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「それぞれの病院の志だろう」 ─ ケアミックス病院がやり玉に

DPCヒアリング0924_2.jpg 「それをやるかやらないかは、それぞれの病院の志だろう」─。医師や看護師不足が深刻化する地域で、「施設完結型」の高齢者医療に取り組む民間病院がやり玉に挙げられた。急性期と回復期の病棟を往復する「再転棟」の割合が全体に比べて高い青森慈恵会病院を、中医協分科会の委員は「非常に目まぐるしいピンポンのようなやり取り」などと酷評した。(新井裕充)

 厚労省の08年度調査によると、DPC対象病院の「再転棟率」は0.05%だったが、青森慈恵会病院は8.60%と飛び抜けて高かった。このため、今年度のDPCヒアリング対象になった。
 「再転棟」とは、DPCを算定している「一般病床」から回復期リハビリテーション病棟や療養病床などに移し、再びDPCの「一般病床」に戻すこと。

 9月24日に中医協・DPC評価分科会が行ったヒアリングで、同院の丹野雅彦院長は、「脳梗塞の患者は一般病床を経由しないで、そのままダイレクトに回復期(リハビリ病棟)に入院するケースがほとんど」と説明。MRIなどの検査を回復期リハ病棟で行って、その後にDPCの病床、そしてまた回復期リハに移すという。
 つまり、「DPC病床→回復期の病床→DPC病床」ではなく、「回復期の病床→DPC病床→回復期の病床」という形の「再転棟」だった。
 丹野院長は、看護師不足などで急性期の一般病床を新たに開設できないことを説明した上で、「(一般病床が)40床と少ないので、紹介された患者さんを受けるということがなかなかできなくて......、今のところそのような状況です」と理解を求めた。

 しかし、齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)が一喝。「青森(慈恵会病院)のお話を伺うと、同じ施設の中で、DPCの病棟から一般病棟、慢性期ないし長期治療の病棟に移って、そしてこっち(DPC算定病床)にまた移る。そういうことがDPC病院の中に広がると、かなり制度的に混乱してくる可能性があるという危惧がある」
 
 さらに、美原盤委員(財団法人美原記念病院院長)が、「肺炎の場合は、そのまま回復期リハビリ病棟で診るのが当然だろう」と指摘。「肺炎を起こしたからすぐ急性期病院に送るというようなパターンは、僕はちょっといかがなものかなと思います」と追い討ちをかけた。他の委員から、「うん!」とうなずく声が漏れた。

 そして、齊藤委員が「急性期のDPCの病院と回復期の病院が同施設の中にあって、その間で必要に応じて非常に目まぐるしいピンポンのようなやり取りが行われるというのは......」と振ると、美原委員は堂々とした口調で、「恐らくあり得ると思います。ただ、それをやるかやらないかは、それぞれの病院の志だろうと僕は思います」と言い放った。

 青森慈恵会病院(332床)は、DPCを算定している急性期の病床がわずか40床で、それ以外は長期入院の病床。今年度からDPC対象病院となったが、急性期よりも慢性期の比重が大きい典型的なケアミックス型病院。
 このようなケアミックス病院は、平均在院日数の短縮など、経営上の理由で「再転棟」させるため、厚労省が問題視している。同一施設内で急性期医療と慢性期医療を扱うため、厚労省が進める「機能分化と連携」にとって邪魔な存在なのだろう。
 しかし、厚労省が考える「地域連携」は、さまざまな病院が林立している大都市を前提にしているとの批判もある。病院間の移動が数十キロという地域では連携もクソもない。1つの病院内で、さまざまな病状の変化に柔軟に対応してくれる「施設完結型」の医療が地方では欠かせない。

 最近では、このような意見に厚労省も聞く耳を持ったのか、それとも依然として無視しているのか分からないが、「ケアミックス病院を区分する」という方向を模索し始めたようだ。今後、経営上の理由からケアミックス型にしている病院と、専門分野に特化したケアミックス病院とを何らかの基準で分けることが考えられる。
 つまり、専門特化したケアミックス病院はDPCの枠組みに残すが、慢性期中心のケアミックス病院は医療機能を強化した介護老人保健施設に転換させたいのかもしれない。

 中医協のDPC評価分科会は昨年11月、青森慈恵会病院などケアミックス型の4病院からヒアリングを行った。同院は、経営効率を図るためにケアミックス型にしていると判断されたのだろう。9月24日のDPCヒアリングに再び呼ばれてしまった。一方、昨年のDPCヒアリングに呼ばれた美原記念病院の美原盤院長はちゃっかりと同分科会の委員に就任してしまった。

 美原委員が青森慈恵会病院を非難する発言は3ページを参照。


【目次】
 P2 → 「脳梗塞の患者は、ダイレクトに回復期に入院」 ─ 丹野院長
 P3 → 「我々としては非常に引っかかる」 ─ 小山分科会長代理


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