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ニュース〜医療の今がわかる

現行医療計画の問題点について

■ 事業計画、実施計画の必要性
 

【河原和夫・東京医科歯科大学大学院教授】
 28頁です。各県の医療計画を分析したところ、死亡率を下げるなどいろいろありますが、バラバラなのです。

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 少なくとも階層性は要ると思います。例えばいちばん上の理念として、私が勝手に設定しましたが、QOLの向上あるいは健康寿命の延長でもいいと思いますが、それを実施するためには死亡率を低下させたり、要入院、要介護率を下げる、あるいは入院期間を短縮する。

 そして、死亡率を低下させるためには、予防を強化する、医療体制を整備すると。短冊状に次々と課題が出てくるわけです。

 ずっといって、赤で囲って「できる」「できない」と書いていますが、例えば職員を確保できるかとか、そういう問題に及んでいます。つまり、下にいくような構造がないのです。各県の医療計画が、上の2行ぐらいで終わっているのです。

 だから、実効性を持たすためには、下の施策体系、予算を伴うもの、伴わないものはもちろんあると思いますが、さらに下の事業計画、実施計画という体系が必要になってくると思います。そうなれば、5年ごとではなくて、事業計画、実施計画の部分は、毎年でも評価しないといけない。

 それから、大事なのは通知表を作ることだと思います。

 献血に関しては、いま通知表を作って、献血率がいいところと悪いところと。献血というのは、地元でやるのと、遠隔地でやるのがあるので、いままで献血率がわからなかったのですが、私の研究で献血率を測りましたので、それを市町村あるいは都道府県ごとの率を比較して、競争をあおるとか、住民の支援をいただくとか、そういう形でいろいろと向上させていくことができると思いますが、医療に関しても同じで、データを通知表で提示することによって、下のところの予算を使わずとも、住民の力、圧力で改善するような仕組み作りが要ると思います。

 災害に関しても、災害医療でいちばん大事なのは、災害だけを取らせてもらいますが、災害による死傷者の減少です。

現行医療計画の問題点-57.jpg

 これを挙げている医療計画はなかったです。そのためには減災対策で、こちらのほうが防災計画とリンクしてくるわけです。それから医療対策として挙がってきますが、トリアージ研修の受講者を増やすとか、そのようなどうでもいいことを目標に挙げているところも結構あります。DMATの病院を増やすとか。

 それよりずっと下の体系で、例えば医療というのは水がなければ動かないわけです。阪神淡路大震災のときに水がなかったために、ミネラルウォーターを医療機器に入れたらミネラルが析出して動かなくなったとか、中越地震のときに、中核病院は刈羽郡総合病院でしたが、あそこは自衛隊が1日100トンの給水をしていました。普通の医療をやるときに、1日病床当たり0.8トンから1トンの水が要るのです。

 そういうところまで考え、水道管は耐震化されているかどうかまで、こちらは都市計画かもわかりませんが、リンクさせないと医療計画の実効性は担保されないと。下にいくプロセスをもう少し充実させる必要があると思います。
 

【目次】
 P2 → 医療計画制度の目的等
 P3 → 医療計画とその評価
 P4 → 医療機能情報提供制度
 P5 → 病床規制
 P6 → 東京都のがん医療体制
 P7 → 23区の救急施設全体でのカバー範囲等
 P8 → A区の三次救急施設へのアクセス時間
 P9 → 搬送に60分以上要する人口
 P10 → 療養病床の調査
 P11 → 山形県でのアクセス時間分析
 P12 → 救命救急センターの最適エリア界
 P13 → 献血者の動向、地理的分布
 P14 → 周産期母子医療センターへのアクセス時間
 P15 → 死者と重傷者の分布
 P16 → 運転時間30分での転送可能領域
 P17 → 医療計画の中の精神医療の位置づけ
 P18 → 主たる医療職種の入学定員(平21)
 P19 → 計画と評価の構造(行政計画)
 P20 → 事業計画、実施計画の必要性
 P21 → ある県の医療計画の目標


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