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ニュース〜医療の今がわかる

ビジョン会議4


会場についてみたら、看板も資料も「第4回」になっていた。
私の記憶では、たしか3回目のはずなのだが
知らないうちにどこかで1回開催されたのだろうか。
だとしたら報告し漏れてしまったことになるな、と不安になる。
戻って事前の案内を確認したら、やはり3回目と書いてある。
ナゾだ。(後日、3回目は視察が行われていたことが分かった)


この日は残念ながら舛添大臣は欠席。
陳述人は陳述順に
中川恵一・東大病院放射線科准教授、緩和ケア診療部長
桑江千鶴子・都立府中病院産婦人科部長
花田直樹・花田こどもクリニック院長
山本保博・日本医学大学救急医学主任教授
一足先に崩壊が始まったと叫ばれている産科・小児科・救急に
担い手が足りないという共通項で
がんの中川准教授が乗っかったというところだろうか。


では中川准教授の陳述から。
「本日は、医師が普段かかわる医療そのものではない部分を強調したい。日本ではがん死亡率が上昇を続けていて、欧米では下がっている。でも国民はあまりこのことを知らない。がん登録がないので粗くしか言えないが、日本人の3人に1人ががんで死んでおり、2人に1人はがんになっている。疫学の先生方は、日本のがん死亡率が上昇しているのは高齢化の影響であり、年齢調整死亡率を出せば欧米と変わらないという。しかし、昔の人と今の人とを単純に年齢だけで比べてよいか。昔の高齢者より今の高齢者の方が若々しい。たとえば磯野波平さんは54歳という設定であり、郷ひろみさんは53歳だ。磯野フネさんは48歳で私と同い年になるけれど、マドンナは50歳だ。このことを見ると、非常に粗いことを承知で言えば、年齢調整死亡率を下げることではなく、純粋にがん死亡数そのものを下げることを目標にしてもよいのでないかと考える。

世界一のがん大国でありながら、がん対策大国とは言い難い。毎日新聞の世論調査によれば、緩和ケアのことを知らない人が72%。がん登録に関しても、感染症には精密な数字があるのに、国民は否定的な考えで同意した人のみが62%、法制化に賛成が18%と非常に低い。この背景にあるのは、がんのことを単に知らないだけでなく、知りたくない、トドのつまりは死生観の消失ということなんだと思う。宇都宮さんという教師が小学3年から6年までの372名に『死んだ人は生きかえることがあると思いますか?」と尋ねたら、生き返るが34%、わからないが32%だった。なぜここまで死をバーチャル化してしまうのか。死を見たことのないライフスタイルも影響しているであろう。在宅死と病院死の割合が逆転して30年、今では9割近い方が医療機関で亡くなる。東大病院でもお子さんたちが来るのは、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんが亡くなった後。こうして死が意識から消えていると思う。

お釈迦様が、生老病死と言ったように、本来、生きるとは苦しいことを伴うものだった。しかし生が快楽のみになってしまっている。現在の日本には戦争がないので、がんしか死のイメージを持つものがない。学校教育の中でなぜがんのことを教えないのか。小学生から英語を教えるという話があるけれど、そんなものよりよほど意義がある。それがひいては、いじめや自殺の問題を考えさせることにもつながってくる。

がんから目を逸らさないことが、がん医療を客観的に見つめることにもつながってくるのでないか。というのが、実はがんの死亡率が下がっているからといって、治療が劇的に進歩しているわけではない。進行度ごとに分ければ、30年前、40年前とほとんど変わっていない。単に早期発見が増えたに過ぎない。つまり、がん登録やがん教育のように周辺の寄与の方がより大きいことを強調したい。

それから、私の分野である放射線治療は将来国民の4人に1人が受けるようになるであろうと予測されるにも関わらず、担う人材が極端に不足しており、それは緩和ケアにおいても同様。医療崩壊はがん治療の分野にも起きていることをお伝えしたい」


