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患者の「知る権利」と「知りたくない権利」 ─ 明細書で激論

会議終了後の勝村委員ら0203.jpg 薬の種類や検査の内容など診療内容を詳しく知るのは「患者の当然の権利だ」という考えがある。これに対し、自分の病名を知りたくない患者もいるため、「希望者にだけ知らせればいい」という考えもある。(新井裕充)

 4月の診療報酬改定に向けて2月3日に開かれた厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、レセプト並みに詳しい医療費の明細書が議論になった。

 ※ 明細書について、前回改定での議論など詳しくはこちらを参照。

 レセプトは、医療機関が保険者に診療報酬を請求するために提出する診療報酬明細書で、投薬の内容などが詳細に記載されている。このレセプトと全く同じではないが、診療内容が詳しく記載されている明細書の発行は既に進んでいる。現在、レセプト(診療報酬明細書)をオンライン請求している医療機関には、希望があった患者に明細書を発行することが義務付けられている。

 こうした中、明細書の発行を義務付ける医療機関をさらに増やすことを求める患者団体もある。その背景にあるのは、医療事故や薬害などの訴訟。いざという時のために、患者が受診した際の情報をあらかじめ保管しておく必要があると考えるのだろう。
 現在、「求めがあった場合のみ」「有料または無料」で明細書が発行されているが、これでは不十分であると考え、「全患者に」「無料で」─という2点を強調している。

 中医協でも、患者を代表する立場として参加している委員が、「全患者に」「無料で」という2つの条件で明細書を発行することを求めている。これを受け、厚労省は2月3日の中医協で「レセプトの電子請求を行っている保険医療機関等については、以下に掲げる正当な理由のない限り、すべての患者に対して明細書を無料で発行する」という案を示した。

 これに支払側の委員は賛成したが、診療側委員は反対した。同日の議論で診療側は、「患者への情報提供が必要」との考えにはこれまでと同様に賛同しており、「明細書の発行」それ自体には反対しなかった。
 しかし、希望しない患者に対しても発行すること、つまり「すべての患者」に発行することに対しては反対意見が相次いだ。自分の病名を知りたくない患者もいるし、プライバシーの保護という観点からも「欲しい人にだけ発行すればいいのではないか」などと主張した。
 また、「無料」という点についても診療側から意見や質問が相次いだ。明細書を発行するコンピューターシステムの改修やソフトウェアなどの費用、患者の質問やクレームに対応する職員の配置など、コスト面での支援を求める声があった。1時間を超える議論の末、最終的に合意に達することはできず、継続審議となった。

 ただ、明細書の発行などに必要なコストについては、支払側の委員から前向きな検討を求める意見もあった。このため、今後は「すべての患者に発行する必要があるか」という点が大きな焦点になるとみられる。
 なお、患者を代表する立場の委員はこれまで、「すべての患者」への無料発行を求める主張を繰り返してきたが、この日は「トヨタ記念病院」を例に挙げて説明した。このため、診療側の委員から「トヨタ記念病院は発行ボタンを押さない患者には発行していない」との声も出ている。詳しくは3ページ以下を参照。


【目次】
 P2 → 「正当理由ない限り、全患者に無料発行」を提案 ─ 厚労省
 P3 → 「こういう方向でお願いしたい」 ─ 勝村委員(支払側)
 P4 → 「個人情報が出てトラブルを生じることを危惧」 ─ 渡辺委員(診療側)
 P5 → 「プライバシーが出るリスクが非常に高くなる」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P6 → 「めちゃくちゃな患者さんが一杯いる」 ─ 邉見委員(診療側)
 P7 → 「保険者が全患者に渡すのが一番」 ─ 西澤委員(診療側)
 P8 → 「医療内容や価格を教えてもらう権利がある」 ─ 白川委員(支払側)
 P9 → 「無理矢理押し付けて渡さなければならないのか」 ─ 鈴木委員(診療側)
 P10 → 「いろいろな観点が混ざって議論の収拾が付かない」 ─ 小林委員(公益側)

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