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森勇介・大阪大学大学院工学研究科助教授インタビュー

森勇介 大阪大学大学院工学研究科助教授(06年日経BP技術大賞受賞)

――まず、今回受賞の対象となった成果を教えていただけますか。

 表彰されたのは、「フェムト秒レーザーを使った、たんぱく質結晶化技術」です。

 たんぱく質の構造解析・構造決定がホットな分野であることは皆さんご存じと思います。その研究に欠かせないのがたんぱく質分子が精度よく規則的に配列した高品質たんぱく結晶です。これまで結晶を育成するためには、たんぱく質の溶液を静かに半年も置いておくというのが常識だったのですが、レーザーで衝撃を与え溶液を攪拌するという方法を取ることによって、結晶成長の成功率とスピードを飛躍的に高めて、例えば半年かかって出来るかどうか分からなかったたんぱく質でも数日で結晶が得られるという事例もありました。今のところ230種類以上のたんぱく質の結晶化に挑戦して、従来法では2割くらいの成功率が7割以上に向上しています。今では、世界中の研究者からたんぱく質の結晶化依頼が来ています。

 ベンチャー企業を設立して、ビジネスにしたのも評価されたようです。

――なぜその研究をしていたのかから教えていただけますか。

 話し始めると随分長くなってしまいますけど、いいですか?

――ええ。では順を追ってお聴きしましょう。

 高校生の時、3年まではバスケット部でクラブばっかりしてたんですが、受験勉強を始めてから物理が面白くなって、京大の理学部へ行って、素粒子や宇宙の勉強をしたくなったんです。私の親父は阪大工学部の教授でして、小さい頃から「学問は面白いぞ」と刷り込まれてたこともあって、アインシュタインの相対性理論とか目一杯勉強したいなと思ったんですね。

――はあ。

 ほな、なんで阪大工学部へ? と思いますよね。京大理学部に行きたいと言うと、親父が言うんですよ。「お前にサイエンスは向かん。工学の方が面白いぞ」って。じゃあ京大の工学部と思ったら、「京大なんかより阪大の方が自由で面白いぞ」って。

 世間の評判と大分違うと思いましたが、現職が言うのだから間違いないって言われるとそうかな、と思ったり、また、数年前まで親父の言うことには逆らえないトラウマがあったものですから、それで阪大の工学部へ進みました。学科も、親父が電気は面白いというので、特に興味はなかったけど電気工学科を選んだんです。でも入学してみてなんとなく違和感を感じました。工学部って研究より就職のことを考えている人の方が多いんですよね。なんか違うなあ、転部したいなあと思いながらも、親父が「転進するのは雇われ人の発想や。経営者は転職せん」と無茶苦茶な理屈の説得をするから、なんとなく半導体を研究したままドクターコースまで行ってしまったんです。

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