中川准教授は途中退席の予定があるとのことで
いったんここで質疑応答。
野中
「専門の先生が少ないのは分かった。放射線学会や緩和ケアの学会では、どういう形で育てようとしているのか。それから患者さんの地域での生活をどうサポートしようとしているのか聴きたい。在宅死が少ないという話だったが、死ぬまでのケアがないので、病院にいるしかないというのもあるのでないか」


中川
「大学に講座が少ないという問題はあるが、それよりどういうインセンティブを若い医師に与えるかだと思う。皆さんご存じのように、東大でも外科へ行く医師が減って、眼科や皮膚科が増えている。良い悪いでなく、こういうことは考えないといけない。患者さんの地域での生活ということに関しては、在宅緩和ケアが重要なので、ぜひ開業の先生方に担っていただきたい。開業医の方々にも、がんを診てほしい。急性期は病院でないと無理だとは思うが、そうでない慢性期にまで入院させているのが良いわけない」


矢崎
「実態の真のデータが少ないのはたしかにあるだろう。しかし、がん対策に関しては、中曽根内閣の時にがん撲滅10カ年計画が始まっており、今3期目だ。今日の問題がなぜもっと早くから入っていなかったのか、政策の問題なのか、がんをやっている先生方の問題なのか」


中川
「がん登録は避けて通れない。それができない理由は心理的抵抗の部分であり、これはもはや医療の問題というより日本人の資質を問われていると思う。我々全員死ぬのにもかかわらず死ぬ気のない人がこれだけいるというのは民度の問題だ。医療だけでなく教育の在り方まで含めて考えないといけない。がん分野の医師がしっかりやれよというご指摘はまさにその通りで反省している。ただ、その根底にあるのは死生観の喪失なので、これは行政も患者さんも巻き込んでいく必要があると思う」


辻本
「私も乳がん患者でフルコース治療をしたので、放射線のお世話にもなった。放射線に関しては、ご説明のあったように精密機械で、限られた医療機関にしかない。開業医で診ていただくがんの範囲とは、どの辺りになるだろうか。インセンティブの話では、たまたま私のお世話になった病院では1人しか放射線治療のお医者さんしかいなくて走り回っていたのが、人を増やしてもらえた。それで喜んでいた。だから給料を上げるだけが能ではないと思う。むしろ、きちんとしたやり甲斐を示してあげる方が大切でないか。教育の中でがんについて教えるという話、どうやって教えていったらいいのか」


中川
「放射線治療できる施設が全国に700ヵ所あり、放射線治療医は542人しかいない。どういうことかというと、明らかに医師が少ない。多くの施設がパートタイムの医師で回している。こういう分野はフリーアクセスとの兼ね合いはあるけれど、むしろセンター化すべきで、世界的にもそうなっている。それから診る範囲に関していうと、慢性期、終末期はむしろ開業医でやるべきだと思う。インセンティブはおっしゃる通りお金だけじゃない。医師が走り回るというのは、それだけ医師を支えるコメディカル、システムが足りないということだと思う。教育に関して言うと、学校の先生がやればいいと思う。渡海文部科学相に会った時にも申し上げたが、そうしたら学校の先生には教えられない、彼らも死ぬ気がないからということだった。でも、まず学校の中に仕組みをつくっていっていただければと思う」


辻本
「地域の中にいる患者さんが体験談などを話すというのはどうだろうか」


中川
「最高の先生だと思う」


西川副大臣
「先日、墨田区の緩和ケアをやっているクリニックにお邪魔した。医師があっけらかんと『死ぬ』という言葉を口にしているので驚いた。気づいたのは、看護師が大きな力を持っていること。どうやら医師と夫婦のようだった。お医者さんが全部抱えこむと何も出てこなくて看護師がポイントかなと思った。医学生が楽な方向へ行くって本当にそうなのかな。キツイと言われる診療科のやり甲斐を学ぶチャンスをもらっていないだけでないか。医師研修制度の中でやり甲斐に気づかないだけでないかと思う。その辺のところをお聴かせいただければ」


