文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

医師不足に関する見解

■ 医学部の偏在
 

【東京大学医科学研究所・上昌広特任教授】
 これは都道府県の医師数、ちょっと古いのです。平成16年ですが、濃いところが、お医者さんが多いところ、薄いところが少ないところです。明らかに西高東低です。

上昌広先生資料_09.jpg

 先ほど長崎県では、壱岐地域は少ないと言いましたが、壱岐地域は東北地方の平均値です。むちゃくちゃひどいと言われた五島列島は千葉、茨城、埼玉の平均値です。これは困りましたね。

 なぜこうなったのか。これは医学部が西に多いからです。

上昌広先生資料_10.jpg

 東京は、医者が多いと言われます。東京の人口は1300万いて、13の医学部があります。ちなみに四国は400万で4個、中国は757万で6つ、九州は1400万で11個。少ないのは関東圏です。

 千葉県620万に1つ、埼玉県720万、防衛医大を入れて2つです。それは、これだけ格差があれば西に増えますよね。なぜ西に多いのか。

 私はこういう大学、古い大学の配置が決まってきたのが、おおむね明治から戦前にかけての、この国の近代を担った時期だと思っています。薩長のリーダーたちが自分たちのところにつくったのだと考えています。

 例えば、帝国大学・ナンバースクールを示しましょう。

上昌広先生資料_11.jpg

 愛知県より東は、東京と仙台と北海道しかありません。東京は、当然、薩長の方々がつくった町、北海道も薩長の方々が行きましたね。サッポロビールは薩摩がつくりました。

 となると、全く関係ないとこは仙台に1カ所だけとなります。それは、これだけ格差があれば人材格差が生まれますよね。菅総理、麻生総理、鳩山総理、全て西日本です。

 2人以上の総理大臣を出した東側は、岩手県と群馬県しかありません。九州地区で総理を出してないのは、長崎と宮崎しかありません。おそらく、今日ご来場の方々も九州の方は多いのではないでしょうか。私は、ちなみに神戸です。

 東大の合格者です。うちの学生がしこしこ数えました。

上昌広先生資料_12.jpg

 人口当たりの東大合格者が一番多いのは東京です。6.3、多いですね。次は、何と四国と九州なのです。神奈川県の人口当たりの東大合格者数は、何と九州、四国より下です。茨城、埼玉、栃木、群馬、千葉を足した東大合格者数よりも、九州の数のほうがはるかに多いです。これ、かなり衝撃的だと思うのです。

 ちなみに、昭和50年以降、高校野球で公立高校で優勝したのは、四国、九州、中国しかありません。昨年度のスポーツ、野球、ラグビー、駅伝、バレー、全て九州が優勝しました。

 実は、今考えなければいけないのは、この国は地政学的に中国に近いところが豊かになりやすい構造を持っているのです。地震があって西に資源が動くでしょう。このままにしておくと、おそらく東北、東日本は、私はじり貧になると思っております。
 

【目次】
 P2 → 医学部定員削減の見直し
 P3 → 2008年改革の要点
 P4 → 東西格差という問題
 P5 → 医学部の偏在
 P6 → 地域内格差 ─ 愛知県
 P7 → 地域内格差 ─ 徳島県
 P8 → 地域内格差 ─ 茨城県
 P9 → 地域内格差 ─ 千葉県
 P10 → 地域内格差 ─ 東京都
 P11 → 偏在に関する総括
 P12 → 災害と医療 ─ 岩手県
 P13 → 災害と医療 ─ 宮城県
 P14 → 災害と医療 ─ 福島県
 P15 → 連携・集約できない ─ 北海道
 P16 → 未曾有の高齢化を迎える日本
 P17 → 結語

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス