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診療報酬改定の基本方針、何を議論するのか

7月9日社保審医療部会.JPG 診療報酬改定の基本方針を決める社会保障審議会の部会が動き出した。しかし、果たして何を議論するのだろう。税金の無駄遣いではないのか。(新井裕充)

 2010年度の診療報酬改定に向け、社会保障審議会の「医療部会」が7月9日に厚生労働省内で開かれた。「医療保険部会」はきょう15日に同省内で開かれる。

 前回改定よりも2か月早いスタートだが、今回もまた厚生労働省の下書きを追認するだけの「サロン」と化すのだろうか。

 診療の対価として医療機関が受け取る診療報酬は2年に1度のペースで見直される(診療報酬改定)。内閣が決めた改定率に基づいて、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な配分を決める。

 この中医協の審議は、社会保障審議会の「医療部会」と「医療保険部会」が決めた基本方針に従って審議される。ということになっているが、実際には違う。厚生労働省が「基本方針」を書く。中医協でも、厚労省が作成した原案を審議する。
 中医協では日本医師会との調整がメーンになるが、社会保障審議会の「医療部会」と「医療保険部会」では、関係団体が好き勝手に思い思いの発言をする、いわば「サロン」と化す。あるいは、厚労省にお願いをする陳情の場となる。

 両部会の役割分担は、救急医療など医療提供体制に関する事項が「医療部会」、保険制度などにかかわる事項が「医療保険部会」だが、回が進むと、どっちが「医療部会」の議論で、どっちか「医療保険部会」の議論なのか、ごちゃ混ぜになって分からなくなる。

 前回の2008年度診療報酬改定を簡単に振り返ってみよう。厚生労働省は07年8月8日、改定に向けた検討項目を中医協総会に示した。検討項目は、「より良い医療の提供を目指すための評価」「患者の視点の重視」など5項目で、いわば「基本方針」といえるような項目。

 その後、改定の審議が中医協で進められ、社会保障審議会で「基本方針」の議論がスタートしたのは9月(医療部会は14日、医療保険部会は20日)。
 そして、ほぼ同時期(9月19日)、厚労省は中医協総会に19の検討項目を示し、10月と11月の審議分をそれぞれ決めた。中医協で配布され、既に議論された内容が両部会に示されるという"上下逆転現象"が起きた。

 前回の改定で厚労省は、会議を分散する仕組みを巧みに利用した。前回改定の目玉だった「後期高齢者医療制度」は特別部会でひっそりと進められた。表舞台の中医協は、医師不足対策や診療所の再診料引き下げなどで盛り上げた。
 社会保障審議会の両部会では、患者代表の委員からの要望に対し、「それは医療部会で議論していただく」「それは医療保険部会」という"たらい回し"もあった。

 また、両部会では日本医師会と経済界が対立する場面が目立ち、「医療費抑制に反対」「医療界は経営努力せよ」という平行線の言い合い。その合間を縫って、病院団体の委員らが、「地域医療は疲弊している」と主張。一通り"ガス抜き"が終わったところで、厚労省案を「大筋了承」または「座長一任」となる。今回もまた同じ展開だろうか。

 診療報酬改定を「医療部会」や「医療保険部会」、「中医協」、「その他の部会」などに分散して審議するのは、責任回避・審議拒否のための便利なシステムだ。今回もその機能をフル活用するだろう。

 そんな「税金の無駄遣い」のような両部会、どこか見所はないかと探ってみるが、周囲の記者から聞こえてくるのは「選挙が終わらないと分からない。医療課も身動き取れないだろう」という声ばかり。「民主党が政権を取ったら、これまでの中医協の議論はガラガラポンでやり直し」、「次回はプラス改定なので、何も宿題がない2010年度改定」と皮肉る声もちらほら。
 逆に、「社会保障国民会議の最終報告があるから、どこが政権を取っても厚労省は怖いものなし」との声もある。

 こうした中、7月9日に開かれた「医療部会」は、「厚生労働省、ここにありき」と言わんばかりだった。会議開始から1時間近く、厚労省の資料説明が怒濤のごとく続いた。資料の内容はもちろん、厚労省がこれまで行ってきた主な医療政策。厚労省がいかに日本の医療政策をつくってきたか、まるで教授が学生に諭すような風景だった。

 この日の東京の最高気温は千代田区で30度を超える暑さ。弱冷房で満席のため、扇子であおぐ姿が目に付いた。午前10時半ごろ、室内の気温がピークに達したように感じたが、議論はヒートアップしなかった。なぜなら、厚労省の資料説明が延々と続いていたから。「いつ終わるのだろう」「もう勘弁してくれ」と願っていた人は私だけではないと思う。

 傍聴席にいた中医協の公益委員は「ふうー」と何度もため息を漏らし、天井を見上げて目を閉じた。資料をめくらず、ハンカチで汗をぬぐう委員もいた。疲れた表情で眼鏡を外し、顔を拭く委員もいた。そんな空気を無視するかのように、「これでもか」という報告が次々と続いた。

 資料説明が一通り終わり、ようやく発言の機会が委員に与えられた。委員らは、大きな要望から小さな陳情までさまざま。これら委員の発言については機会があればお伝えしたい。今回は、厚労省がどのような報告を何分ぐらいしたのか、雰囲気だけを早送りでお伝えしたい。

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