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厚労省の「医師密度」案に異論噴出

■ 「重症救急の受け入れ率も非常に重要」 ─ 金田委員
 

[金田道弘委員(社会医療法人緑荘会理事長兼金田病院長)]
 ご指名いただきましてありがとうございます。重症患者を診る機能を評価する、これはよく分かります。(救急受け入れ機能の評価を主張する元慶大病院長の)相川委員もおられますけれども、重症救急のことが7月23日の全国紙に載っておりましたけれども......。

 重症救急の「たらい回し」率が4年連続して1万人を超えたと。最多は41回、東京都の60歳の男性が拒否されたと。こう考えれば、重症救急もやはり、受け入れ率というのも非常に重要な意味がありますし、いくら病院があっても拒否すれば(病院が)ないと一緒ですよね、患者さんにとっては。

 個人的な例で申し訳ないのでけれども、昨日は私、当直していまして、朝出てきたんですが、夜間に5台救急車が来まして、圏域外からも2台来ましたけれども、全部受け入れました。そういうふうな大病院がない地域で、受けざるを得ない所で頑張っている所を何らかの形で適正に評価しないと破綻するということを申し上げたいと思います。

 ▼ 会議終了後、発言の意図するところを金田委員に尋ねたところ、次のように話してくれた。
 「重症患者を診る医療の質の高い機能を適切に評価する必要があることは十分理解できます。ただ、重症患者の中には重症救急患者もおられると思います。大病院だけが重症救急患者を受け入れているわけではありません。
 7月23日の日本経済新聞に、『平成22年度の重症救急搬送で、病院の受け入れ拒否3回以上が過去最多の1万6千件。東京がトップ4077件。最多拒否は東京都の60歳男性の41回。救急隊員は3時間搬送先を探し続けた』とありました。素朴な疑問として、医師密度が高く、医療の質の高い大病院が集中している東京で、なぜこのようなことになるのか、実に不思議な気がします。受け入れを拒否されたら、その救急患者にとっては、その病院がどんなに医療の質が高くても、病院がないのと同じことになります。
 私たちの医療圏では、わずか人口5万人の医療圏に中小病院ばかり7病院あり、いずれも2次救急輪番制に参加していますが、重症救急搬送拒否3回以上の割合は、岡山県内消防本部単位でも、最も低い(平成20年)か、第2位(平成21年)で、大病院や救命救急センターのある医療圏よりむしろ低い結果となっています。
 私たちの病院でも、大病院がない医療圏で深刻な医師不足ですが、何とかみんなで工夫して頑張って受け入れています。当院は、医療圏内の救急搬送の約40%を受け入れており、一方、当院に搬入される救急車の22%は、他の医療圏から受け入れが困難で来られます。
 当院はケアミックスで、DPC以外に亜急性期病床、医療療養病床もあります。大病院か中小病院か、ケアミックスか否か、亜急性期病床併設か否かではなく、病院単位で医療圏内で果たしている『役割』を適正に評価すべきではないかと考えます。バックグラウンドによって、その病院が果たしている『役割』に対する評価は全く変わってくるはずです。
 実は、昨夜私は当直で、夜間だけで救急搬入が5件ありましたが、うち2件は隣接する他の医療圏からの搬送でしたが、副当直医の協力を得て、何とかすべて断らずに受け入れることができました。
 私たちは、自分の病院に責任を持つだけでなく、地域に責任を持つことが期待される存在だと考えています。極めて深刻な医師不足が最大の課題であり、1日でも早く改善することを切望します。そこで提案しているのは、地域の中小病院へ医師を派遣することを診療報酬上で評価することです。そうすれば、派遣元の大病院も地域への医師派遣のインセンティブになるし、医師不足で崩壊の危機にある地域の中小病院も頑張れると思います。
 派遣先の病院選定については、地域医療計画を策定している都道府県の意見を聴くべきではないかと考えます。必死の思いで、使命感を持って、懸命に地域の役割を果たそうとしている全国各地の中小病院が適切に評価され、全国の地域医療がさらに崩壊しないことを心から願ってやみません。医療の『質』と、地域における『役割』が評価され、初めて適切な評価と言えるのではないでしょうか」

[小山信彌分科会長(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
 ありがとうございます。まさに、「機能評価係数Ⅱ」の所ですごい大事な議論になっていくと思います。美原委員はいかがですか?


【目次】
 P2 → 厚労省の説明
 P3 → 「医療政策上のメリットを具体的に述べて」 ─ 齊藤委員
 P4 → 「線引きを検討すること自体が問題である」 ─ 池上委員
 P5 → 「高く付けるという誘導的な資料はどうなのか」 ─ 三上委員
 P6 → 「他の視点があれば今後検討して」 ─ 嶋森委員
 P7 → 「初期研修医を医師密度に入れていいのか」 ─ 瀬戸委員
 P8 → 「5年目までの医師数が一番評価しやすい」 ─ 伊藤委員
 P9 → 「医師の獲得合戦という変な方向も」 ─ 酒巻委員
 P10 → 「ファクターを満たす実態が伴った医師密度」 ─ 厚労省
 P11 → 「重症救急の受け入れ率も非常に重要」 ─ 金田委員
 P12 → 「高度な技術は医師密度と関係ない」 ─ 美原委員
 P13 → 「地方の病院でも質の高い治療をやっている」 ─ 難波委員

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