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先進医療を実施したいが、「皮膚科の専門医がいない」

8月19日の先進医療専門家会議.jpg 「皮膚科の専門医は1人もいません。ですから、そういう場合にはできない」「臨床検査科を入れてあげれば、できるんじゃないか」─。厚生労働省の会議で、先進医療の要件緩和を求める声が相次いだ。(新井裕充)

 保険診療との併用が認められる先進技術について審議する厚労省の「先進医療専門家会議」(座長=猿田享男・慶應義塾大医学部名誉教授)は8月19日、新しい医療技術として申請があった6件(6月受付分)のうち、「リアルタイムPCRを用いた迅速診断」を大筋で了承した。残る5件は書類不備で返戻だった。

 「リアルタイムPCRを用いた迅速診断」の適応症は、水疱やびらん、潰瘍性病変を伴う単純疱疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス感染症で、「免疫不全状態等により他の診断方法による鑑別診断が困難な者に限る」とされている。
 
 費用(患者負担分)は1回約2万2000円、保険外併用療養費(保険給付分)は約586万5000円。この技術を実施するためにはいくつかの要件をクリアすることが必要で、そのうち「実施責任医師の要件」として、「皮膚科専門医」が挙げられている。

 質疑で、北村惣一郎委員(国立循環器病センター名誉総長)は、「皮膚科の専門医じゃないと駄目だろうか。国循(国立循環器病センター)の場合、皮膚科はありません! ですから、皮膚科の専門医は1人もいません。そういう場合には(本件の先進医療が)できない」と訴え、内科の感染症の専門医も含めることを要望した。

 また、吉田英機座長代理(昭和大医学部名誉教授)も、「(実施責任医師が所属する診療科の要件に)『臨床検査科』って入れてあげれば、国立循環器病センターでもできるんじゃないでしょうか」と述べ、要件緩和に賛同。猿田座長も、「広げられれば、そういう形で。これは疾患として、病気としては多いので」と理解を示した。

 先進医療をめぐっては、保険収載されると点数が下がってしまって使われない技術になってしまうなど、さまざまな問題が噴出している。実施できる医療機関の要件もその1つ。国民皆保険制度の下、要件をあまり厳格にしてしまうと、先進医療を実施できる医療機関が近隣にある患者と、そうでない患者との間で受診格差が生まれてしまう。しかし、要件を緩和し過ぎると安全性の面で不安が生じる。

 先進医療専門家会議の評価結果について審議する中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では、日本医師会の委員が要件緩和に前向きな姿勢だが、患者を代表する立場の委員は慎重論を唱えている。
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)について審議した6月24日の中医協総会で、藤原淳委員(日本医師会常任理事)は「施設基準が非常に厳しい。縛りをどんどん厳しく設けるというのは専門医にとって意欲を大変そぐような面もあるので、その辺は考慮していただきたい」と要望したが、勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が反論。
 「安全性に対して非常に慎重に取り組んで、先進医療だから、それを根付かせていくためにもそういう形でスタートしていこうという配慮をしていただいているほうが僕はありがたい。要件について厳し目にというか、一定以上の自院で緊急手術ができるというところでまずやってほしい」と述べ、これに病院団体の委員も賛同した。

 このように先進医療をめぐる大きな課題は、患者の利便性と安全性の調整。その背後に、病院・診療所間の"縄張り争い"も見え隠れする。また、保険診療との併用を認める「先進医療」という発想の前提となる「混合診療の原則禁止」という厚労省の考え方に対しても、さまざまな意見がある

 今回の「リアルタイムPCRを用いた迅速診断」については、要件について再度検討した上で次の中医協総会に諮る予定。先進医療の要件緩和をめぐって、どのような意見が交わされるかに注目したい。

 なお、8月19日の先進医療専門家会議での厚労省の説明、質疑応答は次ページ以下を参照。

 【目次】
 P2 → 「リアルタイムPCRを用いた迅速診断」について ─ 厚労省説明
 P3 → 「内科の感染症の専門医も含めてよいか」 ─ 北村委員

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