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ニュース〜医療の今がわかる

ビジョン具体化検討会4

前回に続いて、外では雷が鳴っていた。

委員は全員出席。その他に参考人として井上範江・佐賀大学看護学科教授と山田芳嗣・東京大学麻酔学教授の2人。全員の名前は、こちら参照のこと。また大量に出されている資料は、いずれ厚労省のサイトに上がるはずなので、そちらをご覧いただきたい。


高久
「本日は医師、看護師、コメディカルの数、スキルミックスを中心に検討して参りたい。事務局から提出資料について説明をいただいた後、出席のお二人にお話をいただき、その内容に関してフリーディスカッションしたいのだが、その前に3人の委員から説明をしたいとの要望が出ているので、それをしたいただいた後にフリーディスカッションしたい」


まず事務局が看護師の就労状況について説明。最後に「土屋委員ご要望の資料」として『特定機能病院に従事する医師数*常勤換算値』というのを出したところで土屋委員がクレーム。


土屋
「これでは使えない。常勤換算値でなく、保険医登録数を出してほしい。なぜならば前回も述べたように例えば慶應では年間250人の大学院生を取っているが、彼らも診療にあたっている。そういう生の数字がほしいのであって、保険医登録をしていなかれば診療にあたれないから、きちんと保健所に届けているはずだ。その数字が出てこないと、医師の偏在について議論できない」


続いて井上教授のプレゼン。
「コメディカル不足に関して、看護師の人数と教育という観点から述べたい。

まずは看護師の人数が多くなると患者の安全性が高くなるという話から。アメリカ健康保健福祉省という政府のエビデンスレポートで患者対看護師の比率が常時4対1の時の死亡率を基準とすると、5対1だと7%、6対1だと14%、7対1だと23%死亡率が上がるというデータが出ている。同じようなデータがJAMAにも出ている。日本の一般病棟の最高の基準は7対1だ。常時7対1と言っても、日中は検査や処置があるので50病床あたり10人看護師がいるけれど夜間は7〜8人と配置が少なくなる。まして、これが旧来の最高である10対1だと夜間には3〜4人ととても少なくて大問題だ。日本の100病床あたりの看護師数は、英米伊独4ヵ国平均の4分の1しかいない。また病院は看護師だけに限らず様々な職種の人々によって支えられているのだけれど、その全職員数で見ても、やはり4ヵ国平均の24%の人数しかいない。

次に、看護者の教育水準の向上は患者死亡の減少をもたらすという話をする。これも出展はJAMAだが、全体の中で学士を持つ看護師の割合が20%の場合、患者1000あたりの死亡者数は約21人いるのに対して、学士の割合は60%になると3.6人減る。重症合併症患者の場合、1000人あたり14.2人ともっと大きく減る。この結果には看護師の経験年数との相関はなかった。現在の日本の看護師養成定員で見ると、大学は少しずつ増えてはいるが全体で見ると15%という状況だ。大学の場合、ずっと入学時も卒業時も定員を少し超えており入学時と卒業時に差がほとんどないいるけれど、3年以下の養成過程の場合、入学時で若干定員割れしているうえに、卒業時では5−8ポイント程度さらに下がる。(要するに途中でドロップアウトするということかな)

先ほどの事務局の説明にもあったが、現在の看護師不足がどのように起きているかというと、養成数は十分なのだが離職者が多い2005年末の病院就業看護師数は62.2万人、これが1年後には63.9万人と1.7万人増えた。しかし実は06年4月に新卒就業者が3.9万人いた。その差の2.2万人はどこへ行ってしまったかというと、この年の離職者が8.13万人、再就業者が5.93万人で、完全に離職してしまった人が2.2万人いる。こういった人々が蓄積して、潜在看護師55万人という数字になっているのだと思う。

その離職理由は、1人分の業務量が多いということ、人数が少ないことによって余裕のないシフトになり日勤夜勤のシフトの中で睡眠時間も十分に取れないということ、現場で求められる能力と学んできたことのギャップといったものだ。そこから浮かび上がる問題は、一番は人員の不足、それから卒後専門教育の機会不足、キャリアアップのための教育に時間が取れないとか新人看護師のための研修がないとか、各病院で工夫はしているがしっかりしたものはない、もう一つ最後にライフスタイルに合わない勤務形態である。

