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「それぞれの病院の志だろう」 ─ ケアミックス病院がやり玉に

■ 「我々としては非常に引っかかる」 ─ 小山分科会長代理
 

[小山信彌分科会長代理(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
 最初に、(回復期)リハビリに入院させるというお話だが、「これをリハビリに入院させる」、あるいは「一般病床に入院させる」、その判断基準はどこにあるんでしょうか。

[青森慈恵会病院・丹野雅彦院長]
 比較的、転院までの時間が短かったり、それ以外の合併症があったりという人は、「一般病床」でちょっと診てから移そうかという話はしています。

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 ただ、問題になっているのは、(回復期)リハに入れてすべての検査をしちゃってDPCの「一般病床」に戻すというところに、我々としては非常に引っかかるというか、問題になると思うんですよね。それをやられてしまうと、DPCそのものの運営ができなくなっちゃうと理解しているんですよね。
 この辺はどう......ですかね。そうせざるを得ないような患者さんがやっぱり多い?

 ▼ 厚労省側の意見として、「我々としては非常に引っかかる」と発言しているのだろうか。小山委員は今年3月、日本病院会など11の病院団体が加盟する日本病院団体協議会のトップ(議長)に就任した。9月からは、同分科会で「分科会長代理」に格上げになるなど波に乗りまくっている。「悪い波」でなければいいが......。
 日本病院団体協議会は、中医協汚職事件を契機にして05年に結成。病院団体が団結するために自主的につくったように思われがちだが、厚労省が病院団体に働きかけてつくらせた意見調整のための団体。この団体の首を縦に振らせて、病院団体が賛成しているという既成事実をつくれれば、厚労省にとって非常に便利。議長は、反対する病院団体を説得して、「うまくまとめました!」と報告するのが主な仕事。副議長は、邉見公雄・全国自治体病院協議会会長。
 同協議会の代表者会議(非公開)では、厚労省の方針に反対する意見も出るため、調整が難航する場合もあるという。最近では、医療事故調査委員会の設置をめぐって反対意見が続出したらしい。当時の山本修三議長(日本病院会会長)は、「第三者機関を設置する点では一致している」と報道陣に繰り返し説明、病院団体で意見が割れていないことをアピールしたことは記憶に新しい。
 ところで話がそれて恐縮だが、「日本病院団体協議会」よりも前から存在している病院団体の集まりとして、四病院団体協議会(四病協)がある。こちらの活動は日本精神科病院協会と全日本病院協会が中心。四病協と日本医師会との間で定期的に懇談会が開かれており、診療報酬改定など中医協の診療側意見のすり合わせは四病協が中心。
 最近、四病協と日医の関係に亀裂が生じているらしい。きっかけは、中医協での藤原淳委員(日本医師会常任理事)の「勤務医が本当に忙しいのか疑問」との発言。これに油を注いだのは、新型インフルエンザの要望書をめぐる問題。四病協は、感染症法上の2類類似疾患としての取扱いを解除するよう求める「新型インフルエンザ等の対策に関する要望書」を8月31日付で舛添要一厚労相(当時)に提出。これを日本医師会の飯沼雅朗常任理事が9月2日の定例会見で、「紛らわしい」などと批判したことをネットメディアが報じた。関係者によると、その日のうちに記事のURLが四病協の幹部にメールで流れ、一斉に激怒。日医との対決姿勢を強めているという。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 私の立場としてはやはりDPC病棟を経由して、回復期や認知症病棟などに患者さんを転棟させたいと思っているが、どうしても(ベッドが)「回らない」ということがありまして......。(ここで小山委員が発言をさえぎり、強い口調で追及する)

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 「回らない」というのは、どういう意味で、「回らない」?

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 部屋がどうしても、「一般病床」が40床で......。(小山委員が発言をさえぎる)

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 (強い口調で)それよりも多く受けているわけですよね!? 本当は、「一般病床」で受けなければいけないのを(回復期)リハ病床で受けちゃっているということなんですね、じゃ?

