医療システムと必要医師数
■ わが国の医師数の動き
【千葉大学医学部附属病院長】
それでは、我が国の医師数について考えてみたいと思うのですが、これは今までにもよく話が出ておりますOECDの人口1,000人当たりの医師数の比較です。
一部2007年のデータもありますが、2008年のOECDのデータで見ております。
一番右側に平均値が書いてございまして、真ん中の方に赤で日本が書いてあります。OECDの基準に比べて日本は非常に人口当たりの医師数が少ないということです。
それでは、これから我が国の医師数はどのように動いていくのだろうか。
これは医籍登録者の総医師数をプロットしたものでございますが、ご承知のように今年から医学部の入学定員が8,923人になりました。
そこで、この条件の基に総医師数を計算をしたものでございます。OECDのレベルももちろん微妙に変わってくるわけですが、今後の動きは予測できませんので2008年のデータが、変わらないという前提にしました。
そうしますと、OECDレベルになるには2026年、G7、これはOECDの中からピックアップしたデータですが、2028年にそのレベルに達します。
そして、もしさらに1,000人、医学部の定員数を増やすとしますと、ここで1,000人増やすというのはあり得ないと思うのですが、準備期間も入れて2013年より入学定員を1,000人増やして1万人にした場合、どのように医師数が動くのかということで見ますと、OECDレベルになるには、定員が8,923人に比べまして、2年間しか短縮されません。
というのは、目標値のところが非常に近いですから、あまりその効果は出ない。ところが、その後、入学定員1万人の方は増加率がぐっと増えてまいります。
ですから、全国の入院患者数のピークというのは大体2030年前後、これは他のデータでもよく言われておりますが、入学定員が10000人ですと、患者数が減り出した後の医師数の増加率というものは非常に大きくなってくるということであります。
【目次】
P2 → 高齢化率
P3 → 高齢者数の増加
P4 → 医療圏による患者数推移の相違
P5 → わが国の医師数の動き
P6 → 医療問題は誰の責任か?
P7 → 医師数と医療システム
P8 → 病院での死亡者数の増加
P9 → 在宅医療推進の目的
P10 → 在宅死率30%の効果
P11 → 疾病コントロールによる効果
P12 → 循環型医療と医療情報の共有
P13 → チーム医療からIPW
P14 → 国立大学附属病院の役割と機能
P15 → 医療需要増加に対する対策