターが満床になる。比較的軽い患者が先に入って、その後すぐに重症が入ってきた場合でもその患者を断らざるを得ない。

 かなりの率で断る救命センターは、けっこう患者は入れているんですけれども、断る理由として、実際にはそういう軽い患者が入ってしまったためにベッドがなくなっているというような状況です。

 三次は、大体届出が30床ぐらいの救命センターが多いわけですけれども、そこから出口として療養型病院等へきっちり出て行ってくれればいいんですけれども、例えば気管切開があるとか、あるいは胃ろうをつくっているとか、あるいは人工呼吸器がついているとかMRSAがあるというようなことになると、なかなか出口になる病院が受け取ってくれない。

 療養型病院は数が少ない上にどんどん減っているということで、ふん詰まりの状態が救命センターに来ているということが言えます。

 非常に回転が悪くなっているということなんですが、最終受入医療機関ですから届出病床数以上に患者を受け取って、30床のところを1人、2人、31床、32床と患者をとると、何とその三十数名分すべての救急入院料がだめになっちゃうんですね。

 地域のためを思って患者をとると、病院へ、救命センターへ入った患者のその一、二名が救急救命入院料じゃなしに全部がだめになるようなシステム。

 とても考えられないような。救急患者を数以上に受け取るなというようなことが規制されています。それも非常に問題があろうかなというように思います。

 そういう中で、もともと不採算部門で、ちなみに典型的な都内の救命センターで、大体1,500名から2,000名ぐらいの重症だけを受け取っている救命センターの1カ月の平均の赤字が大体2,500万円ぐらいになります。

 これ、そこの二十数床の診療科の常にワースト3ぐらいに入っているというような状況で、病院としては救命センターとして地域に協力したいんだけれども、基本的にそういう状況だと協力できないというようなことが病院の中で言われて、非常に救命センターとしては肩身が狭い状況だということになります。

 ちなみに、今言った2,500万円ぐらいの赤ですと、大体100円稼ぐのに130円ぐらいを要するというような状況になります。

 それから、DPCをほとんど多くの病院でやっておりますけれども、DPCは診断のついた患者をその診断に従って治療していって診療報酬を受け取るというようなシステムなんですけれども、もともと原因不明で患者が運ばれてきて、症状で意識不明だとか胸が痛い、胸が痛いといってもあらゆる病気が、おなかの病気も頭の病気も、それから当然心筋梗塞等も含めていろんなものが入りますが、それを全部ルールアウトして、ではやはり胆のう炎の重症だというような話になってくると、それまでの検査等を含めてDPCに全く合わないんですね。

 ですから、やっぱり急性期、特に救命センター等を含む急性期の患者を診ているところでDPCは、これは諸外国も含めてですが、合っておりません。

 診断名もきっちりした診断名が症状別で来ますから合わないということで、外国はどうしているかというと、日本と同じようにある種補助金的なことでのりしろをつくっているわけですけれども、それは病名を適当に後で変えたりとか非常に不健康だと私は思っております。そういうことになっております。
 

【目次】
 P2 → 重症救急の受入状況
 P3 → 二次救急医療機関の受入状況
 P4 → 照会11回以上事案の時間別分布
 P5 → 救急受入が困難な理由
 P6 → 地域の搬送・受入ルールの策定
 P7 → 搬送先が速やかに決定しない場合
 P8 → 二次のしわ寄せが三次の救命センターへ
 P9 → 救命救急センター等の受入率
 P10 → 医師の勤務時間、当直回数
 P11 → 研修後に専門としたい診療科
 P12 → 救急医療に必要な診療報酬上の評価

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス