「患者と接したくない研修医がいる」―第6回医学教育カリキュラム検討会
「なるべく患者と接したくないと話す同期の研修医がいる。人と接するのは好きではないが、偏差値が高くて医学部に入る人もたくさんいる」―。今後の医学教育の在り方について検討している文部科学省の検討会で、ヒアリングに参加した研修医が明かした。(新井裕充)
研修医の発言に委員の間からざわめきが起こり、「医学教育の中で、『人と接するのが苦手である』ということを評価して、苦手ならば臨床に進めないように改善する必要がある」との声も上がった。医学教育の改善点として、研修医は「毎日患者さんとお会いして、学生自身が考えてレポートを書かせるようにしていくべき」「人を好きになるという教育が必要かもしれない」などと提案した。
今年2月、文部科学・厚生労働両省がまとめた研修制度の見直しに関する最終提言を受け、医学教育の改善案などについて検討している文科省の「医学教育カリキュラム検討会」(座長=荒川正昭新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長)の第6回会合が4月3日に開かれ、初期研修中の2人の医師からヒアリングを行った。ヒアリングの質問項目は、卒業生から見た医学教育や卒前臨床研修の改善点など。
ヒアリングに参加したのは、立花蘭氏と吉村俊太郎氏の2人。札幌医科大を昨年卒業し、現在同大附属病院で研修中の立花氏は、「学生時代に、もう少し患者さんとじっくり向き合える仕組みにした方がいい」として、卒前の臨床実習の問題点について次のように述べた。
「知識を詰め込むだけであれば講義でも教科書でもできるので、毎日患者さんと接してカルテを書かせるようにした方がいい。私の大学では、(医学生は)電子カルテに書き込むことができないのでモチベーションが下がるし、実践的でないと思っている。実際(の臨床)に近い形で実習させた方がいいのではないか。電子カルテを見て、それを書き写して、『はいレポートです』と提出するだけではなく、毎日患者さんとお会いしていく中で、学生自身が考えてレポートを書かせるようにしていくべきではないか」
立花氏はまた、国家試験が講義に与えている影響について、「知識の詰め込みになってしまうことが多くて、自分自身で考える講義が少なかった。講義する先生の考え方や哲学を聴くのが好きだったので、そのような講義が印象に残っている」と振り返った。
さらに立花氏は「なるべく患者と接したくないと話す同期の研修医がいる」と指摘。「人と接するのは好きではないけれども、偏差値が高くて医学部に入る人もたくさんいると思う。そういう人をどのようにして、人とうまく接していけるようにするか。『人を好きになる』という教育が必要かもしれない」と述べた。
>「人を好きになるという教育が必要かもしれない」などと提案した。
この方、真顔でしょうか??
ヒトを好きになる教育の方法を聴いてみたい衝動に駆られます。
毎日、カルテを書けばヒトを好きになる??
ヒトと接するのが苦手なヒトが医学部にいてもいいと思います。
ヒトと接する臨床医にならなければいいだけですので。
医学も医学教育も臨床医を養成するためだけに存在するわけではないわけですから。
あつかふぇ様
コメントありがとうございます。
>この方、真顔でしょうか??
すみません、発言時の表情は見ていないのですが、
「とても真面目そうな先生」という印象でした。
>ヒトと接するのが苦手なヒトが医学部にいてもいいと思います。
確かに、そんな気もいたします。
研究に専念したり、作家や漫画家になったり、
いろいろな方向性があると思います。
新井様、ご理解を頂きありがとうございます。
いつも思うのですが、医学部に行って医者にならないと批判するヒト達がいますが、工学部に行って銀行員になったり、理学部に行ってアナウンサーになってしまったりするヒト達が批判の対象にならないのは、この世の摩訶不思議だと思います。
たとえば商学部の学生が「なるべく顧客と接したくないと話す同期がいる。人と接するのは好きではないが、偏差値で学部を選ぶ人もたくさんいる」と発言したら、問題にする人はいるのでしょうか。
たとえが悪いなら、法学部の学生が「なるべく人と接したくないと話す同期がいる。人と接するのは好きではないが、偏差値で法学部を選ぶ人もたくさんいる」と発言したら、問題にする人はいるのでしょうか。
医学部だけがやり玉に挙げられる意義を考えてしまいます。
医学生の教育経費は、私立大学の試算によると年間1300万円、6年間で7800万円と言われています。大雑把に言うと、国立大学の場合、学生の授業料は他の学部と同じく年間55万円くらいなので、上記の95%以上は国民の税金からまかなわれている訳です。もちろん私立大学にも国から多額の助成金が支払われています。
工学部、商学部、法学部の教育経費は知らないので比較はできませんが、医学部教育が問題になるのはこういう側面もあるのでしょう。
匿名様
>私立大学の試算によると年間1300万円
私立と国立を単純に比べることができるなら、ご指摘の通りかもしれません。
ただし、その理論に従って考えますと
「公立小学校、中学校の教育諸経費 = 私立小学校、中学校の教育諸経費」
という仮説も成り立ってしまいます。庶民の感覚的にはかなり無理のある方程式だと思います。無論、具体的な数字は知りません。
義務教育にかかる財源が「私立小学校、私立中学校並み」にかかると仮定すると、大多数の国民は「義務教育で習わない職業についてはいけない」ことになってしまうと拝察いたします。
こういうページがあります。
http://ameblo.jp/doctor-d-2007/entry-10033761818.html
まったく同感です。
そもそも医学部には、純粋な教員はおりません。
全員、病院の職員であり、教育で給与を貰っている教員はいません。
大部分の職員は、学生を教えても、授業料はタダです。
授業はパワーポイントで為され
教科書は、自分で買います。
医学教育のどこにお金がかかるのか
まったく謎です。
あつかふぇさま
>そもそも医学部には、純粋な教員はおりません。
そんなことはありません。
基礎をはじめ、純粋な教員がいます。
>全員、病院の職員であり、教育で給与を貰っている教員はいません。
これは全く誤りです。大学職員として教員の給与体系で給与をもらっており、そこに少しの手当てを追加してもらっています。このため(旧)国立大学の教員は臨床を担当していても国立病院の医師より薄給です。
大部分の職員は、学生を教えても、授業料はタダです。
>従ってこれも誤りです。授業をする方で給与を頂いており、臨床をしてもわずかな手当てを追加してもらっているだけです。
大学病院には病院籍の医師も少し居ますが、多くは教員です。したがって病院の経費の中には教官医師の給与は含まれていません。それでも大学病院の半数以上が赤字になるほど、ゆがんだ診療報酬体系の中で大学病院経営を行っています。
>医学教育のどこにお金がかかるのか
すでにおわかりと思いますが、本来診療報酬で購われるべき診療業務を行う医師の時給分を教育費として払っています。また医学部を運営するための設備・組織にもたくさんのお金がかかっています。医学教育は、他の学部に比べて学生対教員の比率が低く、これも教育費を高くしています。
教科書も医学書は高いのですが、これは売れる量が圧倒的に少ないことと、少ない部数で利益を出すために出版社が必要以上に高い紙・装丁を使用していることによります。米国の代表的教科書をアジア版で買うと日本語の教科書の1/3以下になることも多いのが現実です。
さらに医学教育は6年ですから、これもコストを上げています。
でも医学教育は必ずしも医師養成教育ではないことは確かです。というか、基礎医学の研究者も必要ですし、行政にも必要ですし、他分野で活躍していただくことも必要です。また医師国家試験に合格してからも、医療に携わる必要はありません。これは就職試験ではなく、資格試験ですから、資格を取ることと働くことは直結しません。
ふじたん様>
すべておっしゃるとおりだと思いますが
話を簡略化するために上記の表現をとりました。
もうしわけございませんでした。
ただ、フジタン様とわたしの行っている内容は
カタチはどうあれ、主張したい内容の本質は同じだと考えております。
ひとつだけ追加を
厳密には、病院職員の枠で給与を取得している人達と、医学部教員(以前は教官)として給与を得ている人達がいます(独立法人化以降のはなしです)。医学部の教育に関与するのはその双方であり、非常勤も含めると病院職員枠で働く職員の方が圧倒的に多いと思います。