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新型インフル 「机で計画立ててもできないことある」厚労省事務局長

 新型インフルエンザについて話し合う都道府県知事会の社会文教常任委員会が8日開かれ、厚生労働省に対して「机上の空論ばかり作るな」(大澤正明・群馬県知事)など批判する声と、対処方針の速やかな修正を求める意見とが相次いだ。厚生労働省から出席した麦谷眞里・新型インフルエンザ対策推進本部事務局長は「机の上で作っても、現実にはできないことがあるということが、恥ずかしながらやってみて色々と分かってきた。H5型の練習を随分できた。不幸中の幸いかなという認識だ」と釈明した。(川口恭)

 この日の会は、「国の対応に様々な課題が浮き彫りになった。振り返ると共に、秋以降に予測されている第二波と強毒性インフルエンザに対してどのように備えたらよいか意見交換する」(常任委員長の神田真秋・愛知県知事)との趣旨で、麦谷氏のほかに政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長の尾身茂・自治医大教授、梅田珠実・厚生労働省結核感染症課長を招いて開かれた。

 冒頭に尾身教授が、①今までの対応をどう評価するか②これからどうなるか③国・自治体・国民は何をすればよいかの3点について30分ほど述べた後で、神田委員長が都道府県から上がっている意見を紹介。続いて意見交換になった。

 以下、主なやりとりを紹介する。

【群馬】
 行動計画やガイドラインを県独自のマニュアルに落とし込んでいく時に、机上の空論的なものが多くて、現場で使えるものになかなかならない。たとえば発熱外来を群馬県では111カ所に設置することになっていたが、現実にできるかといったらできない。何しろ医師会と何も話を詰めてなかった。医師会と話をしてみたら、身の保証や一時休業への補償について、どのような対応をしてくれるのだ。感染したら医師だって拘束されるかもしれない、それだけの覚悟で診療に当たらなければならないんだ、と言われてしまった。しかし、そういうことが国の行動計画には一言も書いてない。群馬県では、補償の部分は県で責任を持つからと言って動いてもらっているが、医療機関との話し合いが今まで全くされてなかったことが分かった。今回のをよい教訓として、しっかり話しあわないといけない。

 厚労省で、机上の空論ばかりつくるのではなくて、もっと実態を把握するようにしてもらいたい。医療提供を実際にするのは医師会であり病院協会なのだから、行動計画を作成する際にも、きちんと医師会や病院協会や自治体の意見を吸い上げて、作成の最初から参画させる位でやってもらいたい。

【麦谷】
 4月下旬にメキシコで発生したとの一報が入り、直ちに準備に入ったわけで、皆さんと同様、国も準備の整わないまま始まった。お互いに大変だったという所は共有したい。

 行動計画はあくまでもH5を想定した高レベルの対策であり、それに則ってスタートした。メキシコからの第一報はたくさん死んでいるということだったから、検疫を含め高レベルの発動になった。その後、情報が集まってきて、どうも60歳以上の人は激しくないとか死者が若者に多いとかいうのが分かってきて、さらに季節性インフルエンザに似ているということも分かってきた。その都度、尾身先生の諮問委員会に相談しながら、5月22日に少しレベルを落とした対策にした。ウイルスの毒性に応じた柔軟な対策というご要望だが、様相に合わせて変更している。柔軟だったかという反省はあるにしても、今もオンゴーイングで見直ししている。

 患者公表も正直手探りでやってきた。個人情報保護と感染防御との両面の考え方が必要で、どこまでの情報をいつ発表するのかということになる。PCRで感染確定してから公表してほしいとのことだが、PCR検査で感染確定する前に公表したのは、検査に数時間かかる。それ迄、黙っていることが、世の中に対してマスメディアに対して、できない状況だった。結果として、たくさん患者が発生しているような印象を与えてしまったことは反省材料だ。

 発熱外来の問題も、動線を2つに分けるなんて、よほど大きな病院でないとムリだという声は聴いている。全国自治体病院協議会からの要望書では、動線を分けるために庭にテントを張って発熱外来にしている、そうなるとそこの医師は病棟に戻ることすらできず大変にコストがかかるということだった。ご指摘いただいたように始めから理念だけで机の上で作って分かった気になっていても、現実にはできないことがあるということが、恥ずかしながらやってみて色々と分かってきたので少しずつ改善していきたい。

 関西方面に診断キットやマスクが足りないというのは、マスクの方は本当に在庫がなくなっていたのでメーカーに増産をお願いすると共に外国から40万個ほど購入して関西に送った。キットの方は在庫が偏在していたので、それを関西に流した。いずれの場合も話を聴いてからやるので昨日要請したのにまだ来ないというようなこともあったかもしれない。タミフルの備蓄は各府県にあったが、患者に高校生が多く10代への投与はあれなので、リレンザにしようとしたら兵庫県も大阪府も備蓄してなかった。急きょ国の備蓄から5000人分ずつ送った。あとで滋賀県からも要望があったので1000人分送った。しかしタミフルの方が使いやすいということなので、上手に医師の管理下でタミフルを使ってもらうように変えた。これもやってみて初めて色々なことが分かった。

 都道府県への連絡について、私どもも誰に電話したらよいのか分からず混乱していた。衛生部長がいいのか、対策本部の人がいいのか混乱した。どこの県とは言わないが、午前2時か3時に衛生部長に電話したら寝ていて出ないということもあった。今後は、情報のルートをハッキリさせたい。

 このように実際にやってみて初めて分かったことが多くあったので、言い方はあれだがH5の練習を随分できた。段々と上手になっていくのだろう。我々にとっても都道府県にとっても不幸中の幸いだったと言えるのでないかと認識している。

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