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ニュース〜医療の今がわかる

政権交代、「チャンスを機に日本を良くする」 ─ 本田宏氏の講演

■ 現場が分からない霞ヶ関がどんどんルールを決めていく
 

 では、始めます。実は、医療現場で私が辛い思いをしたことがあるんですけど、ここ(スライド)に出ているのは私の両親です。うちのお袋は既に他界しました。福島県の郡山の病院で、うちのお袋がですね、リウマチにかかっておりまして、ある時、肺炎で入院した。

 翌日の晩、トイレに行こうと思ったら......、大部屋です。転倒骨折で寝たきりになりました。で、「別の病院に移ってください」と言われたわけですね。なぜかって言うと、医療に詳しくない方はご存じないかもしれませんけど、今、長期入院すると、簡単に言えば病院が損する仕組みになっているんですね。180日(制限)のリハビリと同じです。

 ですから、別(の病院)に移らなければいけない。うちの親父は、転倒骨折して長く入院した病院から別の病院に移されることを聞きまして、「なぜ移されるんだ」と怒りました。で、私がいる所でうちのお袋に質問したわけです。「なぜ、トイレに立つときに看護師さんを呼ばなかったんだ」と。

 そうしましたら、うちのお袋は私の予想通りの答えをいたしました。「看護師さんはとても忙しそうで、そんなトイレぐらいで声をかけられないよ」。これが、日本の医療現場の実情です。そして、うちのお袋は1年間も経たないうちに2つ病院を移って亡くなったというわけです。

 私は、医療問題をお話しするときに誤解されないように言うんですけれども......、今日は「ごかい」......、「地下1階」ですけども......(会場、笑い)、いつもこんなことばかり言ってやっています、すいません、今日は時間がないのでこれぐらいにしたいと思います(会場、爆笑)。

 我々、医療関係者というのは本当に現場を見ているんですね。すごく現場の矛盾点が分かるんですけど、なかなか伝わらないところがある。何も分からない厚労省......、霞ヶ関の方が......、今、口が滑りましたけども、現場が分からない方がどんどんルールを決めていくというのが現状で、非常に困っております。

 例えば、日本は高齢化社会。皆さん、ご存じのように世界ナンバーワンです。で、GDP当たり医療費、日本は高齢化社会なのに、なんか......、(医療費は)右肩上がりになっていないでしょ。これが日本の医療制度が崩壊した理由です、最大の。

 世界中が高齢化なのに、日本はGDP当たりの医療費が先進国で最低クラス。イギリスは高齢化が遅れていますけれど、医療崩壊して医療費を上げて、医師も大幅に増員することを決めましたけれども、いったん崩壊した医療はなかなか元に戻らない。家庭と同じなんですよ。「医療と家庭は崩壊すると辛いよ」って、よく外科系の医者がみんな言っていますけど......。

 アメリカは、高齢化が遅れていますけれど、医療費が高くすぎて、しかも保険に入っていない人も多い。だから、「アメリカの医療をまねしちゃいけない」ということになるわけですね。つまり、日本は本来、世界が高齢化の中で、きちんと医療費を......。これは、「公的資金を入れて」という意味です。個人負担じゃありません。ヨーロッパのように公的資金を注入して、医療にちゃんとお金を注入して......。

 誤解がないように言います。医療費を上げるということは、医者が儲かるという意味じゃないですよ。そこでたくさんの方が働けるわけですからね。安全性も高まるんですよ。そうしておけば、医療にお金を入れておけばよかったのに抑制したわけです。これが、医療崩壊の一番の原因なのです。


 【目次】
 P2 → 現場が分からない霞ヶ関がどんどんルールを決めていく
 P3 → 全国各地が医師不足で医療が崩壊
 P4 → 新政権に期待したいのは、新しい雇用の創出
 P5 → 医療崩壊を食い止めるのは、国民みんなの社会的責任
 P6 → 政権交代がない民主主義は、民主主義ではない


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