中川
「緩和ケアの中心はナース。医師は最後に責任取ればいいだけ。世界的にもそうなっている。真の意味でのインセンティブは先生のおっしゃる通り。ただ現状で足りない部分への人の配置の強制力をどうするのか。今から始めてもその医師が育つまでに10年かかる」


続いて桑江部長の陳述。
「古今東西、お産とは危険な営みである。棺桶に片足を突っ込んでするものと言われてきた。世界の妊産婦死亡を見ると、アフガニスタンのような医療介入の全くないところでは、対10万出生あたり1900人の死亡があり、実に2%の妊産婦が死亡している。世界平均では対10万出生あたり400人、つまり250出生に1人の死亡である。では日本はどうかと言うと、対10万出生あたりわずかに5人でしかない。ただしハイリスク妊婦はむしろ増えており、それだけ医療の介入も増えている。日本の妊産婦死亡が下がっていったのは1960年ごろからのことで、この時に何が起きたかというと自宅分娩がどんどん減って施設分娩が増えた。その施設も、病院50%強、診療所50%弱、助産所1%という世界でも独特の配分になっている。

分娩費用はヨーロッパ、カナダなどでは全て公費負担というところが多く、日米は自費である。ただし日本は健康保険から出産一時金が支給される。米国はかなり高額で日本は低額である。例を挙げると、実際にかかる費用の平均は51万円であり、都立病院の場合、受け取っている費用は29万円で、1分娩あたり22万円、医療側が赤字になっている。

この50年間の日本の周産期統計を見ると、分娩数は半減、母体死亡は80分の1、新生児死亡は40分の1に減った。人工妊娠中絶は減ったとはいうものの、いまだに年30万件ある。早産が増え、超早産は約2倍、低体重出生児も増え、超低体重出生児は約30倍に激増している。その背景として、高齢出産が約2倍に増加している。

ちなみに1人の妊産婦死亡の背後には約73倍の超ハイリスク妊産婦が存在すると考えられており、その人たちは医療の介入で死亡を免れている。その数は年間4000人から4500人くらいになる。

産婦人科というのは特に女性医師が多い。産婦人科医会の会員で見ると、30代の50%、20代の75%が女性である。ところが女性医師は分娩を取り扱わなくなる率が高い。男性の平均が82.6%であるのに対して66.0%。卒後11年目には45.6%まで落ちる。平成19年度に産婦人科新専門医にアンケートしたところ大学病院や分娩取扱機関での常勤が82%おり、分娩を取り扱わない施設の常勤は1%、非常勤またはパートというのも10%であった。ところが5年後の希望を聴取したところ、大学病院や分娩取扱機関での常勤が49%まで激減し、代わりに分娩を取り扱わない機関が18%、非常勤やパートが20%もいた。我々も非常に衝撃を受けた。で、勤務を継続するために一番重要と思われる項目を挙げてもらったところ。一番大きかったのが『多様性のある就労条件』であり、次が『配偶者の理解と協力』だった。

産婦人科臨床現場の3つの問題を挙げる。(1)劣悪な労働環境と待遇。長時間継続労働を強いられ、その割に低賃金で、休めない体制になっている。先ほども話が出たが、やはり給料の額も問題だけれど、それ以上に休みたいという声が多い。(2)医療事故と訴訟への恐怖。これは福島県立大野病院事件で大きく噴き出してきた。(3)医療者への暴言・暴力(モンスターペイシャント)の存在。説明に長時間を要するので1人いるだけで時間を取られ、医師としての誇りもズタズタにされ仕事に対するモチベーション、誇りが保てないという現状がある。

