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罰則も視野に指導徹底を-未届け有料老人ホーム446か所に

 厚労省は5月28日に都内で開いた全国介護保険担当課長会議で、複数回にわたる指導を受けながらも届け出を行わない有料老人ホームの設置者に対し、罰則適用も視野に入れて指導を徹底するよう自治体の担当者に求めた。有料老人ホームに該当しながら届け出を行っていない施設が、4月末時点で446件に上ることも明らかにした。(熊田梨恵)

 今年3月19日、群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」で火災が発生し、10人が死亡した。この施設が未届けの有料老人ホームだったことを受け、厚労省は届け出を行わない施設への指導強化に乗り出している。
 
 老人福祉法は、有料老人ホームを「老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であって厚生労働省令で定めるもの」と定義しており、該当する場合は施設名称や管理者などについて、都道府県知事に届け出ることを義務付けている。つまり、面積や施設設備、人員配置などに決まった要件はなく、食事や介護などのサービスが受けられる高齢者向けの住宅が有料老人ホームだ。
 
 厚労省は有料老人ホームを「健康型」「住宅型」「介護付」の3つに分類している。簡単に言うと、「健康型」は入居者が介護が必要な状態になると、その施設で介護を受けることはできないため、別の施設に移らなければいけない。「住宅型」は、その施設の中で外部の介護保険サービスを利用することができる。ただ、「介護付」は、自施設で介護保険サービスを提供するため、機能訓練施設や食堂などの施設設備、介護職や看護職などの人員配置に関する基準があり、「特定施設入居者生活介護」を行う施設として都道府県知事に届け出なければならない。「介護付有料老人ホーム」として広告を出すこともできるのもこのタイプだ。
  
 今回問題になっているのは、「介護付」のように施設基準に厳しい要件がない有料老人ホームだ。夜間の人員配置やプライバシー保護の問題など、これらの施設のサービスの質を問題視する声もある。厚労省の調べでは、2007年の有料老人ホームの数は2671か所で、11万4573人が入居していた。このうち定員9人以下の施設は221か所。一方、介護保険の「特定施設入居者生活介護」を提供する事業所は2617か所で、在所者数は8万4355人。

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 厚労省が5月28日に発表した調査では、3月に行った前回調査では未届けの有料老人ホームが579か所あり、さらに今回106か所を把握していた。このうち、運営実態がないなど160か所を除いて、446か所が未届けの施設だった。
 都道府県別にみると、最も多かったのは神奈川県で91か所で、東京都(48)、千葉(41)、群馬(31)、沖縄(20)愛媛(18)北海道、栃木、岡山(各16)などと続く。
  
 この問題を受け、4月末までに80か所の施設が入居者の処遇状況に関して指導を受けていたが、その後に届け出た施設は10か所にとどまった。指導件数が最も多かったのは東京都で44件。
 
 厚労省は自治体の担当者を集めて開いた全国介護保険担当課長会議で、「度重なる指導や催告にも関わらず届け出を拒否するような未届け施設の設置者には、罰則の適用も視野に入れるなど、法律の的確な施行に努めていただきたい」と、指導の徹底を要望。同様の内容の通知を、同日付で都道府県に対して出している。
 
 
■未届け施設への指導「行動制限」「夜間人員配置なし」
 都道府県が未届けの設置者に対して行った「処遇に関する指導」として厚労省が挙げたのは、次の事例。
  
○行動制限は、緊急やむを得ない場合に限定し、その記録を保存するように指導(2都道府県)
○夜間に人員が配置されていないなどの不備があるため、緊急時に対応可能な体制を確保するよう指導(3)
○入居一時金の保全措置を講じるよう指導(2)
○一つの部屋に複数が生活しているため、個室化などによりプライバシーを確保するよう指導(6)。
○居室面積が狭いため、生活に必要なスペースを確保するよう指導(4)
○廊下が狭く、車いすでの移動に支障をきたすため、改善を指導(2)
 
 
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