重大な問題として、病院勤務看護師はいったん離職したら復職しない。一般の働く女性の就業率はM字カーブを描くのだが、病院勤務看護師は25〜29歳でピークになった後は一貫して右肩下がりになる。また看護師の就業形態を見ると、日本では97%の人が週に35時間以上働いており、欧米と比べて非常に固定した就業形態しかないことが分かる。それから大卒者の早期離職率は養成所卒に比べて10分の1である。

最後に結論として、看護師不足への対策を述べる。まずは雇用者数を増やすことと離職防止が必要であろう。中期的には高卒後4年間の養成過程を標準化すると共に継続的に学んで専門性を究められる方向性が必要であろう」

続いて麻酔科の山田教授。
「麻酔科医は足りているか、というタイトルでお話させていただく。まず麻酔科医の専門性はどのようなものか。診療領域の中心は手術麻酔であり、これは外科的外傷に対する全身管理と定義できる。この中には当然中枢神経系の抑制も含まれ、ここからICUや救急といった領域に広がっているのと、もう一つペインクリニックや緩和ケアという方向へ広がっているのとある。

手術麻酔のリスクがどの程度あるかというと、(説明が早すぎて追いきれなかったので資料が上がった段階で加筆予定)1万症例あたり重大例が5例、危機的事例が16例でそのうち6例が死亡している。このように非常にリスクを伴っている。いうならば手術を行うのは外科医だが、全身管理を行って命をあずかっているのは麻酔科医である。麻酔科医の不足は臨床研修必修化によって顕在化したが、全体の背景としては受容が増加したことが挙げられる。手術数も増えたし、安全な医療を求める国民の声も高まった。93年と05年の9月1ヵ月間のデータを見ると全身麻酔の件数は12万例から16万例弱へと順調に増えている。急性期医療における手術の重要性が増したのがある。一方で外科系の医師が麻酔を担当するというのが05年調査でも30%程度あるのだが、麻酔のリスクを忌避したいということと外科医の本業が繁忙化したということとで急速に、こういう事例が減りつつある。

これに対して麻酔科医数がどのように推移しているかというと、標榜医は順調に伸びている。ただし現在の専門医制に比べて不備な点として、いったん標榜認定されるとそれが永続される。よって亡くなっても現場から離れてスキルが失われても標榜医の数のうちに含まれてしまう。専門性を保持していることを担保している専門医の数でみると、この間に5000人から6200人に増えたけれど手術数の増加にやっと対応できる程度の伸びでしかなかった。ある程度増員の方向をハッキリ打ち出していかないと、以前は非常に若い科だったのだが、段々高齢化していっており50代になると手術麻酔の現場から離れていく人がグンと増える。それから若年層においては女性の割合が多く、その離職率の高さも問題になる。国際的に見ると英米独すべて日本より麻酔科医の数はグンと多い。手術の質を高めるためにも必要であるという認識が国際的なものだ。

さて麻酔科医の不足を職種間の連携で補えないかという議論がある。エビデンスとして、麻酔看護師が麻酔科医と連携せず単独で麻酔施行した場合はアウトカムが下がる。よほど考えた制度設計をしないと手術の質・安全の低下に至ってしまうことを認識していただきたい。

何件もの全身麻酔手術を同時並行で行う大規模施設ならば麻酔科医と麻酔看護師の組み合せで効率化できる。しかし日本のように中小の施設が多いと、日本全体で平均するとだいたい1施設あたり1日1〜2件にしかならないので、その場合は麻酔科医が必要になってしまう。ただ麻酔科医の存在が手術の安全性や質の確保のために大切なのはたしかだが、その数を増やすという対応策だけでよいのか。コメディカルとの協働を当然考えなければいけない。その場合、まずチーム医療の確立があるべきで、その前に権限移譲だけすると危険な医療になる。まずチーム医療確立が先という順番が正しい。チームとして麻酔専門医と協働できれば麻酔看護師の存在は質向上と効率化に寄与できるだろう。その教育はどうするかといえば、当然麻酔科学会が積極的にサポートする責務があると考えている。術前から術後管理までトータルでリスクファクターを把握し、それに対処していく方法の教育を行う。というのがリスクファクターは術前のものが大きいので、それを把握せずに麻酔を行うのは危険だからだ。看護師が在職のまま、ここが非常に大事だと思うのだが、研修を受け麻酔看護師としてスキルを身に着けられるよう、ぜひとも予算の手だてをお願いしたい」