こうした問題に対して各地で様々な取組がされている。まず、東京都立病院における産科医待遇改善の試み。これは全国の公立病院でも最低の賃金を全国平均まで引き上げるというもので、果たして十分かといえば決してそんなことはないだろうが、しかし私たちの提言に対して都が応えてくれたという、そのことの方がはるかに重要で嬉しく、また頑張ろうという気になれた。次が秋田県における妊婦検診無料化の試み。これによって突発的にハイリスク妊婦が飛び込んでくるというリスクはかなり下げられるので精神的には助かる。ちなみに産婦人科医に人気の病院というのもあって、研修内容や待遇で集めているのが亀田総合病院や府中病院。女性医師に働きやすい環境を整えたのが厚生年金病院、オープン病院の試みをしたのが愛育病院。また遠野のように地域での連携の模索も行われている。

さて女性医師が働きやすい体制について述べる。私が今まで続けれこれたのは、個人の資質というよりも幸運だったから。つまり、家族が健康で、夫婦の両親がともに健在で関東近辺に住んでいて、しかも女性が働くことに協力する意識を持っていてくれて、職場の上司の理解があって、関連病院がそれぞれの実家の近くで、夫が肉体的にも精神的にも最大限の協力をしてくれたから。これだけの条件が揃わずに泣くなく臨床の現場を去っていった先輩たちを何人も知っている。これほどの苦労をしなくても女性が辞めずに済む良い方向にできないだろうか。特に育児など考えると、『近くの家族』に代わるべき社会的な資源が絶対に必要である。ただし、では『近くの家族』に代わる社会的資源があれば働きやすいのかと考えてみると、現在の長時間労働を前提とする限り、費用がずいぶんかかるうえに、家庭的なことを全て他人まかせにすることになり、潤いのない家庭になりそうだ。むしろ労働時間を一般労働者なみに短くするならば、費用はそれほどかからないし、家庭も健全だろう。

実は女性医師対策というよりも、男女がともに働きやすい体制をつくってもらえれば、それでいいのだと思う。具体的には、シフト制や十分な定数確保によって長時間労働を改善する、職住接近、院内保育施設の確保、主治医制の見直し、上司の意識改革、プロ意識の熟成、ワークライフバランスの推進など。

意識改革の提案を行いたい。女性医師に支持される病院は患者増、分娩増で発展する。女性医師の妊娠出産による一時撤退はたかだか4ヵ月、出産を経験すれば患者さんの気持ちが一層分かるようになるのだから、研修と思えばよい。女性医師と働くことに慣れてほしい、特に子供のいる女性医師と働くことに慣れてほしい。特別扱いは望んでいない。男性医師と同じように叱咤激励してほしい。私たちは特別にいたわられたくもないし、甘やかされたくもない。ごく普通に働きたいだけである。であるから、仕事は仕事なので責任も平等に担わせてほしい。それを嫌がる女性医師は論外で性別以前の問題だ。施設の長には、男性も働きすぎているのでないかという視点を持ってほしい。

男女共同参画社会の実現を阻むものを考察したい。まず、お金がかかることが挙げられる。シフト制や妊娠・出産をカバーする人的余裕を得るには医師定数増と確保が必要だ。院内保育施設の充実には、施設と保育師が要る。職住接近にも病院負担が増すだろう。これらには医療費削減が問題となる。病院経営が赤字であったり医師不足があったりでは、いかんともしがたい。ただしお金がかからないこともある。上司の意識改革であり、プロ意識の熟成であり、男女共同参画社会への納得であり、主治医制の見直しである。これらをまず医療に携わる人へ周知することが必要だろう。

これまでは、医師が男性、助産師・看護師が女性という図式があった。しかし現在は違う。医師と看護師は車の両輪であり専門家同士であり臨床を支えあう同志である。将来は司法による過剰な介入がないことを前提に、それぞれの専門性を生かした働きかたができないか。適正な責任を取ることはやりがいになる。というのも安全を担保するには人手が必要であり、産科医、助産師の不足解消には時間がかかる。周産期専門の認定看護師制度をつくれないか。

