医療システムと必要医師数
■ 高齢者数の増加
【千葉大学医学部附属病院長】
高齢化率の上昇ということには2つの面がございまして、1つは、労働人口が減少してくることによって、相対的に高齢化率が上がるというものです。
この場合には、労働力の低下、あるいは税収の減少といったようなものにつながるかもしれませんが、高齢者の絶対数が上がらなければ、医療・介護というものの急速な増大ということにはならないと考えられます。
しかし、一方において高齢者数の絶対数が上がってきたことによる高齢化率の上昇の場合には、医療および介護の問題というものは急速に必要度が上がってきます。この場合、労働人口が変化しなければ、労働力というのは緩やかな減少にとどまります。
そこで、先ほどから申し上げております高齢化に伴った医療需要という問題につきましては、高齢者の絶対数の増加ということが非常に重要な要因でありまして、2010年を基準にして10万人単位で高齢者の増加を地区別に示したのが、この図でございます。
そういたしますと、2020年をごらんいただきますと、高齢者数の増大が起きるのは、北海道、関東、中部、関西、福岡というところでございます。2030年は、広島あたりが抜けてまいりますが、ほとんど同じようなパターンで2040年ぐらいまで行きます。
先ほど2040年を過ぎますと高齢化率が下がるということを申し上げましたが、高齢者の絶対数も2040年を過ぎますと減ってまいります。
しかし、2050年でも、東京、関東地区、この地域には高齢者の絶対数の増大が継続して起こってくるということで、先ほど申しましたが、高齢化に伴う医療問題は、都市部において長期にわたり非常に大きな問題になるということでございます。
【目次】
P2 → 高齢化率
P3 → 高齢者数の増加
P4 → 医療圏による患者数推移の相違
P5 → わが国の医師数の動き
P6 → 医療問題は誰の責任か?
P7 → 医師数と医療システム
P8 → 病院での死亡者数の増加
P9 → 在宅医療推進の目的
P10 → 在宅死率30%の効果
P11 → 疾病コントロールによる効果
P12 → 循環型医療と医療情報の共有
P13 → チーム医療からIPW
P14 → 国立大学附属病院の役割と機能
P15 → 医療需要増加に対する対策