高久
「ディスカッションに入る前に、3人の委員から発表したいという要望が出ている。海野委員、和田委員、川越委員だ。時間もないので手短かにお願いしたい」


海野
「私の方からは、前回発表した1回目2回目の論点整理案を綴じ込みの中に、それから当日資料として第3回検討会の論点整理をしたものと予算関連事項について整理したものと資料を提出した。最初の分については認識の一致が認められたか一応確認していただければと思う。

第3回の分を簡単に説明すると、前回の話というのはまず地域医療・救急医療体制支援と住民参加についての話だったであろう。中身としては、『総合医』や『家庭医』などを含め土屋委員の要望書にもあったように後期研修を含めた医師養成のあり方を検討する専門家の体制整備を目的とした研究班を早急に設置するべきという認識で一致したであろう。それから救急医療体制が脆弱な体質になっていて、施策実施にあたっては症例を多く受け入れるほどより安定的に継続受入が可能になるような財政支援が必要であり、地域住民も一体となって支える必要があることも一致した。救急に関しては数のコントロールも欠かせないわけだが、これは丹生委員発表のように住民の立場でのトリアージも可能だということ、それから有賀委員発表のように電話によるトリアージも行われているし、今後を考えるとトリアージナースの教育・配置も必要になるだろう。またヘリコプター利用に関して言えば、厚生労働省は総務省や各自治体に対して消防防災ヘリを活用できるよう円滑な連携を呼びかけてほしいといったような事柄で一致を見たと考えている。ご確認いただければ。

予算の方は、この検討会がそもそも大臣から来年度予算要求のためということで開かれていることからして、時間的に切迫しているので、とりあえずまとめさせていただいた。よろしければ今でも1両日中にでも私にご意見いただければ、またまとめさせていただきたいと思っている」


和田
「昨日大野病院事件の判決が出たわけだが、あれを見ていて印象的だったのが、医師は謝罪をされている、しかし遺族は真相究明と仰っていた。医師の謝罪が受け止められていない。逆に遺族の側の想いにどう対応したらよいのか病院側も分かっていない、あるいは対応しているつもりでも受け止められていないという問題があると思った。医療者と患者との軋轢の根底には、このような認識のギャップがあるのでないか。このギャップを解消しない限り、お互いにつらいことが続くと思う。そこをどうつなぐか、精神論ではなく、きちんとした仕組みを用意することが医療機関の責務だろうと考える。

そこでメディエーターというものの説明をしたいのだが、患者のための医療の一環として事故発生時に患者のニーズに誠実に応答し、医療機関との対話の橋渡しを行う高度な専門技法と倫理性を備えた人材のことである。英米では広く普及している。また現場にも非常にニーズが高い。日本医療機能評価機構で03年に養成プログラムが開発され05~07年にのべ1026人が研修を受講した。07年度からは機能評価機構以外でも養成が始まっている。08年度には日本医療メディエーター協会というものが発足し認定制度がスタートした。年間約1000人の養成が可能になっている。育ったメディエーターたちも現場で活躍している。

養成・認定はこのように民間主導で自立的に回っているのだが、問題は個々の病院でそのような人を置くゆとりがないことだ。置こうとする病院に何らかのインセンティブをご考慮いただけないだろうか」


川越
「私は、皆さん病院の方なので在宅医療のことをあまりご存じでないと思う。ここでは医師と訪問看護師の連携の問題について述べたい。まず訪問看護師の元気がなくなっているという話から。訪問看護事業所数の年次推移をグラフで示した。見てお分かりのように平成12年から増え方が減って年に100数十件しか増えていない。平成12年というのは介護保険がスタートした年。それ以来伸び悩んでいる。一方で休廃止する看護ステーションは年々増加していて平成19年には全事業所の8%にも達している。この理由は主に経営的観点からで、介護保険がスタートしてから元気がなくなったというのが現場の感覚。訪問看護ステーションの収入の7割は介護保険からというデータがある。介護保険の枠に入れられたことによって看護師が無駄なエネルギーを取られて本来の業務に集中できないというのも聞いている。それから迅速にサービス提供をできないというのも看護師のストレスになっている。必要があれば速やかに入れる仕組みを検討してもらいたい。要するに現場からの声は、訪問看護は介護保険から外して医療保険対象に戻してほしいということだ。

