医療システムと必要医師数
■ 在宅死率30%の効果
【千葉大学医学部附属病院長】
そこで、在宅を推進することによってどの程度の影響が必要医師数に出てくるのか。
先ほど出しました医師数の問題は、医籍登録者の総医師数のデータです。しかし、ここで在宅医療を推進することによって必要医師数がどうかということを考えるためには、医療条件に基づいた必要医師数という機能的な考え方を導入しないと比較ができませんので、一応暫定的にこのような診療条件を設定いたしました。
これはもちろん幾つかの実際のデータをもとにつくってあるわけですが、少し厳しい条件になっています。
1)の外来診療は、4分診療で、1日6時間の診療を行う。
2)の高度医療病院、これはDPC病院を対象としておりますが、医師1人が入院患者5人を診る。
3)の急性期病院、これは二次救急病院として申請している病院ということを対象にしておりますが、医師1人が患者10人を診る。
4)は、その他の病院ということで、療養型病院というふうに名前をつけましたが、医師1人が患者25人を診るというような条件です。
そうしますと、高度医療病院が10%、急性期病院が50%、療養型病院が40%と、大体病院の割合を把握することができます。
全体の病床数の割合とし、入院患者を病床数で割り振りまして、今の1)から4)の条件で医師数を計算していくわけです。外来患者数は人口に受療率を掛けて割り出しまして、1)の条件で医師数を計算するというものです。
これがその結果でございますが、このデータのブルーのライン、これが人口構成等々の患者数の動きに合わせまして、ただいまの条件で必要医師数を計算したものです。
これは現状で、在宅死率を12%で計算しています。それがこの部分ですね。先ほどの総医師数の動きをこれに重ねてみますと、これは医学部定員が8,923人の条件ですが、今は不足していますが、2022年ではただ今の診療条件による必要医師数に一致してまいります。
話が在宅死に戻りますが、他の条件は全部同じにしておいて、在宅死率だけを12%から30%に変えると、いわゆる療養型の病院における入院患者数が減りますから、それだけ必要医師数が減るということになります。破線で示したものです。
そうしますと、現在でも在宅死率30%であれば、医師数は必要数を満たしているというデータになります。
【目次】
P2 → 高齢化率
P3 → 高齢者数の増加
P4 → 医療圏による患者数推移の相違
P5 → わが国の医師数の動き
P6 → 医療問題は誰の責任か?
P7 → 医師数と医療システム
P8 → 病院での死亡者数の増加
P9 → 在宅医療推進の目的
P10 → 在宅死率30%の効果
P11 → 疾病コントロールによる効果
P12 → 循環型医療と医療情報の共有
P13 → チーム医療からIPW
P14 → 国立大学附属病院の役割と機能
P15 → 医療需要増加に対する対策