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新型インフルエンザについて ─ 感染研・田代センター長

 流行シーズンに入り、10月中旬にも第1波が来ると予想されている新型インフルエンザ(H1N1)について、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の田代眞人先生にお話を聞いた。(新井裕充)


■ 新型インフルエンザ(H1N1)とは
 

── 現在、流行している新型インフルエンザについて教えてください。

 インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つがあります。このうち、A型とB型がヒトの季節性インフルエンザの原因になります。さらに、A型インフルエンザでは、25年に1回ぐらいのペースで「新型」というのが発生します。新型インフルエンザというのは、今までヒトの間で流行していたウイルスと違った亜型のウイルスがヒトの世界に突然入ってくることです。

 新しいウイルスに対してはだれも免疫を持っていないので、短期間のうちに地球上のほとんどの人がかかってしまう。だから大流行を起こすのです。しかも感染を受けた人は基礎免疫を持っていないので、重症化してしまうのです。このため、新型インフルエンザが発生すると、重症者や死亡者の数が季節性インフルエンザの数倍、数十倍になる恐れがあります。これが大きな問題なのです。

 今回の新型インフルエンザでは、日本で4000万人ぐらいの患者が出るだろうと予想されています。(9月)現在、せいぜい10万人ぐらいですが、こんな程度では終わらないでしょう。まだ、季節性インフルエンザのレベルにさえ至っていません。季節性インフルエンザでも毎年1000万人ぐらいの患者が発生します。まだその100分の1ぐらいにすぎません。
 死亡者はまだ12人ですが、多い年で3~4万人亡くなるので、今回も「死亡者数万人」という数字が出てくる可能性があります。現在流行しているH1N1ウイルスの致死率は世界平均で約0.5%なので、いったん発症すると1000人に5人の割合で亡くなります。これから、大きな健康被害が出ることが心配されます。

 ただ、ウイルス自体は弱毒性なので、ほとんどの人は季節性のインフルエンザと同じように4~5日寝ていれば回復します。ところが、誰も免疫を持っていないので一般的に重症者の数が増える恐れがあるわけです。
 今回のウイルスで特に不思議なのは、20歳未満の若い人が多く入院していることです。入院患者の4人に3人ぐらいが若い人で、季節性インフルエンザでは見られない傾向です。その理由は分かっていません。基礎疾患のない健康な人でも重症化して死亡することがあり得る。これが、今流行している新型インフルエンザの特徴的なところです。

 もちろん、高齢者の場合には肺炎になったり死亡したりする危険性が高いことは言うまでもありません。また、妊婦さんが新型インフルエンザにかかると命取りになる場合があります。
 それから、さまざまな基礎疾患を持った患者さんも、季節性インフルエンザの場合よりもさらに重症化する恐れがあります。例えば、喘息、慢性気管支炎、肺気腫など呼吸器の病気の人、心不全など心臓の病気の人、糖尿病など代謝疾患の人、さまざまな血液疾患の人、免疫抑制剤や抗がん剤などを使用して免疫機能が低下している人、腎臓が悪い人、特に人工透析をしている人などです。このような方々が今回の新型インフルエンザにかかると、重症化して肺炎を起こしたり、場合によっては命にかかわります。

 それから、小学校に入るまでの小さいお子さんです。赤ちゃんから5、6歳までのお子さんが感染すると、重症化する危険性があります。さらに、それと先ほど言ったように、小、中、高校生など若い人の入院が多い。
 ですから、季節性インフルエンザとウイルスが似ているからといって侮ってはいけない。気を付けなければいけないということを認識しておく必要があります。


【目次】
 P1 → 新型インフルエンザ(H1N1)とは
 P2 → 医学以外の対策 ─ 水際作戦、行動制限、個人的対応
 P3 → 医学的な対策 ─ ワクチン、抗ウイルス剤、医療体制
 P4 → ワクチンが足りない
 P5 → ワクチンの情報共有と透明化が必要


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