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国立がんセンターに、新しいホスピスを-藤原康弘氏インタビュー

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藤原康弘氏(国立がんセンター中央病院臨床試験・治療開発部長)

「国立がんセンターとして、再発がん患者さんへのケアをどう考えていくかが問われている時。ナショナルセンターだからこそできる緩和ケアの研究や未承認薬の臨床研究、そして最後まで患者さんをみられるホスピスがあれば」-。がんセンターというと手術など外科領域に目が行きがちになるが、年々がん患者が増加する中、化学療法など内科的治療に頼る患者が増えていくのは間違いないだろう。内科の立場からがん患者を診ている国立がんセンター中央病院の藤原康弘臨床試験・治療開発部長に話を聞いた。(熊田梨恵)

 年間に約2万人の患者が入院する国内最大級のがん治療施設、国立がんセンター。昨年春にも麻酔科医が不足して手術件数が減るなどの問題が大きく取りざたされたばかりだが、「がんセンター」というと、どうしても実際にがんを切除するといった外科的手術に目がいきがちで、「院内でも外科医の立場が強い」との声はよく聞かれる。
 国立がんセンター中央病院では昨年4月、がんの未承認薬の臨床試験などを組織的に進め、医師主導治験にも注力していくため、「臨床試験・治療開発部」を新設した。部長には同院で6年以上にわたり臨床開発のインフラ整備を進め、医薬品医療機器総合機構で働いたキャリアを持つ実力派、藤原康弘氏を起用した。
 
 
■がんセンター、病棟の半分は再発がん患者
--藤原先生は腫瘍内科学が専門で、乳がんなどを診ておられます。国立がんセンター中央病院というと、昨年春からの麻酔科医不足による手術件数減の問題などが取りざたされていました。どう見ておられましたか。
 
これは国立がんセンターだけでなく、どこのがん診療拠点病院もそうだと思うのですが、手術はお金になりますし、件数としても数えやすいから評価しやすい。だから人材確保などハードやソフトについて考えやすく、動きも取りやすいです。だからどのがんセンターも外科が中心にならざるを得ないのですよね。しかし、この病院も600床のうち約半分は末期がんなどで内科的な治療を受けている患者さんです。再発がん患者さんに対する医療や介護、精神的なケアの状況は当院も含め理想といえるレベルには達していない状況ですよ。
 
■外科中心のがんセンターが見落とすもの
--再発がん患者に対するケアが「理想と呼べない」状況とは?
 
例えば、がんが骨転移したりするとその部分がもろくなって骨折しやすくなります。でも国立がんセンター中央病院と東病院合わせて理学療法士の定員は常勤1名で、いつも二つの病院の間を行ったり来たりしておられます。入院中の患者さん全員にリハビリテーションが必要なわけではありませんが、必要なリハを十分に受けられているとは言えない状況です。また、再発がん患者さんには精神的なケアが必要で、それには精神科医や看護師、臨床心理士等のサポートが必要になりますが、精神科医の常勤は1人です。病棟の看護師は夜間だと40床に2人しかいません。状態が重くなっている患者さんは介護が必要ですから、1人がトイレに付き添えば1人で残りを見る事になります。そんな状態で、精神的なケアまで手が回るでしょうか?臨床心理士さんも国家資格ではないことから正職員枠はありません。管理栄養士、ソーシャルワーカー、各種事務職員・・・。国立の病院なので定員が決まっているというのはありますが、再発がん患者さんをサポートしていくためのチーム医療を展開するために十分な人材が揃っているとは言えない状況です。
 
--再発がん患者さんに精神的に寄り添えるようなケアをするには人材が足りていないということですね。
 
こうして人出が全く足りない中で、多くのやる気あるスタッフが辞めていきます。外科系なら、患者さんがよくなって退院される姿を見れば、よかったと思うこともあるでしょう。でも内科領域だと一生懸命ケアをしたとしても、最後に亡くなっていったり、外部のホスピスに転院していく患者さんを見たりすると、達成感を得られず、バーンアウトしていく看護師が多くいます。
 

■再発がん患者へのサポートの重要性
--再発がん患者さんへのサポートとしてどんなことが重要になってくるのでしょうか。
 
再発しても、できるだけこれまで通りに、健康に近い生活をどう実現するか。女性だったら治療しながら子育てや家事をすることになります。個人で事業を経営されている方では治療のための時間を割くことも困難になることが予想されます。治療をしながらの生活は本当に大変です。そして再発がん患者さんは死に対する恐怖がありますから、その精神的なケアが必要です。がんを発症していると分かるだけで、アルバイトもできなかったりすることがある社会です。こうした「生活」を支えていくための社会的、精神的、そして地域による幅広いサポートが必要になります。そのためにも、院内の主治医や看護師と地域のケアマネジャーさんとの連携も必要です。そうしたことができる余裕がほとんどないのが現状ですが。
 
 
■内科スタッフのジレンマ
--がん患者数は年々増加の一途をたどっています。がん患者さんに対するサポートの拡充が必要ですね。がんセンターで最期を看取ることができない患者さんもおられます。
 
3、4年前までは私が診ていた患者さんは毎年80人ぐらい亡くなっていましたが、今は医療も発達して長く生きられるようになってきています。その分、いかにその人の生活をサポートするためのよりよい医療を提供できるかが問われています。患者さんをホスピスに送ることも多くなってきていますが、自分たちが診ている患者さんをお送りすることに対するわだかまり、ジレンマがスタッフには皆ありますよ。
 
--では、国立がんセンターならではの、再発がん患者さんに提供できる医療とはどういうものが考えられるでしょうか。
 

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