もう一つ在宅医療をやっていると看護師の裁量拡大の話が必ず出てくる。法律通りだとやりにくいことを現場に要求する。何といっても、医師と看護師が常に同じ場所にいるわけではないから、医師の指示がないと何も動けないということになると困ってしまう。対策としては、事前約束指示というものがあるのでその標準をきっちり作って、特に死亡診断と疼痛管理についてやっていかないといけない。資料として、我々の考えた連携モデルを示した。

最後に提案。訪問看護を医療保険の範疇に戻すため、まずその検討への予算措置をとってほしい。第一段階としては次年度から一定の要件を満たした訪問看護ステーションを見なし居宅支援事業所として認定し、ナースたちにケアマネがやっていることをできるようにしてほしい。第二段階として、次回介護保険の大幅見直しの際に介護保険の枠から外してほしい。看護師の裁量権を拡大するため、我々だけでなく医師会など多くを巻き込んでいかねばならないので、そのために予算措置をとってほしい」

土屋
「スキルミックスの議論に入る前に海野委員のまとめられた予算について案をとってぜひまとめよう。メディエーターについても来年度予算に盛り込みたい。今朝、厚生労働省の医療安全推進室から、がんセンターに見学に見えたんだけれど、いらした方が医療安全担当の専従者が1人しかいないのかと驚いていた。ぜひ、メディエーターだけでなく事務職員の枠も確保してほしい。大野病院の件でも、手術中に家族を放ったらかして誰も説明をしていなかったという。こんなことをされて怒らない方がおかしい。ところが実際の現場には、そういう時に遺族に説明をする要員がいない。医療安全の取り組みは色々と行われているけれど、クライシスマネジメント、ことがあった時にどうするかは全然できていない。県病院局に対して資料を求めたのに、加藤医師の逮捕まで何の連絡もなかったとも聞いている。ぜひ、そういったところの予算化をお願いしたい。こういったことができないと、なかなか国民の満足は得られないと思う」


岡井
「予算と離れてもよろしいか。コメディカルに今まで以上に活躍してもらって需要増大に対応するとなると、川越先生も仰るように法律に引っかかっちゃうことが結構出てくる。助産師も通常分娩ならOKと言われても、じゃあ会陰切開はどうなんだ、それが許されていなければ、結局医師が必要じゃないかということになる。ある程度、本気で考えていかないと、結局全部医師に回ってくることになるので、ぜひ議論していただきたい」


舛添
「質問なんだが、まず山田先生、歯科医は麻酔ができるから活用したらどうかという人がいるけれど、それについてどうだろうか」


山田
「はっきり言うと、いろいろな他職種のマンパワーの活用はチーム医療が組まれている状況ならプラスに働くであろう。しかし歯科医が麻酔に適すかどうかは慎重に考えるべきだと思う。というのも医師と歯科医とは根本的に違うものだという前提が必要。歯科医の担当は歯と口腔、医師は全身。冒頭に私が説明したのは、麻酔医の仕事というのは外科的な傷害の際の全身管理なのであって、単純に患者が意識を失っている状態にすることではないということだ。全身リスクは重大なものがあり、しかもその頻度が高い。しかも、顕在化しているその周辺に10倍の危ない患者がいる。漸進的な基板のない歯科医を使うのは慎重にした方がよい。欧米で言う所のPA(フィジカルアシスタント)に対応する位置づけでチームの一員として用いるならプラスになるだろう」


舛添
「もう一つは川越委員に伺いたい。訪問看護を介護保険の枠から外せという件、具体的に何が問題なのか」


川越
「一つは介護保険は契約が主体になるので手続きが繁雑になること。書類書くことが多いし、事前に決めた通り計画的に進めることを求められる。医療はたとえば『30分で済ませる』などといった計画通りにはいかない。ナースが本来やらなければならないことをできなくなる。それから、現在だいぶケアマネが力を持ってきている。決して悪い話ではないが、ケアマネは当初医療職の人が多く入っていたのが大部分引いてしまって、そこには理由があるんだろう、福祉職の人がほとんどになっている。そうすると、どうしても医療的なことには弱くなる。医療は一刻一刻変わる。それを一々ケアマネに説明して理解してもらう必要がある。それと介護保険は、やたらと会議が多い」


吉村
「ケアミックスを考える際は医行為なのかどうかを踏まえて考えた方がよいのでないか。書類書きやオーダー、患者さんへの説明は必ずしも医行為ではなかろう。一方でIV入れるとか麻酔とか挿管とかは医行為だろう、会陰切開はどうなのかとか、どこまでやってもらえるかによって状況が変わる。医行為をやってもらうのだとしたら、ナースに対して教育をしないといけないだろう」


