文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「呼吸脈拍の観察できない救命士が1/4~1/3いる」-消防庁検討会

 「基本的な呼吸や脈拍の観察ができていない救急救命士が約4分の1から3分の1程度はいる」-。消防庁が開いた救急医療に関する有識者会議に、救急救命士の観察能力や手技に関する調査が示された。救急振興財団救急救命九州研修所の竹中ゆかり教授は調査について、「呼吸や循環を見るための基本手技が不足しているので、改善のための訓練が必要。教育項目や国家試験ガイドラインなどの根本的な見直しが求められる」と話している。(熊田梨恵)

 調査は今年、竹中教授が所属する救急救命九州研修所に通う救急救命士、410人に実施された。結果は次の通り。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
①脈拍の触知位置を正しく理解しているか

・大腿動脈... できている45% できていない55%
・橈骨動脈... できている71% できていない29%
・総頸動脈... できている66% できていない34%

②頸動脈の触診・・・速さの観察

・速い脈拍(130/分)... 正解53% 「普通」と回答13% 「遅い」と回答14% 評価できなかった20%
・普通の脈拍(70/分)...正解30% 「速い」と回答27% 「遅い」と回答18% 評価できなかった25%
・遅い脈拍(40/分)...正解50% 「速い」と回答3% 「普通」と回答27% 評価できなかった20%

③頸動脈の触診・・・強さの観察

・強い脈...正解31% 「普通」と回答32% 「弱い」と回答23% 評価できなかった14%
・普通の脈...正解30% 「強い」と回答21% 「弱い」と回答30% 評価できなかった19%
・弱い脈...正解44% 「強い」と回答7%  「普通」と回答16% 評価できなかった33%

④呼吸・・・速さの観察

・速い呼吸(36回/分)... 正解89% 「普通」と回答9% 「遅い」と回答1% 評価できなかった1%
・普通の呼吸(16回/分)...正解61% 「速い」と回答36% 「遅い」と回答3% 
・遅い脈拍(10回/分)...正解50% 「速い」と回答3% 「普通」と回答27% 評価できなかった20%

⑤聴診の位置は正しいか

正しい...73% 正しくない...27%

⑥聴診上、湿性ラ音・乾性ラ音(肺の雑音)を理解しているか

・湿性ラ音...正解(理解している)58% 「乾性ラ音」と回答42%
・乾性ラ音...正解(理解している)29% 「湿性ラ音」と回答71%

⑦心電図の電極を張り替えることで心筋部位別にST異常(心電図の波形の変化から得る虚血性心疾患などの重要なサイン)を見るという概念が理解できているか

・左室側壁と下壁の一部を見るための電極をつける(CS5)
理解している...39% 理解していない...61%

・左室前壁の一部・前壁中隔を見るための電極をつける(変形胸部誘導)
理解している...9% 理解していない...91%

・P波が良く観察できノイズが入りにくい電極をつける(NASA誘導)
理解している...41% 理解していない...59%

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 
 この結果について竹中教授は、「呼吸や循環を見る"いろはの『い』"となる観察能力や手技が足りていない」と話した。また、「心筋部位別にST異常を見るという目的から心電図の電極を張り替えるという概念は、半分以上理解されていなかった。心電図ではVT(心室頻拍)、VF(心室細動)といった心停止を示すものはよく理解されていたが、高度の房室ブロックは3分の1しか正解できておらず、危険な心室不整脈も3分の2の理解にとどまった」と分析。その上で、資格取得後の救急救命士には、▽急性冠症候群▽脳卒中▽重症喘息▽急性腹症▽外傷▽アナフィラキシー▽低体温▽溺水▽小児の急性疾患▽分娩▽電撃症、熱傷、中毒―などを疑える観察ができる再教育が必要だとした。

 さらに、現在の救急救命士は交通事故のような外傷への対応は一般的に考えられているよりも少なく、心筋梗塞や心疾患、脳卒中に関わることが増えていると指摘。これまでは心肺停止状態の患者に対して行うBLS(Basic Life Support...心肺停止状態の人への救命処置)や除細動、アドレナリン投与などについての教育が中心だったとして、「今後は呼吸不全や脳卒中などの生命の危機的な状況を回避して、心肺停止状態にしないようにするための教育が必要」と述べた。救急救命士の資格取得後の再教育プログラムや、国家試験ガイドラインの見直しが必要とした。

 また、都道府県に救急患者の搬送・受け入れルールの策定が義務付けられたために救急隊員の業務の質の向上も求められるとして、有識者会議の横田順一朗作業部会長(市立堺病院副院長)は「CPA(心肺停止状態)になる前に危ない患者を適切なところに運べるのもプロだと思うので、さらに議論を続けたい」と述べた。

 救急救命士は資格取得後、2年の間に48時間の病院実習を受けなければらない。従来は128時間だったが、「病院側が人不足で実習に対応できず、見学になってしまっている」「現場で人員のやりくりができない」などの声が上がっていたことなどから、昨年度に通知を改正。地域での再教育に重点が置かれ、地域の医療者や消防関係者などから成るメディカルコントロール協議会が残りの80時間以上を担うようになった。ただ、協議会は地域によって活動の温度差も指摘されており、薬剤投与や気管挿管など一定の医行為を担う救急救命士の教育に関する課題は多い。


この記事へのコメントはこちら

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
サイト内検索
loading ...
月別インデックス