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ニュース〜医療の今がわかる

 今月18日にヒトゲノム国際機構からチェン賞を授与され帰国したばかりの中村祐輔・東大医科研ヒトゲノム解析センター長は、最近、外国へ行く度に憂国の念を抱いて帰ってくることが続いているそうです。何が問題なのか、どうすればよいのか、聴きました。(聴き手・川口恭)

がん研究 薄れる日本の存在感

 3月から4月にかけてがん関係の国際学会3つに参加するため、オランダ、中国、アメリカと回ってきました。そこで、日本のがん医療やがん研究の存在感が急速に世界の中で薄れていることを痛感しました。スピーカーを見ても座長を見ても、日本人がとても少ない。特に、最後のアメリカがん学会では、10年ぐらい前はアジア人というと日本人が目立っていたのですが、今はほとんど中国人、ひょっとすると韓国人より少ないんじゃないかというほどの状況でした。

 WHOの試算では、今年がんが世界の死因の1位になります。日本国内でも3人に1人ががんで亡くなっていますし、これがあと15年経つと2人に1人ががんで亡くなるとの予測です。先進国や発展を急激に遂げている国では、がんの克服を大きなテーマに掲げていますが、そんな中で日本の存在感が薄れています。

 いろいろな分野で欧米を中心に国際的な基準が作られていきます。たとえば、電化製品でも電気を輸送するシステムでも、世界的な標準と違うと向こうで売れません。だから国際的な基準作りのプロセスの中で、その一員として活躍していかない限り、日本は世界の動きに乗り遅れていきます。医療の分野でも機器を作るとか、たとえばゲノム情報を利用した医療システムの構築でも、そのプロセスの中に日本の研究者、あるいは、研究所がコミットしていかないと日本は取り残されると思います。

 遺伝子多型(SNP)を使った薬剤の効果や副作用にかかわるゲノム研究に関しては理化学研究所のゲノム医科学研究センターとNIHのファーマコジェノミクス・リサーチネットワーク(PGRN)が3年前に提携を始めて、その中にタイやフランスのグループが加わり、さらに、ヨーロッパの臨床研究のグループも加わる予定で、グローバル化した薬理遺伝学的ネットワークができつつあります。われわれ以外の別のグループもネットワークを作って、ある意味、ゲノム医療の標準化の主導権争いが始まっているわけです。しかし、国レベルでの対応ができていませんので、今のままでは、国際的な競争から脱落するのも時間の問題です。

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