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ニュース〜医療の今がわかる

「緩和ケア必要な子ども、6割はがん以外」-日本小児医療政策研究会


■病院は子どもにとっていびつな空間(Platt Report)
概念的な話をしたが、小児緩和ケアにおいて、政策的な課題はモルヒネをはじめとした麻薬の使用、疼痛管理の問題とかケアの在り方、死別後の家族・遺族へのケアなどさまざまな課題があるが、今回はもう少し基本的な話として、家族と共に暮らす権利について。自宅での療養を子どもにおいてどのように提供していったらいいかというのを、イギリスの例を出して少し考えてみる。 
 
イギリスの在宅サービスの一例。13歳女性。重度の脳性麻痺で気管切開している。週1回の小児専門看護師の訪問。週に2晩のホームレスパイトケア、夜に訪問してくれて、家族は寝ることができるということ。月4泊の地域のレスパイトケア施設の使用。年20日間の子どものホスピスの利用。さらにスクールナースによる学校でのケア。毎日の登下校の同伴サービス。こういったものをすべて無料で提供されている。日本との差を感じるのは私だけでないと思うが、日常的にこういうサービスが提供されている。
 
こういったものがイギリスの医療政策にもとづいて進められているが、一朝一夕にできたものではない。その政策の歴史経緯について振り返ってみる。小児の在宅サービスというものは二つのコンセプトに基づいて作られてきた。子どもの入院を避けるということ。家庭環境を優先するということは50年前の「プラットレポート(Platt Report)」、政府のレポートにおいて「病院といういびつな環境は子どもに悪影響を与えるので、可能な限り入院は避けるべき」ということが提唱されている。
 
より影響力を持ったのは、「ヨーロッパ病院の子ども憲章(EACH CHARTER)」。子どもの権利条約に先立つ一年前に出されたもの。第1条で「子どもの入院は避けられない場合に限られる」ということを国家間の約束として進めましょうとして進められた経過がある。小児専門サービスでは、子どもは小さな大人ではないということで、30年前にすでに「コートレポート(Court Report)」の中で「小児専門の看護サービスを発展させるべき」と。70年代にイギリスでは「ディストリクトナース(District Nurse)」という訪問看護師がすでに非常に活躍していて、全国に普及していた。19世紀から組織として始めているので伝統のあるサービス。」
 
そうした中で小児専門サービスを作るべきというのが30年前に提唱され、97年に国会下院保健委員会報告の中の勧告として、「すべての看護を必要とする子どもたちは小児専門看護師による訪問看護を受けることが保障されないければならない」と出された辺りから、積極的に政策が進められてきたという経緯がある。プラットレポート、コートレポート出された辺りはスローガンにすぎなかったが、やはり病院の子ども憲章が出たり、国会報告出たあたりから急速に数が増えてきた。
 
そういった97年の報告にもとづいて、「小児医療政策10カ年経計画」が2004年に報告されている。その中でも小児専門の訪問看護師はプライマリケアの中心的役割を果たす存在であるということが言われている。地理的、医学的理由、つまりどこにいようとどんな病気だろうと、そのケアが提供される。週7日間、つまり休みなく提供されるということ。そして遅滞なく、つまりアクセスビリティが補償されるということ、そしてエビデンスに基づくプロトコルやガイドラインにそってケアを提供するということ。こういったことが小児医療政策10カ年計画に盛り込まれて、小児専門訪問看護チームは現在250チーム以上、85%以上の地域をカバーするに至っている。
 
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