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 まあ......、そういうことになりますね。

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 (事情聴取する警察官のような口調で)はーん......。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 本来なら、あともう少し、倍ぐらいの「一般病床」が欲しいと思っているが、どうしても看護師不足などで、なかなか病棟が開設できない。
 比較的、落ち着いて転院してくる患者さんが多いのですが、ドクターによっては、「どうしてもMRIを撮りたい」「CTを撮りたい」ということで、その辺は容認しているということです。

[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
 もう1つ教えてください。先生のところの「一般病床」に入院される患者さんは、どこからか送られてくる患者さんでしょうか。というのは、大きな......と言ったらいけませんが、急性期病院から紹介されて来られる患者さんが多いんでしょうか。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 回復期(リハ病棟)に関しては、急性期病院から紹介いただいている患者さんが多いです。
 それ以外に関しては、「一般病床」で受ける患者さんは関連施設で病状が悪化したとか、例えば外来の患者さんで、そういった治療が必要な人が多かったと思います。例えば、圧迫骨折などで急性期では診られない患者さんはこちらでお受けして診るようにしています。

[西岡分科会長]
 (急性期病院から)送られてくる比率はどのぐらいでしょうか。「一般病床」に直接入ってきて、急性期医療を施さなければいけないような症例と、どこか別の病院から急性期が済んで送られてくる(亜急性期の)患者さんとの比率はどのぐらいでしょうか。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 詳しいデータは出していませんが、大体......、感じとしては10%から20%が、急性期の治療が必要な患者さんと考えています。

[西岡分科会長]
 齊藤委員、どうぞ。

[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]
 今日からお見えになった美原委員にちょっとご意見を伺いたいのですが、先生、前に(08年11月12日)ここのヒアリングで聴かせていただいた時に、急性期の病床があって、同じ施設内に後方施設があって、そこで患者さんのために、(施設完結型医療という)究極の地域医療連携みたいな形でやっておられるけれども、外から見るとなかなかDPCの病床の割合が非常に少なかったりして、違和感があるというところも否定できなかった。
 でも、考えてみればそれが最大の効率であり、究極の地域連携のかなあと思うのですが、今、青森(慈恵会病院)のお話を伺うと、同じ施設の中で、DPCの病棟から一般病棟、慢性期ないし長期治療の病棟に移って、そしてこっち(DPC算定病床)にまた移る。そういうことは、非常にDPCの病院の中に広がると、かなり制度的に混乱してくる可能性があるかなという危惧があるんですが、(美原)先生、委員としてのお立場で、ここら辺をどう、お感じでしょうか。

 ▼ 美原盤氏は、この日のヒアリングから委員に加わった。美原記念病院は昨年11月12日にケアミックス病院を対象にしたヒアリングで呼ばれた。同日のヒアリングには、青森慈恵会病院も呼ばれたが、美原記念病院は"模範的なケアミックス病院"という位置付け。委員から「感銘深い」「大変参考になった」「敬服した」などと絶賛された。ケアミックス病院の中にもいろいろあるので、今後は選別を進めるという意味だろう。昨年11月のヒアリングで、美原盤院長は次のように述べている。
 「私どもの病院は、DPC算定病床が非常に少ないということでヒアリングを受けたわけですが、詳しくはもう既に資料の中に書いてありますが、添付資料をごらんになっていただければよろしいと思うんですが、我々の病院というのは急性期から慢性期まで、施設完結型の医療を行っております。こういうような形になったのは、今までの保険制度に沿って当初急性期病棟と慢性期病棟が3対1の割合だったのを、制度の変化に伴いながらだんだん減らしてきたと、要は急性期病棟を少なくしてきた。
 これはやはり疾患の特異性、すなわち脳血管障害をはじめとする脳卒中の場合には急性期医療と慢性期と回復期の時間というのは全然違いますので、そのまま考えていけば必然的に急性期病床数は減るというふうに思われます。参考資料の22ページを見ていただければよろしいかと思いますが、我々の病院はMDC01が60%以上、脳疾患という範疇で外傷を入れれば4分の3がこの疾患に特化した専門病院であります。
 そして、平均在院日数を見ていただくんですが、参考資料の20ページ、回復期リハ病棟、特殊疾患療養病棟、現在は障害者病棟ですが、急性期病棟においてもいずれも平均在院日数は全国平均と比べて極めて短く、すなわち効率的な医療が行われていると言えます(厚労省の議事録より)。
 ところで、本題とは関係ないかもしれないが、美原盤氏は慶應大医学部卒。民間企業のように医系技官にも「学閥」があるとしたら、東大よりも慶應のほうが強い気がする。前置きが長くなった。美原氏の演説をご紹介しよう。医療課の担当者が大きくうなずきながら、ご静聴していたのが印象的だった。

