村重直子の眼8 内田健夫・前日本医師会常任理事
内田
「接種勧奨するのは構わないですよ。医療関係者は早く受けておきなさいとか、心配な人はあらかじめ医療機関に相談しなさいとか、そういうことはやっていい」
村重
「理念を提示するだけならいいですよね。でも日本は、優先する対象の中での順位を強制しました。しかも何週間かごとに、この日からでないとこの人たちは接種してはいけないと。あまりにも非現実的です」
内田
「しかも開業医レベルだと、10ccバイアルで非常に困るという問題もありました。20人予約取っとかないといけないとか、本当に大変ですからね」
村重
「予防接種法の改正案が国会で継続審査となっていますが、その素案を作った厚労省の予防接種部会の話では、その順位決めを法律にまで書き込む方針でした。実行不可能なことを法律に書かれたら、ほとんどの医師が患者のためには違法行為をせざるを得ないので、役人がいつでも医療機関や医師を処分できる状態になってしまいます。順位決めの問題だけでなく、本来、去年の新型インフルエンザワクチンは、予防接種法に基づく法定接種とすべきだったところを、役人が理由をつけて法定接種にしなかったんです。予防接種法に1類・2類という区別があって、1類はみんなのための蔓延予防、2類は個人の重症化予防という異なる目的だとして分けていますが、この区別は医学的には分けられないものを、机上のロジックで無理して分けているだけです。この区別があること自体おかしいのですけれど、区別がある現状でも、新型インフルエンザを1類に政令で追加する方法もあったし、書いてあるとおり2類とする方法もあったのに、役人は両方ともしませんでした。いずれにも当たらないと。現実とかけ離れた机上のロジックで1類でも2類でもないと言っていたかと思ったら、年が明けてから役人が辻褄合わせで言い始めたのは、弱毒性だったからというものです。季節性インフルと同程度のものだったから、国民に努力義務を課すほどのものではないという説明をしたのですが、弱毒性だったらどう、強毒性だったらどうなんて、分けられるはずありません」
内田
「後追いの議論ですからね」