産科医療の現況と平成22年度診療報酬改定への要望
■ 産科医療危機の展開
【海野信也氏(北里大学医学部産婦人科学教授)】
次のページ。今、この危機の展開というところで、背景の部分を御説明申し上げました。
それで、実際どういう形で壊れてくるかということですが、現に分娩取り扱いの施設が減少して分娩難民と言われる方たちが発生している地域が、私のいる神奈川県なんかもそうですが、あります。それが、今後さらに増加するということになるかもしれない。
それから、あともう一つは基幹病院のハイリスク救急症例受け入れ。これも病院がやっているわけですね。病院の現場はそういう現場であるということですので、そこも人が減ってくると、それはもう症例の受け入れの回避または撤退ということが起こってくるだろうと。
実際にいろんなことで起きているのかもしれないということはお感じいただけると思います。
この崩壊をどうやって回避するかということですが、一つは、まずは産婦人科医をふやすしかないというのがございます。それで、私ども学会でもとにかく新規専攻医をふやそうということで、学生、研修医たちへの働きかけを強めておりまして、それなりの効果は、少しずつは上がってきております。
ただ、その先生たちが実際に30代、40代で現場を支えてくれるようになるまで、今はまだ研修医、学生の段階ですから15年とかかかるわけです。
それで、その間支える人たちのいうのは既にもう産婦人科医になっている、先ほどのグラフの真っ赤になっていた部分ですけれども、あの先生たちが働き続けてくれない限りは無理だと。10年後には彼らが産婦人科の病院や大学の指導的立場でやってもらえる状況にならなければ無理だということは明らかだということになります。
ですから、医療という観点で申しますと、医師、医療機関の分娩からの撤退という現実がございますが、これの撤退を何とか防ぐための施策が必要だと。
【目次】
P2 → 要望の内容
P3 → 分娩施設の減少
P4 → 産婦人科医の減少
P5 → 長時間勤務の実態 ①
P6 → 長時間勤務の実態 ②
P7 → 長時間勤務の実態 ③
P8 → 女性医師の割合 ①
P9 → 女性医師の割合 ②
P10 → 女性医師の割合 ③
P11 → 働き続けられる状況にない
P12 → 産科医療危機の展開
P13 → 産科医療のデススパイラルと脱却
P14 → 「勤務環境確保加算」の新設を
P15 → 産科・周産期救急の問題点等
P16 → インセンティブ付与は実現したか
P17 → 現場からのお願い
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