最後に産婦人科女性医師の願いを述べる。
・仕事の上で誰の犠牲の上にたつこともなく
・自分の人生を生きる時間を持ち
・子どもの成育を損なうことなく
・医療の質を落とすことなく
・母性の発現を妨げることなく
・経済的自立をするに充分な報酬を得て
・継続して仕事に打ち込め
・医学の進歩や社会への貢献ができる
ような労働環境を整備することである。この中で母性の発現以外は男女共通の事柄であり、男性にとっても働きやすい職場となる」


後半の花田院長の陳述から報告を続ける。
「私のクリニックのある岡崎市には唯一の三次救急機関として岡崎市民病院がある。しかし、多くの小児軽症患者が夜間受診するために、市民病院で三次医療に支障が出てきていたということから、平成15年7月に保健所が音頭を取って、市民病院、市医師会の三者が産科する『意見交換会』を開き、軽症患者の夜間診療を医師会の方で受けられないかという検討を始めた。医師会としては、年齢構成がかなり高いこともあり始めたとしても10年後も続けられるか懸念したが、保健所が頑張って大学の協力を取り付けてくれたので、平成16年6月から毎日午後8時〜11時の3時間、第一次救急医療機関である岡崎市医師会公衆衛生センターの夜間急病診療所に小児科医を配置した。担当は医師会所属の小児科専門医14人と県下3大学小児科からの派遣医師だ。

その結果、夜間急病診療所への小児科受診者の数は、平成15年度が3742人、始まった16年度が6758人、17年度が7275人、18年度が6943人と推移している。診療所にはもともと内科の医師と外科の医師が1人ずつ配置されていたので、16年度途中までは、その先生方が診ていたものだ。こうしてみると年間3千人くらいは岡崎市民病院の負担を減らせたのでないかと考えたいところなのだが、実際に同じ時期の岡崎市民病院を受診した救急外来小児患者の午後8時〜11時の数は、15年度1979人、16年度1555人、17年度1457人、18年度1469人で500人程度しか減っていない。しかも重大だと思うのは、そのまま帰宅した軽症患者が約9割を占めている。ということは、単に患者さんを掘り起こしただけだったのかもしれない。

夜間急病診療所へ小児科医を配置するというのは、いわば受け身の対策。私たちは同時に攻めの対策として16年7月に『岡崎市小児救急医療対策協議会』を設置して、情報収集・分析、その提供、体制の検討などを話し合い、必要な策を実施することにした。委員は当初大学関係3、市民公募2、保育・幼稚園関係2、市医師会3の計10人で、現在は大学関係者がいなくなって、その分保育・幼稚園関係が1人増えて8人で運営している。協議会でまず議論になったのは、やはり夜間急病診療所への受診者の多くがいわゆる風邪で、本当に夜間に受診する必要があったのかということ。この人たちに適正受診をしてもらえるような取り組みが必要であろうということで、まず『子どもの急病!ガイドブック』を17年3月に発行した。これは特に医療知識のない人でも、チャート形式で救急受診の必要があるかどうか分かるようになっているもの。保育園や幼稚園、子育てサークルなどに協議会委員が出向いて行ってガイドブックのPRなどをする『出前講座』というのを19年度だけでも市内くまなく50回近く行っている。ほかに18年11月には小児救急フォーラムというものを開催し、18年12月には岡崎市の広報番組の中で8日間『小児救急を考える』というのを放送してもらった。このDVDか希望者に貸し出している。

出前講座をしてみてどうなったかだが、参加者たちに『今後、夜間にお子さんが熱や腹痛などの症状があった時にどのようにしようと思いましたか?』という複数回等可のアンケートを行ったところ(1)日頃からガイドブックを読んでおこうと思った。1021、(2)救急医療機関を受診する前にガイドブックを読んでみようと思った。1069、(3)微熱などの軽い症状の場合は、救急医療機関への受診を控え、様子をみて翌日にかかりつけ医を受診しようと思った。1445で、ここまでは狙い通りなのだが、(4)夜の方が混んでいないので、夜に受診しようと思った。14、(5)昼間働いている保護者の場合、救急医療機関を利用するのはしかたがないと思った。125、(6)やはり心配なので、まず救急医療機関を受診すると思った。107という人たちも相変わらず存在して、これを多いと思うかどうかは解釈の分かれるところだろうが依然として課題として残っている。