[美原盤委員(財団法人美原記念病院院長)]
 自分の病院のことを言ってよろしいのでしたら、まず、私どもの病院は回復期リハ病棟から、状態が悪化して急性期病棟に移るパーセンテージは恐らく1%以下だろうと思います。
 (他の)急性期の病院から、当院の回復期リハ病棟に受ける時、「MRI等々、あるいは採血等をしますか」と言われたら、それはいたします。もちろん、これは包括の中で、一般病棟に入院させてから(検査などを)するということは行いません。

 今、うちの病院で問題となっているのは、地域連携で回復期リハビリテーション病棟に患者様を受ける時、元の急性期病院が平均在院日数を短くするために早く出したいということがあるかのように思います。すなわち、こちらのリハビリテーション(病棟)でお受けした時に、まだ病気が治りきっていないというケースが数パーセントあります。
 その時、うちの場合は(脳卒中を主とする神経疾患専門の)単科病院ですので、それは診ることができないわけです。ですから、それは元の病院にお返しすることはあります。

 では、うちの回復期リハビリテーション病棟の中で、「肺炎などさまざまな病気が起こったときにどうしますか」と言うと、ま、骨折はあります。骨折の場合は当然、手術が必要ですから、他の整形外科の病院に送ります。
 しかしながら、「風邪をひいた」「肺炎だ」という場合は、そのまま回復期リハビリ病棟で診るのが、ぼくはある意味で当然だろうと思っています。

 すなわち、例えば(慢性疾患の高齢者らが介護保険で長期入院する)介護療養型病棟、介護老人保健施設で医療の在り方が問われています。すなわち、肺炎を起こしたからすぐ急性期病院に送るというようなパターンは、僕はちょっといかがなものかなと思います。(他の委員から「うん」とうなずく声が漏れる)

 すなわち老健、ここでは全然関係ないことかもしれませんが、老健にもお医者さんがいるわけですから、それなりの抗生剤なり肺炎の治療をすべきだろうと思います。
 一方、そこのところに、じゃ、「老健サイドの医療のレベルが低いのではないか」とかいろいろな議論があるとは思うが、(同一施設の中で急性期病棟と回復期リハ病棟を)行ったり来たりするのはいかがなものかと、僕は思います。(医療課の担当者、笑顔で大喜び。委員らもかなり満足している様子)

[齊藤委員(社会保険中央総合病院)]
 (美原委員の発言後、間髪入れずに)なんかこう、急性期のDPCの病院と回復期の病院が同施設の中にあって、その間で必要に応じて非常に目まぐるしいピンポンのようなですね、やり取りが行われるというのは......。

[美原委員(美原記念病院)]
 (堂々とした口調で)恐らくあり得ると思います。ただ、それをやるかやらないかは、それぞれの病院の志だろうと僕は思います。

 ▼ 青森慈恵会病院がまるで営利ばかりを追求する「志の低い病院」とでも言いたいかのような発言。ここで、青森慈恵会病院の端野院長が挙手。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 よろしいですか?

[西岡分科会長]
 どうぞ。

[青森慈恵会病院・丹野院長]
 我々の病院もですね、肺炎になってすぐにするわけじゃなくて、必ず点滴もしますし、酸素も投与します。抗生剤もやります。すべて包括(払い)の中でやっていますが、それでもやはり病状が悪化するケースは、人口呼吸器やIVH(中心静脈栄養法)など、もう少し濃密な治療が(必要な)人に関しては、(一般病床に)移すということをしています。

[西岡分科会長]
 (追加の質問は)よろしいでしょうか。じゃ、どうもありがとうございます。また、お伺いするかもしれませんが、よろしくお願いします。(以下略)
 
 
 
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【目次】
 P2 → 「脳梗塞の患者は、ダイレクトに回復期に入院」 ─ 丹野院長
 P3 → 「我々としては非常に引っかかる」 ─ 小山分科会長代理

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