文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

中央社会保険医療協議会 (中医協) ― 09年度第13回(9月18日)

9月18日の中医協.jpg 鳩山内閣が発足して最初の中央社会保険医療協議会(会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)が9月18日、東京都千代田区の全国都市会館で開かれた。(新井裕充)

 同日は、慢性期入院分科会からの報告とDPCの退出ルール、新薬の薬価算定方式などを中心に議論を進めたが、2010年度の診療報酬改定に向けた具体的なスケジュールは示されなかった。
 政権交代に関連する発言は全くなく、会議終了後のブリーフィング(記者説明)でも、厚労省の担当者は「大臣と相談しながら進めていく」と述べるにとどまった。

■ 診療報酬基本問題小委員会
 
 議題は、▽診療報酬調査専門組織・慢性期入院医療の包括評価調査分科会からの報告 ▽DPCからの退出─の2項目。

1. 慢性期入院医療の包括評価調査分科会からの報告
 医療区分とADL区分を組み合わせた9のケースミックス分類について、「現在においても9分類の基本骨格の妥当性は維持されている」とする同分科会の報告書を了承した。
 9分類に基づく慢性期入院医療の包括点数をめぐっては、慢性疾患の高齢者らが長期入院する「療養病床」を減らすために設定されたという経緯があり、「受け皿を整備しないのに入院患者を追い出す」などの批判が絶えない。

 質疑で、藤原淳委員(日本医師会常任理事)は同分類に基づく点数設定がコストに見合っていないことについて、「値付けは政策的か」などと質問。保険局医療課の佐藤敏信課長は次のように回答した。
 「当時、医療区分1あるいはADLが著しく良いグループの方は、医療療養病床よりはそれ以外の施設でのケア、療養というものが想定されたと思う。そういう意味で、ある程度政策的な点数付けがなされた部分もあろうかと思う。病院であれ、クリニックであれ、個々の部門別に、例えば診療科別にすべて黒字、収益がないといけないとか、入院・外来・手術別に見たときも、すべての部門で黒字でなければならないということもないのかもしれないと考えている。医療区分1、2、3にバランス良く患者さんが入っているならば、現時点ではこれだけで病院全体が赤字になるということではないと思う。そういうことを総合的に勘案した上で、当時はこういう点数が付き、こういう図表19(医療区分1のコスト割れ)の結果が出たものと承知している」

 一方、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は「非常にきちっとした報告書で、ありがたいなと思っている」と評価しながらも、調査対象が136病院と少ないため、「これだけでは少しモノが言いづらいかなと思っている」と指摘した。
 その上で、「これからは客体を増やすとともに、もっと広く一般病床のこういう対象病棟、片方では介護保険施設も入れながら、両方見ながらの調査をしていって、その中で『慢性期入院医療とはどういうものか』ということを浮かび上がらせていただけるとありがたい」と述べた。

2. DPCからの退出
 DPC(入院医療費の包括払い方式)を導入している病院がDPCでの支払い方式を辞める場合(DPCからの退出)について、厚労省が示した退出手続き案を了承した。質問や意見は出なかった。

 案によると、「特別の理由」で診療報酬改定の前年度末以外に退出する場合には、基本問題小委員会の下に設置した「DPC退出審査会(仮称)」で退出の可否を決定し、審査結果を基本問題小委員会に報告する。
 審査会は支払側2人、診療側2人、公益側3人の計7人で構成し、原則として非公開。審査会で退出を決定するため、改めて基本問題小委員会で審議しない。

■ 総 会
 
 総会の議題は、▽医療機器の保険適用 ▽臨床検査の保険適用 ▽先進医療専門家会議の報告 ▽DPCからの退出 ▽新型インフルエンザに関する診療報酬上の緩和措置 ▽社会保障審議会の医療部会、医療保険部の報告(7月26、27日)の報告─の6項目。

1. 医療機器の保険適用
 患者の血管内で代替血管としての役割を果たす「TALENT胸部ステントグラフトシステム(エクステンション)」(日本メドトロニック)を「区分C1」(新機能)として保険適用することを承認した。
 価格は28万6000円で、外国平均価格44万9285円の0.64倍。このため、藤原委員(日医)が理由の説明を求めたが、保険局医療課の宇都宮啓企画官は、類似機能区分である「大動脈用ステント」(28万6000円)などをそのまま当てはめたことを説明した上で、「たまたまそうなった。意図してそうしたわけではない」と答えた。このほか、特に意見はなかった。

 また、透析シャントの狭窄部拡張などで、一般型バルーンカテーテルでは十分な拡張を得られないことが想定される病変に使用する「アンジオスカルプトPTAバルーンカテーテル」(USCIジャパン)を「区分C1」(新機能)として保険適用することを承認した。特に質問や意見はなかった。

 このほか、9月1日から保険適用した医療機器75件について報告があり、特段の意見はなかった。医科では、区分A2(特定包括)34件、区分B(個別評価)32件。歯科では、区分A2が2件、区分Bが7件だった。