私たちが今注目しているのは、兵庫県立柏原病院でお母さんたちがつくった『県立柏原病院の小児科を守る会』。サイトを見ると『【医師は戦わない。ただ黙って立ち去るのみ】一般にはそう言われています。しかし柏原病院小児科は違いました。もうすぐ無くなるかもしれないというサインを出されました』と書いてあり、それがあの素晴らしい活動を呼んだのだとすると、医療側も考える必要があると思う。

最後に市医師会会員たちに、現在の小児医療の問題点と思うことを聴いてきたので述べたい。まず(1)不当な診療報酬の低さとフリーアクセスによる患者数の多さ。小児は大人の診療より手間も時間もかかる。それなのに薄利多売形式でないとやっていけない。少なくとも3次救急施設へのフリーアクセスはやめさせるべきであろうし、救急車も有料化した方がよいのでないか。それから保険医療では診療報酬が低いのだから、最高の医療を約束するものでないということを周知すべきだ。(2)病院勤務小児科医の減少(3)乳児医療無料化と救急外来のコンビニ化。コンビニ受診を呼んでいる大きな原因が、多くの自治体で行っている小学生までの医療費無料の助成。全体の医療費が困窮しているのだから不要な受診を抑制するためにも助成はむしろ抑制する必要があるのでないか、と、1次救急をやっている者みなが思っていて、でも口に出せないこと。岡崎市はなんと4月から助成の範囲を中学生まで広げるということになっているので、また患者が増えるだろうと皆憂鬱になっている。(4)訴訟リスクとクレーマー。司法は救急にも最高レベルの医療を求めるし、報道が現場のやる気を萎えさせている。という辺りが会員たちの声だった」


最後に山本教授の陳述
「救急出場および搬送人員の推移を示す。ずっと右肩上がりで増えてきたが、特に平成7年、8年ごろから伸びが著しい。現在のところ年間出場が約570万件、年間搬送人員が470万から480万人くらい。この差はいったい何かというと9%くらいは現場に行ったら患者がいないという状態だ。その内訳を見ると多いのが辞退、イタズラ、酩酊。この現状を知っていただきたい。救急車自体はそれほど増えていないのに搬送人数が増えているので、当然のことながら、救急車の現場到着時間は徐々に遅くなっており、ピークは平均5.7分だったのに平成18年は6.6分まで伸びてしまった。1分遅くなるということは、VF患者の死亡率を10%上げてしまうということだ。同様に収容所要時間も21.5分から32.0分まで伸びている。

この搬送の急増は一体何なのかというと、要は社会の高齢化と核家族化による独居老人の増加とが減少として現れているということ。今後の高齢化の進展に伴い、さらに救急需要は増加すると考えられる。ところが一方の救急告示医療機関は徐々に減っている。減っているのは主に1次機関だが、その分の患者が二次、三次に集中するので救急医不足になっている。しかも二次輪番救急施設で1日平均どれだけの救急車を引き受けているかを見ると、1台未満というところが全国平均で42%もある。1台も救急車を引き受けないようなところは二次機関として機能しているとは言えない。数少ない施設に負担が集中していることが読み取れる。

救命救急センター医師の当直回数で平均的なのは1ヵ月に6回〜7回。しかもセンターの60%が当直明けも通常勤務。20%程度が午前勤務で、休みになるのは10%未満でしかない。なぜこんなことになるかと言えば救急医が絶対的に足りない。全国200の救命救急センターが1施設あたり3人で当直を回すとすると、救急専従の医師が5000人必要となる。しかし、救急科の専門医は17年4月時点で1867人しかいない。認定医まで含めても約2500人。

