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ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会2

発表に戻って冨田勝郎・金沢大学病院長
「頭の中では、このことばかり考えてきたし、今も考えている。舛添大臣の問いに対しても即答できるけれど、まずは自分の任務を果たしたい。といっても、北陸の惨状を訴えに来たつもりはない。日本の医療をどうしたら良いかその答えを持ってきたつもりだ。臨床研修制度が、現在の混乱を招いたことは議論の余地がない。この制度がいいと言った大学病院長に会ったことがない。ここに3人呼んでいただいたということは、行政も地域医療立て直しには大学がキーとなって支えないといかんと理解していただいているのだろう。そこで述べたい。

臨床研修制度の根源にあったのは、大学病院の医局制度の良さを適正に評価せず崩壊を図ったこと、これだと思う。皆さん認めるのは苦しいかもしれないが、これが事実だと思う。大学の医局制度は日本が150年かけて木が枝を伸ばすように試行錯誤しつつ築いてきた『資本主義と社会主義の中庸をいく』すばらしいシステムである。たしかに山崎豊子さんに書かれた白い巨塔のような問題点も一部にあったが、そのような問題点は修正していけばいい。皆さんそういう知恵は持っていると思う。

日本では大学病院が軸となって『医の心、倫理観』を大切にし、金の事を考えずに一番よい治療を行うというような拝金主義・市場原理主義に偏らない真の医療を追求・実行・教育することを許されてきたし地域医療を支えてきた。現在の研修医は、症例の数を競って、何をさせてもらったかを競う。それは大きな間違い。患者さんにそんなことを言っちゃいかん。1人を徹底的に見て最良の医療をすること、それこそが大切。数じゃないし、させてもらうということでもない。それから地域医療に若い医者を回せばいいだなんて、とんでもない。私は地域の出身だが、地域の人間にしたら、こんな失礼な話はない。私は家族をそんな危なっかしい医者に診てもらいたくない。なぜそんなドクターを地域に回そうという話になるのか、悲しい。経験豊富な医師かリタイアした医師、もしくは中堅の医師が欧米の医師がアフリカへ行っているように年の3分の1はボランティアをするような、そんな風にして担うべき。若い医師というけれど、そんなのが東京のここに来て、東京も地域だとするならば、それでいいのか。憤りさえ感じる。

以前なら大学病院では経営のことなど考えずに何が最もよい治療か叩きこんだものだ。その後で一般の病院に出て行ったなら経営を考えながらやることも必要だろう。しかし今は、大学病院まで一般の病院と同じように競争させているから拝金主義になって地域医療の崩壊につながっている。大学病院は教育・診療・研究が仕事。研究を行うからこそ新しい医療が次々に実行される。逆に医療はリニューアルしていかないといけない。医師が年いったから古い医療で構わないなどという患者はいない。その患者の要求に応えるためには、医師は障害学び続けないといけない。その生涯教育をやっていくのも大学病院が常にリードしていかないといけない。

大学病院をしっかり立て直せば、つまり医局をしっかり支えていく体制に戻せば、地域医療もしっかりする。大学病院を他の病院と競争させるから地域医療がおかしくなってくる。

実は明るい兆しが見えている。ことしの7月だったか8月だったか、驚くべきことが厚生労働省から発表された。正式名称は忘れたが臨床研修に『大学病院専門医型特別コース』というものを設けるという。しかし足りないのは、産科、小児科、麻酔科、救急だけでない。これを全科に適用・推進させていくことによって、既に目標を定めている研修医は安心して研修に励める。実際問題ほとんどの研修医は医学部6年の間に進む方向性を決めているし選ばなければならない。6年の直後に決めなければダラーンとしてしまう。卒後にさらにベッドサイドちーちんぐを繰り返すような無駄なことになる。研修医も8割方はどのコースを選ぶか決めている。特別コースに入れば、実質的に研修を1年短縮したことになる。最初の1年でプライマリケアの基本的なことをやって、2年目は自分のめざした科を回ればいい。このようにしてもらえば、大学病院としても自分の科に来たのと同様の教育ができる。このようなことを言うのは、今、一般の病院では研修医に対するゴマスリが行われている。評判を良くしてもらってどんどん研修医が集まればいいと。だから、症例の数や種類という話になる。1人の患者を診ても10の病気を勉強することはできる。これが本当の教育であり、特別コースが標準になれば専門科との一貫教育の流れができて、大学病院の定着率も元通りになる。

大学病院は教育・診療・研究の三本柱が使命と言われてきたが、そこに改めて地域医療を支えるということもやっているんだと、行政にも認識していただくべきでないか。先ほど舛添大臣が『即効性』とおっしゃった。8月に出されたプランを4月から全科に適用すれば、すぐにグングン立ち直っていくと私は確信している」

と、ここで前の発表者である今井学長が手を挙げた。
「今、地域に未熟な人が行くかのような発言がなされたけれど、そうではないので一言。当然のことながら、研修医が行くからには指導医もいて、きちんとした医療が行われる。地域が大事なのは、北海道にいる私が誰よりも分かっている」

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