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PMDA(医薬品医療機器総合機構)の不思議-(番外編)PMDAで働く人たち


 
安全部 宮田優佳さん
 
 PMDA業務の3本柱「審査、安全対策、救済」の中で、最も業務内容を想像しにくいのが「安全対策」ではないだろうか。
 
 現在の医薬品行政のテーマは、「ドラッグ・ラグ」から「市販後安全対策」は移りつつあると言われる。市販された薬は多少なりとも副作用のリスクがあるため、被害が拡大しないようにリアルタイムで情報を収集し、必要な対策を取っていかねばならない。薬事法は副作用が起こった場合、製薬企業や医療機関国に報告することを義務付けている。
  
 PMDAの安全部は、医薬品や医療機器によって起こった副作用や感染症、不具合などの報告を企業から受け、内容をチェックする。部内は抗がん剤や糖尿病用剤など薬の種類によって5人程度のチームに分かれており、1日に200-400件にも上る副作用情報が1つのチームに上がってくる。部内で副作用情報を分析して、調査結果を厚労省に提出し、内容に応じて添付文書改訂や製品改善、回収が企業に指示される。
 2007年度には、国内から2万8257件、国外から9万5036件の副作用報告があった。医療機器については国内1万3842件、国外2708件。

宮田優佳さん.jpg 安全部で働く宮田優佳さん(29)は病院で働いた経験もある薬剤師だ。英国に1年間留学してファーマコビジランス(医薬品安全性監視)を学んだ後、PMDAで働いている。

 宮田さんは糖尿病用剤などを担当するチームで、1日に約30件の副作用情報をチェックする。情報が表示されるパソコンの画面は、患者の疾病や医薬品に関する情報、状況の経過などかなり細かい。継続的に報告される副作用の場合は、経過など注意すべき点を集中してチェックし、まったく新しい副作用の場合は幅広く項目を見て、元々の病気が副作用の原因なのか、ほかの要因が影響しているのかなど因果関係を見る。チェックに漏れなどが発生しないよう、結果をチーム内で回覧して情報を共有し、気になったところはお互いに指摘する。

 宮田さんは医薬品の安全対策について、「日本は手厚い方だと思う。PMDAのスタッフにはサリドマイドなど薬害の歴史が意識の中にあって、二度とあのようなことを起こしてはならないという意識で仕事をしている」と語る。

 PMDAでは、企業から報告された副作用情報をデータベース化し、安全対策を行う必要がありそうな副作用に対して注意を促す大規模なシステムも構築しているところだ。

 
 働いていた精神科病院で、処方される薬に副作用が多いことや、福祉的な行政サービスの必要性などを考えることが多く、PMDAに興味を持ったという宮田さん。日々の安全対策業務について「縁の下の力持ちでいいと思う」と控えめに話している。


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