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ニュース〜医療の今がわかる

新型インフル マスクは正しく使わないと逆効果

 新型インフルエンザの感染拡大が伝えられる中、やはり気になるのは「どうやってわが身を守るか」ということ。なかでもマスクの効果には諸説ある。本当のところ、どうなのだろうか。(堀米香奈子)

 マスクが全国各地で飛ぶように売れている。すでに店頭から姿を消し、入手困難となっている地域もあるほどだ。花粉症や季節性インフルエンザでマスクに慣れ親しんでいる私たちにとっては、ごく当然の選択ということだろう。

 ところが、欧米からは全く正反対の話も聞こえてくる。街中でマスクをしている人は、多くの都市でほぼ皆無といってよいという。日本より感染者が多く確認されているアメリカ・ニューヨークでさえ、同じ状況だ。日本人が一斉にマスクをかけている様子などは、彼らにとっては過剰反応、奇異にさえ映るらしい。この反応の差をどう理解したらよいのか。

 「欧米の人たちがマスクをかけないのは、文化的背景も大きいでしょうね」と解説するのは、おなじみ森澤雄司・自治医大病院感染制御部部長。

 欧米は日本と比べて人口密度が低く、建物や道も広いスペースが確保され、通勤ラッシュなどもごく一部地域に限られている。狭い空間に多くの人間がひしめき合っているというような状況はなかなかない。しかも、日本では体調の無理をおして働くのもごく普通のこと、ある種の美徳とも思われがちだが、欧米ではそのような感覚はない。熱があったり咳がひどければ、当然のように休暇を取って自宅で体を休めるのだという。

 単純に考えて、欧米のライフスタイルのほうが日本より感染リスクは低いと考えられそうだ。少なくとも彼ら自身、感染リスクを日本人ほどには大きく見積らずに済んでいるのである。そのため、マスクをしている人間は通常、感染者か、あるいは、がんなどで特に免疫力が低下しているものと判断されるらしい。

 WHOも、5月18日、ホームページ上で、健康な人は「マスクをする必要はない」との考えを示している。ただし、患者と密に接する人に関しては、「正しくマスクを着用し直ちに捨てること、そしてその手を直ちに消毒するように」とも記している。

 「一番大事なのは、正しく使うことです。誤った使い方は、逆効果になることさえあります」と森澤部長。

 「オープンエリアでのマスクの感染予防効果については、WHOが5月3日付の指針(原文はこちら)のなかで『立証されていない』と示しているとおりです。そもそも、エビデンスを確立しようとしたら、マスクを着用した被験者を一日中観察していなければなりません。現実的でないですよね。そしてこれもWHOの指摘のとおり、使うのであれば正しく使わないと逆に感染リスクを高めることにもなりかねません。着ける際は鼻から口までをきちんと覆い、使用中もやたらに触らないことが大事です。顎マスクや鼻マスクになっていたら、何度もいじって直さなければなりませんから、もし手にウイルスがついていたら、それを自ら粘膜に近づけるようなもの。かえって感染リスクを高めてしまいます。そして、外し方にも注意が必要。汚れた手で目や鼻、口などを触るのはもちろんNGですし、外したマスクは放置せずにすぐゴミ箱に処分してください。徹底するなら、それを触った手もまた洗うべきでしょう」

 森澤部長によれば、2003年にSARSが流行した際、外科手術用のサージカルマスクの使い方で、各国の医療従事者の明暗が分かれたという。使用に不慣れだった香港の医療者たちが難を逃れた一方で、取り扱いに慣れていたはずのカナダの医療者たちは軒並みともいえる被害を受けた。これは香港の医療者らが不慣れゆえに非常に慎重にマスクを装着し、取り扱ったのに対し、カナダでは慣れのせいか、SARSに汚染された手袋のままマスクを取り扱うなど、杜撰さが見られたためと囁かれている。

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