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ニュース〜医療の今がわかる

放射線って何? きほんのき


健康への影響は?

 いよいよ本題。健康への影響を考えてみます。
 まず、この宇宙に存在する限り、被ばくゼロで過ごすことは絶対にできません。日本でも年2.4mSvは、空や地面や食物から自然に浴びています。
 放射線が健康に問題を与えるかどうかは、量次第です。量は、線量率×時間の積分値ですから、ニュースなどで読み上げられる線量率を8760倍(24時間×365日)すると、原発などの状況が変わらずに、その線量率が続いた場合の屋外での年間放射線量を推計できます。
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68-2.11.JPG 被ばく量と健康への影響との関係は表のように言われています。ただし、一度に大量に浴びて出る急性症状以外の、何年も経ってから出る症状について科学的に因果関係を確定するのは難しいことなので、大量に浴びた場合から確率的に類推したうえ、相当に余裕を見た数値になっています。たとえば100mSvからは発がんリスクの上昇なども言われてはいますが、喫煙のリスクと比べると問題にならないほど小さなものです(下表右参照)。
 お住まいの地域の放射線量を把握してみれば、この先で原発が臨界事故でも起こさない限り、一人ひとりはあまり神経質になる必要ないと、お分かりいただけると思います。ただ、何千万人という東日本の全人口を母集団として考えた場合には、がん患者が将来的に千人単位で増える可能性も残されています。

何はともあれ3原則

 いずれにせよ、福島第一原発で、放射性物質が原子炉外へ出てしまっていることは確かで、しかもその状態がかなり長引きそうです。原子炉から出た放射性物質は、ある程度の時間が経つと空気中や水中に広がって問題ないレベルまで薄まるわけですが、その途中の濃い状態のものが風に乗って移動し、雨などに混じって落ちてくることに対しては注意が必要です。
 無用の被ばくを避けるため、以下の放射線防護3原則を覚えてください。
(1)距離を取る
 放射線の強さは、線源からの距離の2乗に反比例します。線源から1kmの地点で100の強さがあったとしても、10km離れれば1にしかなりません。放射線の多そうな場所からは離れましょう。
(2)短時間にする
 読んで字のごとくです。
(3)遮蔽する
 多くの放射線は、屋内にいることで相当遮蔽したり減衰させたりできます。また線源は、ホコリに混じって空中を漂っているので、吸い込んだり屋内に持ち込んだりしないよう、花粉対策と同様に、マスクを着用する、皮膚を露出せず帽子を被り、屋内に入る前に衣服をよく払って付着物を落とす、という方法が有効です。雨は、空気以上に放射線の多い場合があるので、吸わない飲まない皮膚に触れさせないを徹底しましょう。
 万が一、線源を体内に取り込んでしまうと「内部被ばく」と言って、極小の近距離から相当の時間、被ばくし続けることになります。放射線の影響を受けやすい乳幼児では、極力、避けたいものです。
 体内に入る経路は、ガスやホコリを吸い込む場合、汚染されたものを飲食してしまう場合、露出した傷口に付着する場合とあります。
 吸い込むのはマスク着用で、傷口は覆うことで防げます。問題は飲食です。
 ただし、放射能が基準を超えた食材は市場に出回らないことになっていますし、基準自体も1年間継続して摂取した場合に問題があるかもという値なので、売っているものを恐れる必要はありません(下図左参照)。魚に関しては、食物連鎖の上にいる大型のものほど生物濃縮を起こして放射能が高くなるという可能性はありますが、そういう状態になったら情報が出ますので、それまでは心配無用です。
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 最後に別の観点から。今回の事故で、原発周辺の土壌や海が相当に放射能汚染されたことは間違いなさそうです。実害を被った方々には心よりお見舞いを申し上げたいと思います。しかし地域外、特に東京電力管内に暮らす私たちが、被害者意識に固まり脅えるだけでよいのかは考えないといけません。
 被災地の方々は今も私たちの支援を必要としているのに、放射線への誤解で滞っているとしたら大問題です。さらに付け加えると、あの原発の電気を使っていたのは福島県ではなく首都圏です。その電気で、私たちの便利な生活、そして高度な医療が支えられてきました。今後、原発を問い直す機運が高まると思いますが、その際には私たち自身の覚悟と貢献も問われます。

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