2. 臨床検査の保険適用
 「淋菌およびクラミジアトラコマチス同時核酸増幅同定精密検査」(富士レビオ)、「シスタチンC精密測定」(東ソー)の保険適用を承認した。

3. 先進医療専門家会議の報告
 9月10日の先進医療専門家会議(座長=猿田享男・慶大名誉教授)で「第2項先進医療」として新たに承認された「小児期悪性腫瘍に対するFDG-PET検査」について厚労省の担当者が報告、特段の意見はなかった。

 このほか、個別に実施を承認する「第3項先進医療」として認められている4つの技術について、一定の要件を満たせば届出によって実施できる「第2項先進医療」に移行させることを承認した。
 「第3項先進医療」から「第2項先進医療」に移行するのは、2008年4月に「高度医療評価制度」を導入して以来初めて。
 今回、「第2項先進医療」に移行したのは、▽乳癌の腋窩リンパ節に対するセンチネルリンパ節生検(放射性同位元素と色素の併用) ▽同(色素単独) ▽悪性黒色腫に対するセンチネルリンパ節生検 ▽悪性黒色腫に対するセンチネルリンパ節生検と遺伝子診断─の4技術。

 「高度医療評価制度」は、薬事法上の承認などが得られていない医薬品や医療機器を使用した場合でも、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能とする制度。

4. DPCからの退出
 同日の基本問題小委員会で承認した退出手続きについて、総会でも了承された。

5. 新型インフルエンザに関する診療報酬上の緩和措置
 新型インフルエンザの流行により、入院患者の急増や看護職員の罹患などで看護配置の基準を満たせなくなった場合の緩和措置について、厚労省の担当者が説明。各都道府県などに対し、臨時的な取り扱いを求める通知を9月14日付けで発出したことを報告した。

 緩和措置は、▽インフルエンザが流行している地域および期間に限り、インフルエンザ患者は平均入院患者数(直近1年間)に参入しない ▽1日当たり勤務する看護職員数の特例(1割以内の一時的な変動)を、インフルエンザが流行している地域および期間に限り、「2割以内」まで認める ▽夜勤72時間規制の特例(1割以内の一時的な変動)を、インフルエンザが流行している地域および期間に限り、「2割以内」まで認める─の3点。

 坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)は、「看護師が足りなくなるような状況になると思うが、パートの看護師を雇ったり、短時間勤務を増やしたりする場合のコスト面でのサポートはあるのか」など、財政的な支援について質問した。
 これに対して、佐藤医療課長は「7対1」の基準を満たせなくなっても、「7対1」の看護配置に基づく入院基本料が支払われることを説明。「全額かどうかは別にして、看護師の雇い上げに掛かる費用は込められている」と回答した。

6. 社会保障審議会の医療部会、医療保険部会の報告
 7月26日の医療部会、27日の医療保険部会で出された主な意見について佐藤課長が報告。これに対して、日医(藤原委員)の発言はなく、他の委員からも質問や意見は出なかった。

■ 薬価専門部会
 
 議題は、▽新薬の薬価算定方式 ▽特許期間中の新薬の薬価改定方式─の2項目。

1. 新薬の薬価算定方式
 前回の薬価制度改革以後の新薬の算定状況について、保険局医療課の磯部総一郎薬剤管理官が報告した。この日、厚労省が示した「平成20年度以降の新薬算定の状況に関するまとめ」では、「類似薬比較方式で算出した新薬の薬価は、外国平均価格に比し平均1割程度低く、薬価制度改革以前と変わらない状況にある」とした。
 その上で、「新薬の薬価算定方式について更なる改善を図る必要があるかどうか」「新薬の薬価改定方式の在り方を検討する必要があるのではないか」として、新薬の価格を一定期間引き下げない「薬価維持特例」の試行的導入に向けて大きく踏み込んだ。

 質疑で、支払側の小島茂委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「外国平均価格に比べて1割ぐらい低い要因として考えられるのは、10年以内に下がるということ。それはまさに薬価が算定されるベースのところが外国平均価格よりも下がっていることが当然考えられる」と指摘。 「10%の乖離があるということは、有用性加算や画期性加算などの加算を付けても相当大変だろう。ここをどう考えるか。(乖離の10%を)『有用性加算や画期性加算で埋める』と言ってもたぶんできないと思う。薬価維持特例も含めてどう考えるか。これからの課題だ」と述べた。

 遠藤久夫部会長(中医協会長)も、「まさにそういう議論を展開する必要がある」と薬価維持特例に前向きな発言。山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)も、「薬価維持特例(の議論)が片方であるわけだから、それとのバランスの中で議論していただければ、メーカーさんにも十分に応えつつ、現場も困らない」と述べた。
 遠藤部会長はこの後の薬価維持特例の議論で、「導入は既定路線ではない」と打ち消す発言をしたが、日本医師会を除く中医協委員は薬価維持特例の試行的導入に積極的であるように思える。

2. 特許期間中の新薬の薬価改定方式
 新薬の価格を一定期間引き下げない「薬価維持特例」について議論を進めた。薬価維持特例の導入に反対するのはもはや日医だけになった感がある。議論の模様は、後で詳しくお伝えしたい。

 ※ 前回(8月5日)の薬価専門部会はこちらを参照。
  
 
 (この記事へのコメントはこちら)

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
サイト内検索
loading ...
月別インデックス