医療事故調検討会17
課題について述べた部分のみ記す。
「死因究明と再発防止を目的としているが、評価手法については、なかなか難しい。発生時点において、その時点でその診療行為が標準的な診療からみて適切であったかどうか評価するもの。その評価の立場と、後から振り返ってみて、再発を防止するという観点でどうすればよかったかという評価とでは、自ずと違う。その領域の専門家が集まっても、必ずしも容易に明確にできるわけではない。トレーニング、経験が必要で、マニュアルも必要である。
これまで評価委員として参加していただいている方は、学会から推薦をいただいた先生方で、同じ人が続けてということではなくて、事例ごとにお願いする先生が替わっている。ほとんどの先生は初めて評価委員会に出席することになり、評価法がいつも同じにならないし、評価に時間がかかる。今年度からは、マニュアルを整備してできるだけ統一し、全国的な視点で行うにはどうすればよいか検討しながら取り組んでいる。
遺族への対応については、当初できるだけ中立的な立場で死因究明することを目的に掲げていたので、必ずしも遺族の疑問点に答えていない報告書もあり、遺族から不満を伝えられる場合
もあったので、現在ではできるだけ遺族から疑問を聞き、それに対する答を入れる形で報告書をまとめる方向でやっている。当初、3カ月で報告書をまとめて提出する目標だったけれど、実際にはなかなかまとまらず、遺族の不信感を呼んだこともあった。
現在までのところ既に報告書を渡した事例がその後どうなったかという点について、11月の時点で医療機関に問合せをし、回答があった37事例の結果を3頁にまとめた。遺族との間で民事裁判になった例が37事例のうち1つ、今後民事裁判になる可能性があるのが1つ。報告書の説明会以前に示談あるいは和解等が成り立ったのが2事例。評価結果報告の説明を聞いた後に示談・和解となったのが8事例。特段のトラブルはなかったのが25事例。刑事事件となった事例はない」
「遺族あるいは依頼医療機関がモデル事業をどう評価しているかについては、昨年、一昨年にアンケート調査を行い、別添に報告書をまとめた。遺族は病院の診療に対して何らかの疑念があり、このモデル事業に参加していただいており、モデル事業に参加したことには満足度は高いようだが、病院に対する不信感が消えたかというと、それはなかなか消えてはいない。一方、医療従事者側はその点に関して、遺族の理解は深まったと理解している医療機関が多いので、その点で見方に少し差がある。ただしモデル事業に参加できたことに関しての満足度は、両者共非常に高いと認識している。遺族は結果やその内容の理解が十分でない点もあると思われ、モデル事業の中でやるかどうかは別として、メディエーションやADRなど遺族の理解を深めるような活動が必要であろう」
「1件あたりコストは平均約94万円。課題は以下3点。3分の1ぐらいの遺族から、解剖に同意が得られなかった。第三次試案での事例が解剖事例が中心になると、解剖に対して何らかの啓蒙活動が必要だろう。モデル事業では、医師法21条の対象となるような事例は対象としていない。新しい制度では医師法21条の事例も対象になると考えると、新しい制度ができる前の移行期には、医師法21条の事例も取り扱い、その結果を早い段階で公表し、それに対応するという経験を積んでいかなければと思う。現在は、ウィークデーのみの受け付けなので、24時間受け付ける制度になると、かなりのマンパワーと組織が必要になるだろう。
モデル事業では、評価を行う臨床医・解剖医を含め、皆さんにボランティア的な参加をいただいている。結果がまとまるまでに約10カ月かかっているが、評価にかかっている時間を短縮したり、多く臨床の専門家と打合せをする作業をもう少し簡便化したり、調整看護師との業務分担を見直すことで、時間短縮は可能だろうと思っている」
「再発防止への提言については、同じような作業をしている日本医療機能評価機構とどういう役割分担をするか、これも今後の大きな課題だと思う」
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