高久
「たしかにチームワークを組んでいないとスキルミックスは難しかろう。山田先生に伺いたいのだが、麻酔の場合、最初は指導医がかけて途中から研修医というのは難しいと聞いたことがある。そういうものなのか」


山田
「それは保険請求上の問題だと思う。麻酔管理料を請求するには、最初から最後まで麻酔標榜医が行わなければならない。研修医が何か一つでも行えば算定できない。だから大学病院のように研修や教育を行う施設では麻酔管理料を請求できていない」


嘉山
「看護職の養成は十分だけど足りないというお話について。一言で言うと看護師の労働環境も劣悪だということに尽きる。看護職に限らないけれど環境改善をぜひ折り込んでいただきたい。それから専門看護師の過程は大変に難しい。認定看護師の方も授業料が150万円もかかる。半年も休んで150万円もかけて取るのに、取っても全くインセンティブがないというのはいかがなものか。認定を取って来た人たちのモチベーションは実に高いので、何とかそれに対するインセンティブも予算に入れてほしい」


和田
「患者の視点から見ると、何か改革を行った場合、過渡的には今までとだいぶ見え方が違ってくるだろう。分からないことがたくさん出てくる。そこでコミュニケーションをちゃんと取らないといけないということを必須の課題として捉えておく必要がある。それをしないと紛争や訴訟のリスクが高くなる。どういう形のコミュニケーションを取るか考えておく必要があろう」


大熊
「事務局の説明資料と井上教授の資料とでコメディカルの職種が一致していない。これに関連して資料7を見ていただきたいのだが、諸外国では皆減っているのに日本では精神科の病床数が高どまりしており、この理由は日本ではPSWという職種の人々が活躍できるようになっていないから。空いたベッドを埋めるために認知症の患者を招き入れることが行われており、それは認知症患者にとって最もよくないことだという。コメディカルを挙げる場合、医療と福祉とをつなぐ職種も念頭において、医療関係職だけに限らない方がよいのでないか。

訪問看護ステーションが減っているという件に関しては、おそらく2.5人の壁が影響している。看護師が2.5人いないと廃止せざるを得ないので、それで止めているところが随分多いと聞いている。医師だって1人で開業できるのだから、訪問看護ステーションも1人で開業できて連携できるように規制を外してほしいという声を聞いている。ぜひステーションを増やして、地域の人が気軽に立ち寄れるような社会をめざすよう考えたらどうかなと思う。

それからメディエーターに関しては昨日の大野病院事件判決を受けた遺族のコメントを資料に最後につけたのでご覧いただきたい。裁判では、最後の手術中のことだけしか問われなかったけれど、事前に助産師や先輩医師が注意を促していたのに加藤医師が手術を強行してしまったことについて全く触れられていないということが分かると思う。それから提言もついているけれど実に重要なことがいくつも書かれている。これを見ても分かるように遺族が単に悲しんでいるからそれを慰めたりなだめたりして解きほぐせというようなアプローチは、それが必要なこともあるだろうけれど、しかしむしろ訴訟になるようなものというのは自分たちの負った不幸を二度と繰り返させない、無駄にさせないという使命感に突き動かされていることも多く、方向として見当違いでないか。現実にメディエーターとして働いている方々が燃えつきている。遺族は病院の体制を変えないとできないようなことを望むのだけれど、病院側にそれを受け入れるつもりがないと遺族の気持ちは虚しく空回りし、間に挟まれたメディエーターだけが苦悩する。全社連では『真実を話そう』という取組を行っているけれど、そういう風土をつくり出すことが必要で、院長を先頭に患者に虚心に全てを話すこと、それを話したからといって現場の人間が非難されないように守ること、そういう仕組みの中にあってこそメディエーターは生きるのであって、メディエーター単体でつくっても問題解決にはつながらないと思う。同様にクラークの労働条件が気の毒なくらい劣悪という話も聞く。介護ヘルパーと同様に大切でやりがいのある仕事だと思って選んだのにガッカリして辞めていく現状がある。必要だと思うのなら、きちんと処遇するようお願いしたい」