医師不足に対応する方策の一つとしては、救急医療を標準化し、救急隊員や一般市民にも役割分担してもらうということがある。心疾患、外傷、脳卒中それぞれに標準化が進められている。AEDなども、その一つだ。突然の心停止の生存率は3.8%に過ぎないが、目撃者があって一般市民がAEDを使った場合31.1%まで上がるという研究報告もある。

救急医療の現状と課題をまとめる。まず、患者の増大と初期二次救急の地盤沈下により救急医療施設への負担が増大している。それに対して、救急医が絶対的に足りず長時間勤務を強いられている。加えて訴訟や報道の増大による萎縮医療・受け入れ制限が進んでおり救急医の士気低下がある。他科への転身も少なくない。

必要な対策としては、かかりつけ医が必要であるということ、適切な救急車利用の啓蒙や医療の不確実性、医療は医師と患者との共同作業であるといったことを住民に教育する必要があるということと、救急医療の標準化を進め初期救急の充実を図ると同時に救命救急センターに救急専従医を集約して適切な労働環境での高度救急医療実現が必要であるということになる」


既に終了予定時刻に近かったが
質疑応答も活発に行われた。
野中
「桑江先生に伺いたい。多摩地域のお産がどの程度あろ、そのうちどの程度まで府中病院で担えると考えているか。地域連携の観点から伺いたい。花田先生に伺いたいのは、夜間急病診療所へ来た患者さんの発症時間は調べているかということ。山本先生には、救急告示医療機関というのはトリアージするのが役割なんであって最終的には地域とどう連携できるかでないかということを伺いたい」


桑江
「地域のことをお話しする前に日本全国のことを言うと、お産が年間に62万件あり、医師は7500人程度。1人の医師が安全に担えるのは年120人程度と言われているが、現在ですら年に300人〜400人頑張っている方もいらっしゃる。多摩の場合、お産は3万3千件あり、高齢の先生方が診療所をやめてきている。じゃあその分を府中病院で受けられるかというと、ベッドに限りがあって受けられない。だから多摩でも既に足りない。病院と診療所が半々という日本独特の安全が5年後にどうなってしまうのか想像できない」


花田
「多くの方は夕方からの発症だろうと思うが詳細な時間の分析は分からない」


山本
「地域によって様々な形があると思う。個人的に思うのはERが仲立ちできるのでないかということ。東京のERは重症だけでも充分な患者がいるけれど、地域によっては重症が少ないので、いったんERに集めてしまって、軽症者は地域へ回す流れがあってもよいのでないか。上へ向かう搬送だけでなく、下への搬送もあってよいのでないかと思う。トリアージの概念は3つあり、最初はコールトリアージ、司令室段階で救急の必要のないものを見分ける、次は現場で救急隊が行うもの、最後が病院の中で行われるもの。一番問題なのはアンダートリアージをどう考えるか。救急司令の段階でも、救急隊の段階でも、1万人に1人の心筋梗塞などは見逃して帰してしまう可能性がある。アンダートリアージはゼロにしなければいけないが、なかなかそうはならない。その可能性は考えたうえで、それでも病院の前でトリアージしていかないと、たらい回しは増える可能性がある」


矢崎
「2点伺いたい。まず新生児の脳性マヒに対する無過失補償の取り組みが進んでいる。あれの狙いは紛争を減少させて産科医の負担を減らすということだが、負担が減ると感じられるか。もう一つは病院経営における産科、小児科、救急の位置づけのこと。お産を受けるだけで赤字になり、その分を個室料や他科からの繰入で賄うというのは不合理で不健全でないか。副大臣と政務官に対応をお願いしたい。もう一つ、基本インフラがないのに医療費を無料にすることで救急外来がコンビニ化しているとの指摘。前回も医療資源は公共財だという話があったが、無料化とインフラ整備はチグハグでないか」


