長期入院患者に係る診療報酬について
2009年10月、政権交代に伴い中央社会保険医療協議会(中医協)委員の大幅な変更があった。
それまで診療側の発言をほぼ独占していた日本医師会執行部の委員3人が外れ、新体制の中医協がスタートした。
それから約1か月が経ち、2010年度改定が押し迫った12月4日、東京都千代田区の九段会館。
「資料および論点ですけれども、大変分かりづらいですね。もう少し議論ができるようなものにしていただきたいと思います」
座長が厚労省の課長を強い口調で叱責した。議題は「後期高齢者に係る診療報酬について」だった。長期入院のベッドをどうするか、終末期医療についてどうするか、重い課題を抱えていた。
医療費抑制策が続く中、長期入院の患者を追い出すために修正を重ねた「つぎはぎだらけ」の仕組みは複雑きわまりないものになっていた。新たにメンバーに加わった委員が議論に参加するのは難しいように見えた。
2週間後の18日、再び「後期高齢者に係る診療報酬について」が議題となった。
「分かりやすくを心がけて図をつくり直してまいりました」
前回よりも詳細なカラーの資料を厚労省の課長が丁寧に説明したが、端々で「かなり難しい」「非常に複雑」とこぼした。
その後、高齢者医療をめぐる問題について十分な議論が尽されたとは言えず、2010年度改定では「後期高齢者」という言葉の付く点数の廃止や、「75歳」という年齢区分の廃止などにとどまった。複雑怪奇な仕組みは現在もほぼそのまま残っている。
来年4月、医療と介護の同時改定が予定されている。大きな視点としては、専門的な医療処置を必要とする長期入院患者をどうするか、すなわち慢性期のベッドを減らすための施策を継続するのか否かという課題を残している。
さらに、医療が担っている介護・福祉的な部分をどうするか、お金のかかる在宅医療を進められるか、看取りを含めた医療提供体制をどうするか──なども挙げられるが、財政的な裏付けがなければ大幅な改定は難しいとの声もある。
「社会保障」を重視する新厚労相が、高齢者医療や長期入院患者をめぐる問題に切り込むことができるか。「政治主導」を可能とするような専門的な政策集団を持っているか。財源はどうするか──。
長期入院の問題は、難解で複雑な診療報酬制度の代表的な存在でもある。眺めるだけでもイヤになるような資料をあえて紹介したい(出典:2009年12月18日の中医協基本問題小委員会の資料、および議事録)。
【目次】
P2 → 資料の確認等
P3 → 病院の機能に応じた分類
P4 → 特殊疾患病棟入院料
P5 → 障害者施設等入院基本料
P6 → 後期高齢者特定入院基本料
P7 → 長期入院患者に係る療養の場
P8 → 平均在院日数の算定方法
P9 → 特定除外項目
P10 → 医療区分採用項目
P11 → 特定除外と医療区分の対応関係
P12 → 長期入院患者に係る療養の場(改定案)
P13 → 後期高齢者特定入院基本料(改定案)
P14 → 一般病棟で提供される医療の実態調査等
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