海野
「メディエーターに関して言うと、大野病院事件でも医療提供側の姿勢が改めて問われていることは間違いないと思う。真実を分かりあえる手だて新しい枠組をつくっていかないといけない。で、実は私は和田先生の弟子で講習を受けたりしているのだが、強く感じるのは、そういう点について医師の教育が不十分だということ。患者の立場で情報を開示し、話し合える場をつくることが、病院というのは難しいところだというのを痛感している。メディエーター講習を受けること経験することで、そういうことに気づくことができる、それが病院を良い場にしていく原動力になることもあるんでないか。そういう効果もあるということを申し上げたい」


大熊
「付け加えると、病院全体の風土が変わらないとダメなんで、要するに医師がそういう考えになっていないのにメディエーターが頑張るとかわいそうな状況に追い込まれる」


和田
「慰めたりなだめたりするのがメディエーターなのではなく、むしろ大熊委員の仰るように情報開示をスキルをもって専門的に行ったりするものだ。大熊委員の仰ったことはその通りだが、現在導入しようとしているところは、みな上がサポートしていて、そしてそれだけ必要とされている。理想的風土として大熊委員が挙げられた全社連は、まさにメディエーターを本格的に導入しようとしているし、現在、メディエーターを導入している病院や病院団体は真実開示を進める先進的なところが中心であって、防御的発想からではない。ただ、中小病院では導入を図れないところもある。ではなぜ入れないところがあるかというと、それは財政的に厳しいから。病院のカルチャーを変えるのと同時に、その導入にインセンティブつけるよう、ぜひとも予算措置としてお願いしたい」


土屋
「和田委員の資料の17ページめの一番下が端的に表しているけれど、医師の受講者のうち31%が院長・副院長であって、上が率先してやるというのが大原則。メディエーターだけ置いて院長が逃げるような印象を受けられたら困るので一言申し上げた」


高久
「たしかに日本の病院にはナースが少なくて、その原因が休職数の多さだというお話があったけれど、井上委員にお聞きしたいのは、医師を増やすときには医学生の数を増やすということになった。看護師を増やすには、看護学生を増やす方向なのか、それとも離職者のリクルートをする方向なのか」


井上
「今までのシステムだと、看護協会も一時期熱心にやっていたけれど、離職した人に少しぐらい研修をしても病院には戻らない。いったん離職すると難しい。まずは早期離職させないために4年制養成にもっていくとともに、病院の看護師数を増やしてゆとりを持てる環境を作ってあげたらいい。大卒が増えればプロ意識を持って働くので自然と定着していくと思う」


嘉山
「病院の雇用数を増やすといっても、どこの病院も確保に苦労している。雇うだけの数がそもそもいないのでないか」


井上
「ライフサイクルに合った働きかたのできるよう、短時間正規雇用のような仕組みを工夫して入れ込んでいかざるを得ない。短時間であっても病院と関わりを保っていると子育てがひと段落した段階などに、また長く働けるようになる。今の大学生は本当にちゃんとした考えを持っているので」


嘉山
「潜在看護師に関する論文を読んだことがある。たしかにいったん離職したら、たとえ研修しても戻ってきにくいという話だった。ブランクが短期間なら戻れる。ところで看護師養成数を増やすのは限界があるだろう。既に全国で学校が160いくつかあって、これ以上増やしても教官の質を保てるのか。むしろ看護協会にお願いしたいのは短期間で戻れるような環境、たとえば病院の中に保育所を設けるといった、そういうことをアシストすることだ」


井上
「仰るとおり。それほど休んでいない人は戻ってこれる。養成に関して言うと4年制大学はこれからも増やしていく必要があるだろう。チーム医療の面からも、判断力を養う必要がある」


嘉山
「ところで、そろそろ予算のことを確認しておいた方がよいのでないか」


高久
「では海野委員よろしく」


海野
「一つは医師養成数で、中長期的なことはとりあえず除いて、まず来年度の医師養成定員を過去最大を目途に増加させる。短時間正規雇用制の普及促進を図る。女性医師が働き続けられるよう24時間保育、病児保育、病後児保育について整備を進める。それから『当直』を実態に見合う『夜間勤務』に改め給与を支払う。いずれは労働基準法に従った労働条件になるようしなければならないが、当面は労働基準法を外れている部分もきちんと評価して給与を支払うところから始めるしかなかろう。

次は医師の偏在と教育の問題。医師集団が自律的に検討する場をつくる。そのための研究班を設置し今年度中に一定の方向性を取りまとめ甲西労働大臣に報告する。地域の基幹病院の定員をまず増やし、派遣前中後のサポートができる体制整備や医療提供力の向上を行ったうえで医師の派遣を行う。小児救急や周産期医療を担当した医師に直接手当を支給する。

