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ニュース〜医療の今がわかる

「企業との癒着断つのが大前提」 薬害検証委インタビュー②


――癒着を問題視するのは分かったのですが、薬害を防ぐにはどういう仕組みが必要と思われますか。

 担当者が、もっと現場へ出て行って、情報収集して安全対策につなげるようなことをすべきと思います。承認されてしまえば、医師なら誰でも必要のない時にすら使えるというのが大問題だと思います。医療機関に対して使用実態をきちんと書面で保管させると同時に、現場まで出て行って監視指導すべきです。税務署が帳簿を調べに来るようなもので、完全に監視することはできなくても、現場に出てくる可能性があるというだけで医療機関もいいかげんなことはできなくなります。不適切な使い方、適性のない使用者に対する抑止力になります。それと書面保管を義務付ければ、今も記録がなくて救済されずに苦しんでいる被害者は多いので、そういう人が速やかに救済されることにつながります。

 そのうえで、そういった医薬品行政を外部から監視する。企業からも国からも影響を受けないような第三者的な組織を設けて、ちゃんと仕事をやっているか見るわけです。そういう組織をつくることは決まりましたよね。具体的に誰が何をするかは、これも今後きちんと詰めないといけません。

――専門家のやることを監視するとなると、やはり専門家が必要ですよね。

 そうですね。専門家でないと見られないから、サイズは小さくとも、PMDAと同等の職種を揃える必要はありますね。専門的な知識を持った人が外部から、開発、承認、安全対策の全てを監視する。組織の置き場所は、また議論が分かれるところなんでしょう。

――ところで医薬品行政の課題は、薬害とドラッグラグと2つあって、あちら立てればこちら立たずだという意見もあります。

 その説には、ウソが隠れていると思います。国民も言葉に惑わされて本質を分かってないのでないでしょうか。

 他に薬がなくて患者さんは待っている、そんな事例なら早く承認するための努力を惜しんではならないと私も思います。でもPMDAの運営評議会で、そういうもので承認待ちになっているような薬、それこそドラッグラグだと思いますが、そういうものの事例を示してくれと言っているんだけど出してきません。

 彼らが出してくる資料は、世界の売り上げ100とかです。全体を早くすれば、本当に困っている分野も底上げされるとかいう理屈ですけど、よく売れる薬が日本でまだ承認されてないということは、単純にビジネスの問題じゃないですか。視点が、いつの間にかすりかわっているんですよ。日本が最初に治験をしないで、欧米の患者さんのデータに乗っかって後出しジャンケンしていてケシカランという声もあるらしいです。でも、国民の命に関することなんだから、それで構わないじゃないかと私は思います。審査を早くするかどうかより、未承認薬を使っている人の副作用情報を取ってないことの方が問題と思います。治験と違って統計処理できないかもしれませんが、貴重な生データじゃないですか。それを安全対策に生かすべきです。

 医薬品産業を振興しようというのは国益としては大きいのかもしれません。しかし薬害の防止に関して議論している以上、それとこれとは別問題です。その意味で、臨床試験や治験に関しても、現状は被験者の人権面で問題があると考えています。本当にちゃんとした手法で説明を受けているんでしょうか。知らずに命を預けちゃっている人も多いのでないかと思います。これに関しては、医師、企業側の考え方とだいぶ開きがあります。

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