文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

イレッサ和解勧告で、国立がん研究センターが緊急会見

■ 「私たちは決して対立軸ではない」 ─ 片木代表


[片木美穂・卵巣がん体験者の会スマイリー代表]
 今日はこのような場でお話しさせていただく機会をありがとうございます。卵巣がん体験者の会「スマイリー」の片木です。

 私自身、このイレッサが承認されたころはまだ、がん患者ではありませんでした。だから、当時の報道などがどうだったとか、そのころは正直、がんということには興味がなかったというか......。

 20代だったこともあって、知らなかったので、そのころのことはよく分からないのですけれども、私自身、スマイリー、患者会を立ち上げて厚生労働省と色々とドラッグ・ラグについてやり取りを始めたころに......、ちょうど薬害肝炎の問題と並行している時期でした。

 そのときに、やはりドラッグ・ラグと薬害肝炎というのは比べられることが多かったので、薬害肝炎のことはよく調べていて、そこからどんどん調べていくうちに、イレッサのことを知りました。

 当時の状況は知らなかったですけれども、色々な原告の方などにお話を聴いたりとか色々することで......。

 当時、分子標的薬というのはあまり知られていなかったということを聞きました。そして、がん細胞を狙い撃ちする、副作用がないというようなイメージを患者さんがお持ちであった、「夢のような抗がん剤だと感じた」っていう風に聞いています。

 そういった副作用が起きたことについて私たちはどう感じるかと言うと、すごく難しい話なんですけれども、少なくともイレッサのことが、私たちドラッグ・ラグを訴える......、少なくとも私、「スマイリー」には影響がありまして......。何かと言うと......。

 治験というのは限られた患者さんが受けています。それが市販されると、多くの患者さんがその薬を使うことになります。だから、治験で分からないことがあっても、市販されることによって副作用というのが......、知らない副作用が起きることがあるかもしれないということを知りました。

 そして、でも、一方で、私自身も今、自分が受けた抗がん剤の後遺症と言うとあれですが、副作用のしびれは今現在も消えていません。先生から、しびれについてきちんと説明を受けていたので、後悔はしておりませんけれども......。

 そういった副作用があってもリスクがあっても治療を受けたいという患者の気持ちというのも、私自身は分かっているつもりです。

 ですから、副作用があるということを、イレッサの問題で私たちもしっかり頭に刻んで、だからこそ薬が欲しいという気持ちもきっちり伝えなきゃいけないということを知りました。

 そして、夢のような薬はないということを知るべきだと思いました。

 だから、私はエビデンスについても、国立がん研究センターの先生をはじめ色々な婦人科の先生に伺って、どれぐらいの方に必要なのか、どうしてその薬が必要なのかを調べて訴えるようにしました。

 そういう風に、イレッサの被害の皆さんが教えてくれたということがたくさんあります。

 そして、厚生労働省もそうだと思うんですね。2007年10月に当時の舛添大臣がPMDA(医薬品医療機器総合機構)の方たちを増員すると言われて、大きく人が増えたと伺っています。審査に対してものすごく力を入れてくださっていると聞いていますし......、また、ドラッグ・ラグ解消にも努力されてきたと思いますし......。

 彼らから感じ取る、審査報告書から感じ取るのは、有効で安全なお薬を患者さんにきっちり届けたい。彼らは被害を出したくて審査をしているんじゃないっていうことは、審査報告書からもうかがい知ることができました。

 ちょっと踏み込みすぎの話をしているのかもしれないんですけれども、こういうことが起こることで、よくインターネット上で見るのは、何でもかんでもお上が悪い......っていうんじゃないですけれども、「厚生労働省が悪い」「何もしていないじゃないか」って言うことによって......。

 彼らが、もしかしたらこのまま行くと、無意識に承認を躊躇してしまうんじゃないかっていうところを、とても私自身は危惧しています。

 そして私自身、薬害肝炎の検討会などに出させていただいてヒアリングを受けたりしていますが、私たちは決して対立軸ではないのに、なんかまた比べられる時が来るんじゃないかなっていうのをすごく懸念しているんですけれども......。

 一緒にお薬のことを考える存在でありたいなと思っているので、できれば......、上手に説明できないんですけれども、できれば冷静な報道とか......。

 今後、和解につながるのか、そうじゃないのか分かりませんけれども、きっちりと、何が問われているのか、そして国が何を努力してきたのか、どういう患者さんがいるのかをしっかり報じていただきたいなと思っています。

 そして、1つお願いしたことがあります。現在、イレッサが必要な患者さんが絶対にいます。その患者さんたちがイレッサに対して不必要に怖がることがないように......。

 そして、イレッサがどういう患者さんに必要で、どういう副作用があって、リスクがあって......。今、分かっている時点でも構いませんので、イレッサが必要な患者さんが不必要に怖がることがないように......。

 治療というのは、必要な時に必要な治療を受けなければ意味がありません。そういう患者さんがきちんと治療を受けられるように......。

 こういう問題というのは、私たち患者会も冷静に取り扱っていかなくてはいけないと思いますので、ご理解をよろしくお願いします。以上です。

[加藤雅志・国立がん研究センター広報室室長]
 ありがとうございました。では続きまして、天野様、よろしくお願いいたします。
 

【目次】
 P2 → 国立がん研究センターの見解
 P3 → 薬剤性急性肺障害・間質性肺炎について
 P4 → 「副作用を誰かの責任、医療が成り立たない」 ─ 嘉山理事長
 P5 → 「裁判所の判断は自然界を全く理解していない」 ─ 嘉山理事長
 P6 → 「医療、医学、自然科学が成り立たなくなる」 ─ 嘉山理事長
 P7 → 「私たちは決して対立軸ではない」 ─ 片木代表
 P8 → 「リスクと利益を知った上で患者は闘っている」 ─ 天野理事長
 P9 → 「いかに国民が納得する制度をつくるか」 ─ 嘉山理事長


  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス