後期研修班会議1
「開業医のレベルが高いのはその通りだと思うが、高い人とそうでない人の区別がつかないという問題がある。副院長になるまでは月に5回くらい地域の医師会の勉強会に顔を出していた。そうすると、そこへ来る人たちのレベルは大変高く、特に画像から肺がんを見つけることに関しては我々もかなわない。ところがそういう所に来る人は何百人も医師会に会員がいるうちの十数人。他の分野では、また別の先生がそういうことになっているのだろう。総合的な力という意味ではどうなのか」
渡辺
「もともと循環器の医師だった人が必要に迫られて他の分野も勉強しているということが多い。たしかに質をそろえるか考えると、基準を設けてパスした人たちを対象にするようなことは必要だろう」
土屋
「新たに開業するような人は元々専門を持っていて、そこに個人的な努力を重ねて幅を広げていくというのが実際のところだろう。そうやって完成された開業医は実に立派だということは認めるが、その途上でいわば試されているのは患者の身になったらたまったものではない。やはり系統だって育てられる仕組みが必要でないかと思う。そうやって考えれば決して医師会とも対立するものではないはずだが」
葛西
「福島県では3つの郡市で『実践家庭医塾』というものを実施している。実際にはゆっくり進行していて月に1回ワークショップを開催しているだけだが、全国でこういったものを早い段階で開催できるようになったらよいのでないか」
沈黙を守っていた山田班員が口を開く。
「最初の出発点に戻ると、このビジョン検討会の進め方は非常によく整理されており、実効性を期待できると思っている。問題は医師不足であり偏在である。数は増やすと大枠が決まった。偏在解消にどのように明確な方法を描くことができるか。偏在として、今まで診療科の偏在、地域の偏在が挙げられていた。もう一つ設置形態による偏在もある。この3つの根源的な問題に対して実効性ある方策が立てられるか。制度を直すとして、どこを見て修正するのか、難しい問題ではあるがそこに挑まなければならない。ただし目的としているもののことを考えると、適切な指標探しばかりに終始していてもいけない。ある程度のところで、これが適切であろうと取りまとめる必要があると思う。その目的を達するため、積極的に関与し発言していきたい」
川越
「私も検討会はいい方向に進んでいるなというのが実感。後期研修や専門医の話をするうえで、各専門の学会は自分たちの会員が増えた減ったは知っていると思うのだが、自分たちの領域に何人必要かという計算をしているのか。それがないと話にならないはず。何度も同じことで恐縮だが、産科はたぶん計算しやすい。もちろん運用にもよるだろうけど。麻酔医も同様に計算できるんじゃないかと思う。がんの在宅医だって現在がんで亡くなっている30万人のうち6%が在宅死しているのを20%に持っていこうとするなら、在宅がん医を何人育てればよいか計算できる。各学会は、どう必要数を見ているのか。計算する根拠があるなら、できるところは計算してもらいたい」
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