3番目は地域医療・救急医療体制支援と住民参加。救急は数のコントロールが必要であり、それをいかに進めるか予算措置が必要だろう。

最後がコメディカルの雇用数と教育のことで、短時間正規雇用制の普及のより雇用数を増加させる。それから卒後の新人教育にあたる看護師に対して指導手当をつける。新人教育が、その後のキャリアや定着には大変重要であり、その教育にあたる人に対しても正当な評価が必要だろう。それから今日は薬剤師の数に関する資料も出してある。とにかく病院の薬剤師がメチャクチャ少ない。今後スキルミックスやチーム医療を進めるうえでも、念頭においておく必要がある」


土屋
「井上委員の資料が端的に示しているけれど、ワークシェアしないと病院には戻ってこないのだけれど、そのためのベースの定員がない。だから戻って来ようがない。今日持ち込み資料で示したのは、特定機能病院と地域医療支援病院でコメディカル雇用を倍増するには年8000億円、400床以上の病院で倍増するなら2兆円以上必要という試算。とにかく雇用の枠を広げないと、病院に戻りようがない」


ふと気づくと大臣がいない。


嘉山
「この会も4回目になるけれど、安全と希望を国民の目線で語るということだった。もう一度整理しておきたいのは、日本の医療はWHOでも世界一と評価されている、しかしながら医療費の対GDP比は27位。ちなみに教育費も29位だ。記者が大勢来ているので、この事実を確認してもらいたい。これだけ医療費が低いにもかかわらず高いと感じるのは、窓口での支払いが高いから。医学部定員増の閣議決定は国民が決めたことだが、教育費を医療費へ回すということを決めたわけではない。医師を増やす際に文部科学省の予算を割かないといけないのでは軋轢を生じる。教育費全体を上げることも、この検討会として言うべきなのでないか。医療費もパイの中で取り合うのでは問題にならない。全体的な増額を担保しないと意味がなくなる。厚生労働省も、医師数増は国民が決めたわけだから、増額を打ち出してほしい」


高久
「おっしゃる通り」


和田
「質問なんだが、海野委員にまとめていただいたものは細かな数値はともかく、項目に関しては概算要求に反映されるという理解でよろしいか。大臣がいないのだけれど、これは厚生労働省の方に伺えばよろしいのか」


厚生労働省の事務方だれも答えず。なぜこんなやりとりが必要になったか最後に明らかになった。


岡井
「合意できれば大臣に答申する形になるのではないか」


嘉山
「定員増については方向性を出したので、これを大臣が出すのだろう。我々の仕事は具体的な数字を出すことでなかったか」


高久
「同じ意見だ。最終的に数字が決まるのは、もっと上の問題だ」


小川
「基本的に医師の技術料や錬度に対する評価が足りない。厚生労働省にお願いしたいのは、国民が日本では世界的に見て立派な医療が行われていると認識するようにしていただきたい。我々はそのために適当な予算を提言して細かなディテールは今後の問題だろう」


高久
「海野先生のとりまとめで過剰な勤務に対する手当てが入っているけれど、私が危機感を持っているのは外科医。内科医は机の前で本で勉強することもできるが、外科医は技術を習得しないといけない。ぜひ外科医を優遇しないと日本の患者が手術のために外国へ行くことになりかねない」


海野
「ドクターフィーとして、手術料、技術料をどう評価して、それを直接収入につなげるかだろう」


嘉山
「すべての外科系学会で技術の伝承がテーマになっている。一番大事なのはトップランナー。難しいことに挑戦するのがいなくなると、戻すのに何十年もかかる」


高久
「では次回以降の日程を事務局から」


事務局
「23日、24日と合宿で行うことになっていたが、諸般の事情により取りやめとなった。次回は27日に行う」


何それ? という感じである。
どうも湯河原で合宿を開こうとしたことに対して記者クラブが「無駄遣い」と批判したらしい。その動きの背後に何があるのかは興味あるところだ。そうはいっても、2日分会合がなくなってしまうと、たぶん議論はだいぶ少なくなるだろう。


そう思っていたら、なんとドンデン返しで、土屋委員ががんセンターを提供して合宿を東京で行ったらしい。私自身が全く油断していて、このことを知らず(もともと傍聴できなかったんだが)、後からCBニュースの報道で知ってビックリ仰天した。

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