桑江
「脳性マヒの無過失補償制度の創設に多くの先生方が努力なさっているのは重々承知しており言いにくいのだが、現場感覚としてはこれができてもあまり楽にはならないだろうと思っている。というのが金額が低い。支払われるのが一件あたり2500万円から3000万円なのに対して、請求額の平均は1億6200万円。too littleだ。そのお金でどれぐらい救済できるかという問題と、それから脳性マヒは胎内で既に出来上がっているというのが産科医のコンセンサス。周産期がらみの脳性マヒはそんなに多くない。正常分娩の脳性マヒが最も多く深刻だし、超新早産の子はカヤの外。この制度で助かる人はいるだろうが、こぼれ落ちる人の方が多そうだ。出産費に関して言うと、健康保険の出産一時金を超えるものは公立病院としては言いにくい。だから実際にはそこが縛りになる。結果として年間2000件の分娩を扱っているのに赤字というようなことになる。子供を産むのは国全体として面倒を見るというコンセンサスがあれば随分変わってくるだろう」


松浪政務官
「タブーなく議論したい。減ったとはいえ、凄まじい中絶の数だ。そうした行為は当然医師たちにも心理的プレッシャーとなるだろう。避妊教育は当然として、それ以外にもこれを下げる方策はないものか。養子縁組などはどうだろうか。救急車の不適正使用に関して実費徴収するとか罰則を設けるとか、何かアイデアはないだろうか」


桑江
「中絶は辛い行為だ。堕胎罪があるので違法であるけれど、母性保護ということでやっている。今の若い人たちが自分の健康、特に婦人科的なことに対する知識がビックリするくらい少ない。たとえば生理が止まったら妊娠ということすら知らない。養子縁組に関して言うと、条件のハードルがとても高い。それだけの条件を満たさないと子供を育てられないとすると、実子でも産める人がそんなにいないんじゃないかというぐらい。性教育に関しては、寝た子を起こすなという意見もあり、現場では難しいようだ。女性側からできる確実な避妊法はピルなのだが、それも容易には手に入らない」


山本
「よい対策はないというのが現状。救急車を不適正に使用するのはどうもリピーターというか、相当数決まっているようだ。独居老人がさびしくて救急車を呼ぶ。そういう方には民生委員や消防が回って啓蒙している。有料化した場合は、それに伴って義務責任等々出てくるだろうという懸念が現場にある。とはいえ、たしかに出場1回あたり3万円から4万円かかっているようで、これをどうしたらよいのか。ただこの辺は消防庁がやらなければいけないことで、われわれ医師が啓蒙すべきことなのかなとは思う」


西川副大臣
「インフラができていないのに少子化対策と称して医療費無料化するのはおかしいという指摘、事実そうであろうと耳に痛かった。こういうものは国民の意識向上と相関すると思う。食の安全に関しては少し意識が高くなってきたが、医療や健康に関しては意識育っていないと思う。それは、ここにマスコミの方も見えているので言うけれど、やはりきちんと伝えることが必要でないか。救急車が要請3回以内で医療機関まで搬送できたのが97%あるのに、残りの3%が事件として次々に報じられていくのは、国民の皆様に対して一緒に現状と向き合ってどうしないといけないのか考えていく上で不毛になっていくような気がした。産科に分娩費が見合っていないというのも痛いご指摘として承った」


辻本
「岡崎で組織を作るときに最も難しかったのは何か。ガイドブックで行動は変わったか。啓蒙しても認識が改まっていない人たちをどうするのか」


花田
「年齢がかなり高くて10年後も続けられるかというところに皆不安を持ち反対意見も多く出た。幸い保健所の人の尽力で大学の協力がスムーズに得られたので、少なくとも大学からは常に若い人が来るということでクリアできた。認識の問題は、実は来る人たちは僕らが思っていたような悪どい人は多くなかった。
だから教育だけではないかなと思っている。コンビニ化への方策はなかなか難しいが、やはり価格を上げるというのが一つの手でないかとは思う。ただ行政として動かすのは難しいかもしれない。何しろ岡崎市では4月から中学生まで医療費無料になるので」

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