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要介護度同じでも、サービス受給量はバラバラ


[池田省三委員(龍谷大教授)]
要介護認定の結果があまり変わってないからいいじゃないかという方向に落ち着きそうな気がするが、私は疑問がある。「サービスを利用している方に大きな変化が起きていないから混乱が避けられた」ということでは評価できると思う。ただ、前(の判定方法)が正しかったという証明はどこにもない。平成12年から過去のデータを参考にしてほしい。高齢者に占める要介護度認定者、数を追いかけているが、明らかに変なことが起きている。
 
あることが生じた結果、重度化が急速に進んだ。それが2回起きている。認定のばらつき、認定の恣意性というものが明らかに見られる。そうすると今回の改正はばらつきや恣意性を排除するなら、認定数が変わるのは当たり前。当たり前ということを納得するには、12年度から追いかければ分かるので検証する必要がある。
 
池田委員(左)石田委員(中)木村委員(右).jpg17年度末から18年度末にかけて、中重度の認定数がぽんと上がっている。こんな風にぽんと上がるのはあり得ない。介護報酬が変わったから、減算になった分、要介護度を上げれば収入が取り返せる。そういう風にしか読めないデータがある。そういうことを踏まえた上で、要介護度認定の意味を議論しないと。前と変わらなかったからよかったという問題ではない。
 
参考資料1で、認定されてからサービスがどのように提供されているかが重要。縦棒が一人一人が使っている在宅サービスの単位数。二つ言いたいことがあるのだが、一つは支給限度額に折れ線を引いて頂くと分かりやすい。支給限度額の折れ線を要介護1までに押し進めてほしい。そうすると、上にはみ出る方が、要介護度が1個下がった時に被害を受ける方。どれぐらいいるかは一目瞭然。もう一つは、このグラフは厳密に言うと正しくない。利用単位数ゼロの人が入っていない。認定は受けているけど、実際サービスを使っていない人がどれぐらいいるかというと、平成14年度から調べているが、要支援レベルで36%が使っていない。この白いところ、何もないところが使っていない人。要介護1で20%の人が使っていない。
 
このグラフは大事なことを意味していて、要介護1以上は階段の踊り場が全くない、まとまりが全く見られないということ。要支援1、2は、ある程度まとまりが見られるが、これはサービスが包括払いになっているから。要介護1-5はみんな同じ形をしていて、使っている金額がゼロ円から支給限度額まで均等に分布している。要介護度というのは介護の手間がかかる程度で判定されている。要介護3なら3で標準的にどれぐらいのサービスが必要かということでまとまるはず。この白い部分について、「提供されいていない部分は家族がやっている」という話があって、私はそれを信じていないのだが、筒井(孝子)委員(国立保健医療課科学院福祉サービス部福祉マネジメント室室長)の方で克明な調査があって、家族の介護量とサービス利用量の間には全く相関関係がないということが知られている。要介護3、4、5のこの白い部分はネグレクトの可能性が強いとも考えられる。考えてみれば、人間は1日3回ご飯を食べなくても生きていける。おむつを随時取り換えなくても、2、3回取り換えていれば済むかもしれない。そんな状況が横行しているんじゃないかという、ここに危機感を持たなければいけないと思う。
 
この中に認知症の人がどれぐらいいるかを知りたい。認知症で要介護認定された人にサービスがいっていないとしたらこれは大変なことになる。現実の介護保険のサービスの中で認知症に本当に役立つサービスとは何だろうか。たとえば短期入所は役に立っているかも知れないが、家族の役に立っていて、本人の役に立っているかどうかは分からない。訪問系のサービスがどれぐらい役に立っているか、その辺が検証されないで、「認知症にサービスがいっていない」、あるいは「使えない」と言っても無意味。使えるサービスを作らなければいけない。そういう意味では、また認定のこまごました技術的な問題から逸脱した一般論の話をするなと言われそうだが、そこが一番重要。そこが解決されていないということは、ある意味では非常に皮肉だが、要介護認定システムを助けている。こんな利用の仕方だったら認定の方法が変わったところでなんの齟齬も起きない。こういった状況であるうちに認定システムを成熟化していくかということで、時間はあるのだが、その時間はサービス提供する面からいってなるべく短くしないといけない。
 
[石田光広委員(東京都稲城市福祉部長)]
私は保険者の立場から、要介護認定の見直しの結果、認定調査員や審査員のレベルを上げることだけに向かって保険者の認定事務の精緻化を高めるだけでは問題解決にはならない。利用限度額に対する割合を見れば、5割程度が使っていないのは一目瞭然。認定の精度をこれ以上高めても、ある意味では本質的な問題解決にはなりにくい。私の考えはむしろ従来の制度があるわけだから、この際簡素化、分かりやすいものに向かうのが本来の在り方ではないかと思う。その意味でケアプランの質の向上、サービスの充足度という、幅広に問題解決の方向性を見出すことが重要で、一点集中、結果的に自治体負担を増すということには賛成できない。
 
[木村隆次委員(日本介護支援専門員協会、日本薬剤師会常務理事)]
要介護1-5の斜め線の階段は、自己負担の問題が大きいと思う。その平成12年度辺りは標準サービスケアプランのようなものが示され、要介護1の人だったら週何回、これぐらい、というようなパッケージ的に示された時期。今は、要介護1でも家族構成にしても何にしても状態が様々。その中でこういう風に契約で利用者と家族とケアマネが話し合って、こういうふうになっていくのは包括払いでない限りは、階段になるのは当たり前だと私は思う。必要なサービスが入っていないことについては検証すべき。自己負担が大きいと思う。
 
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