医師不足に関する見解
■ 医学部定員削減の見直し
【東京大学医科学研究所・上昌広特任教授】
1つ目は、2008年、どうしてこんな医師不足という議論が出てきたのだろうかと。これは、私は福島県立大野病院事件が原因だと思っているのです。
実は、それまでは医療ミスとか医療過誤とかやたら出てきていたのが、この事件をきっかけに、一面、「医師逮捕」、「心切れた」「お産難民、深刻に」、「分娩施設 実態は3000カ所」。
実は、「分娩休止」という新聞記事を当研究室のスタッフが数えました。2006年から急増しております。「医療崩壊」というのは2007年から急増しています。新聞というのは世論の反映ですから、ある意味2007年の段階で、この国の医療は崩壊しているのだと、国民がコンセンサスを持ったと思います。
その後、東京でもたらい回しが発生しました。武蔵野のほうと江東区、墨東病院ですね。そちらで発生いたしました。何だ、東京ってお医者さん余っているのではないか。ところが、あにはからんや、そんなことはなかったのです。
これを受けて、2008年、当時の舛添要一厚生労働大臣が安心と希望の医療確保ビジョンの具体化に向けてを発足させる作業委員会、舛添ビジョン改革というのを出します。メンバーは、この方々です。
この中で言われたことは、年限を区切って医学部定員を50%増やしましょう。8000人を1万2000人に提言しました。ちょっと驚きますけど、このメンバーの中に、前言を撤回した方が何人かいらっしゃるのですが、研究者たるもの、意見を変えるときは、ちゃんと説明してほしいと思っております。
とにかく、この会議というのは大野病院事件、それから救急車のたらい回しを受けて、医者が足りないがコンセンサスとなって、こういう会議と提言となりました。それまでの提言というかコンセンサスです。
これは読売新聞の2008年の記事、舛添会議がやっている横の記事です。
どうやら自民党の中でいろいろあったのでしょうね。臨床医の医師数はどんどん増えていく。必要医師の数は決まっている。だから、やがて足りるのだ。2022年度で逆転する。もう要らないと。
私は、これに関しては全くナンセンスだと思っています。なぜなら、このときに足りないと考えられたのは勤務医です。
【目次】
P2 → 医学部定員削減の見直し
P3 → 2008年改革の要点
P4 → 東西格差という問題
P5 → 医学部の偏在
P6 → 地域内格差 ─ 愛知県
P7 → 地域内格差 ─ 徳島県
P8 → 地域内格差 ─ 茨城県
P9 → 地域内格差 ─ 千葉県
P10 → 地域内格差 ─ 東京都
P11 → 偏在に関する総括
P12 → 災害と医療 ─ 岩手県
P13 → 災害と医療 ─ 宮城県
P14 → 災害と医療 ─ 福島県
P15 → 連携・集約できない ─ 北海道
P16 → 未曾有の高齢化を迎える日本
P17 → 結語
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